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黒になりたい

雑草の上に静かに横たわる。隣では猫が500ミリペットボトルを枕にして眠る。
草の香りがする。近くに小さな黄色い花が咲き、風でゆらゆらと揺れている。

空を見つめると雲が流れゆく。
雲の流れの速さに心が安らぐ。ずっと見つめていられる。

「……」

目を開けていないと、自分の闇に閉じ込められてしまいそうだ。
とてもじゃないが、耐えられない。

右手でロープを握りしめる。
「3、2、1……」

カウントダウンに関係なく、雲は流れていった。

─────────────

「おかえり!」
今日も元気な声で、帰宅を受け入れられる。

「……tだいま……」
今の自分にはくぐもった声で返事をするのが精一杯だ。
急いで2階へ駆け上がる。

挨拶に耐えられない時がある。自分を消したい。
そう思いながら、カバンを床に放り投げてベッドに倒れ込む。

「疲れた……」

自然と涙が溢れてくる。
たった1時間外出して、いくつか買い物をし、帰宅しただけでクタクタだった。

ベッド脇にある錠剤を掴み、急いで薬を出し、口へ放り込む。
机の上の朝飲み残したお茶と一緒に流し込む。

25年前と変わらない自分。ずっとこのままかな……。

ベッドの上で一人泣く。涙が止まらなかった。





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