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弱い人は

夕食が終わり、私は食器を下げようと手をかけたところだった。

テレビで、ネット上の誹謗中傷に悩んで命を絶った若い女性のニュースが流れた。

私の前に座って夕食を食べた人は、それを聞いて鼻で笑った。馬鹿じゃないの、死ぬなんて、そんなおおごとにして。

「でも亡くなった人は何も悪くないよね。」

いや、ネットで人が言うことなんて嘘ばっかりに決まってるんだから、気にする方が悪いよ。

それを聞いた瞬間、腹の底でぐらりと何か煮えくり返るものを感じた。

私は手に持っていた食器を真っ直ぐテーブルに叩きつけた。

パリンという音とともに青と白の破片が飛び散る。

「これを見て、あなたは壊された食器が悪いって言うの?」

***

自己責任、なんて本当に存在するのか。

自己責任という言葉は、実は問題を解決できなかった政治家やリーダーたちの言い訳として使われることの多い言葉でもある。
でも実は、その人のおかれた状況、社会、いろいろな条件が重なり合って問題を作ってしまうということはとても多い。

だから、壊れてしまった人を見たとき、いちど立ち止まって考えてみてほしい。その人は本当に自ら壊れていったのか、それとも誰か、何かによって壊されたのか。

大事な命が理不尽に壊されるのを、すこしでも減らすために。


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