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多面体的アイデンティティ

はじめまして、奏香と申します。
日本生まれ育ち、現在はヨーロッパでひとりで日々奮闘している移民の一世です。こちらでは広く、私の日々考えていることや人生観などを綴っていきたいと思います。

さて、今回の記事は「多面体的アイデンティティ」と私が呼んでいるものについてです。
けっこう重いし分かりにくい話なんですが、私にとっては重要なことですし、同じように感じてる方も意外と多いんじゃないかなーと思います。

結論からいうと、私は自己紹介とか自分について話す機会があまり好きではなくて、それがなんでかというと、自己PRでは自分に平面的な「ラベル」を貼っつけるのを多かれ少なかれ強要される感じがして、人のアイデンティティを平面でなく立体でとらえている私の感覚に合わない居心地の悪さを感じるからだということです。

みなさん、人のことを理解しようと思ったときに、どうやって理解しますか。「やさしい人」「面白い人」みたいな言語で切り取っていきますか、それともなんかその人から感じるものを、色とか音とか、イメージでとらえたりするでしょうか。無意識のうちにやってることがあるかもしれませんね。
いずれにしても、その人から受け取る趣味とか出身地、身だしなみ、言葉づかい、行動、そういうあらゆる情報はすべて断片的なものなので、何らかの方法で自分の頭の中でそれらの情報をつないでいるはずです。
この作業の際、私の場合、よく美術館の庭に置いてあるような幾何学的なオブジェ、ああいうものを思い浮かべることがときどきあります。まあ形はなんでもいいんですが、平面じゃなくて立体なのが私にとってはすごく大事だということです。

なんで平面じゃなくて立体かというと、平面は正面から見ることしかできないのに対して立体は見る角度によって見え方が変わるからです。
自分がどの角度から見ているかによって、人の見え方っていくらでも変わるよ、ということですね。その人がどういう人か決めてるのは、その人自身だけじゃなく自分の見方もかなり影響しているんです。
これは私のコアなところにある考え方の一つです。

で、自己紹介に違和感がある話に戻りますけど、私はアメリカの大学を受験する準備をしていた際に「本の帯のような感じで、自分にラベルをつける」というタスクをやったことがあります。自分にラベルをつけなさい、本当にそうはっきり言われました。これがとても衝撃的だったのを覚えています。
就活の面接とか、飲み会なんかでも、これと近いことをやってると思います。
この自分にラベルをつけるというのは、私にとってはもともと立体的なものを、相手がいちばん気に入りそうなある一つの角度から写真にとって、軽く加工して、これでどうですか、と提示することになります。
だから、その写真を相手が気に入るかどうか一か八かの緊張感がありますね。
でも実際は、立体を立体としてそのまま見せたら相手がもっと気に入る一面を見つけることもできるかもしれない可能性もあります。

ガラスが粉々に割れたとき、面がたくさんできて、光をうけたときにいろんな色に光りますね。私は自分のアイデンティティをあんな感じでとらえています。

この違和感への処方箋は、まだ見つかっていないですが、私は自己紹介とかあらゆる自分のことを話す際に言うことを決めず、あえてそのときに感じたことを言うようにしてみています。少なくともその方が自分にとっては正確なので。
自分のことを話すときに道化になったりする人って、この違和感を感じてることもあるんじゃないかなーと私は思っています。

短い文章で伝えるのは難しい話ですが、何かのきっかけになれば幸いです。
ではまた、良い一日を。

(2023年6月)


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