見出し画像

『スパイダーマン/ファーフロム・ホーム』ピーター・パーカーに託されたイーディス(EDITH)の秘密。

2019年、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の集大成『アベンジャーズ/エンドゲーム』が興行収入歴代世界一に輝いた。MCU1作目の『アイアンマン 』(2008)からの応援し続けてきたファン、記念に劇場へ足を運んでくれた一見さん、すべての映画ファンを興奮と感動で魅了した。

その2ヶ月後に公開された、フェーズ3の締めくくりとなった本作『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』(2019)は、国際平和維持組織シールドは元より、多くのヒーローも姿を消した世界が舞台となっている。

亡き師であるトニー・スタークは、シールド元長官ニック・フューリーにあるものを託していた。それはこれまで数多くのIAが話題となったが、「イーディス」だ。ピーター・パーカーは一度は受け取ったものの、スーパーヒーローはまだ責任が重すぎる、普通の高校生を楽しみたい気持ちが強かった為、フューリーに正直に伝え、旅行に戻った。

今作で初登場したクエンティン・ベック/ミステリオは、映画序盤までトニーの意志を継ぐスーパーヒーローと見られたが、ベック自身が開発したB.A.R.F.システムを、「トニーに"セラピーシステム"として利用された挙句に解雇された」として、逆恨みしヴィランとなり、ピーターからイーディスが奪われた。
そんな秀才も欲しがるイーディスを、ミステリオとのロンドンの最終決戦で取り戻したが、改めてその秘密をまとめたい。

イーディスを身につけ、思いを馳せるピーター。

「FOR THE NEXT TONY STARK, I TRUST YOU」
"次のスタークへ 君に託す"

「P.S. SAY EDITH - TS」
"イーディス"と言え

ピーターの音声で起動を始めるイーディス。

『スパイダーマン/ホームカミング』(2017)のピーター専用AIカレンに継ぐ相棒。

トニーはピーターにイーディスを託したが、僕のために?のピーターの問いに、いいえとハッキリ言っているが、全機能使える為、実質の所有者となる。

イーディス/E.D.I.T.H.
トニーが眼鏡に搭載された人工知能で、拡張現実防衛システム、通称ARシステム。世界の安全保障ネットに接続でき、防衛衛星と連携し全ての大手通信網への侵入も可能。
「Even Dead I'm The Hero」の略。
トニーは略語が好きだと理解している。
略語からして、ピーターの為に開発したシステムではないのは、あながち間違いではないのだろう。
ピーター、お前に託す「PETER, Entrust you」の略語で、P.E.Y. /ペイはどうだろうか。提案する。

最後に
フューリーとマリア・ヒルが、タロスとその妻ソレンが化けていたとはサプライズだった。本作のみならずMCU全体のストーリーにも大きな影響を与えそうだ。そもそも、タロスはいつからフューリーに化けていたのか。『キャプテン・マーベル』(2019)の舞台は1995年だったが、本作は『エンドゲーム』直後にあたる2023年。実に28年もの時間が流れている。


米ComicBook.comのインタビューにて、ジョン・ワッツ監督はこの疑問に真正面から答えていた。

「時系列をはっきりさせておくと、(エンドゲーム)ラストで、トニーの葬儀にいたのは本物のニック・フューリーで、ずっとスクラル人だったわけではありませんし、『キャプテン・マーベル』以来ずっとスクラル人だったのでもありません。」

すなわち、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)で塵となったフューリーは、『エンドゲーム』で復活し、トニーの葬儀に出席したのち、スクラル人に連絡を取って宇宙ステーションらしき場所へと移動。自身の不在を埋め合わせるため、地球にはタロスとソレンを送り込んだのである。ということは、すでにマリアも宇宙での任務に従事している可能性が高いだろう。

あの宇宙ステーションが、原作に登場するシールドの関連組織「S.W.O.R.D.」の基地ではないかと予測が浮上している。宇宙からの脅威を監視、対抗するための組織という設定だ。『エンドゲーム』を経て、フューリーが地球外での新たな活動を始めている可能性が指摘されているわけだ。

これに対してマーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は、米Screen Rantにて「今後についてはお話しませんが、興味深いポイントがいくつも出てきています」と語った。「タロスとニックは長年にわたってコンタクトを取り続けて、明らかに関係を築いている。彼らはどれくらいの頻度で連絡を取っていたのか、なぜそんなことをしていたのか、ニックはどこにいて、何をしているのか」。

ところで脚本家のクリス・マッケナは、「実際にフューリーがあそこで何をしていたのか、今はお話しできる状況にありません」と話している。どうやら、このポストクレジットシーンが今後のMCUに深く関係していることはほぼ間違いなさそうだ。

ワッツ監督は「いまだかつてない、必死なフューリーが見られます」と語っていたが、蓋を開けてみればフューリー本人ですらなかったという異常事態である。では、このサプライズはどのように着想されたのだろうか?

きっかけは、本作でクエンティン・ベック/ミステリオは、フューリーをまんまと騙しきってしまうという展開だった。監督には「どうやってニック・フューリーを騙したんだろう?」という疑問があったのである。

「だって、フューリーのスーパーパワーは“疑り深いこと”ですから。そうでしょう? どんなストーリーを描きたいかということと同時に、5年間姿を消して、全力を発揮できずにいるフューリーなら騙されてしまうこともあるのかな、ということに興味がありました。そこで、まだ答えが出ていない疑問を解消できる、ちょっとしたどんでん返しを最後に入れようと思ったんです。詐欺師についての映画ですから、全てが少し違って見える、小さなツイストを最後に入れるのがふさわしい。」

また、ワッツ監督が「詐欺師についての映画」、脚本家のクリス・マッケナが「錯覚尽くしの映画」だと形容する本作の課題は「どれだけ多くの錯覚を(映画の中で)成功させられるか」だった。ミステリオの大掛かりなハッタリに並んで、フューリーが偽者だという仕掛けもストーリーを構成する大切なウソや錯覚の一種だったのだ。さらにワッツ監督いわく、本作には「誰にだって休暇は必要」というテーマもあった。フューリーの正体がタロスで、本物のフューリーがのんびり過ごしているという種明かしも筋が通っていたのである。

米Colliderにて、ワッツ監督は「すべてをもう一度見直したくなるでしょう」とほくそ笑んだ。「本当はニックとマリアではなかったのだと分かれば、映画をまったく違った形で楽しめると思います。二人の発言すべてが別の意味に聞こえてきますよ」。ケヴィン社長も、米Fandangoにて「ワッツ監督はイースターエッグを仕掛けるのが本当にうまい」と賞賛した。

「映画の前半で、フューリーはピーターに、地球のことを“我々の世界”ではなく“君たちの世界”と言っているんです。一回目は見逃してしまいますが、二回目だと何が起こるか分かっているぶん、彼らの様子を見るのが面白くなります。」

劇中には、フューリーが唐突に「クリー人の工作員」なる存在に言及する場面もある。『キャプテン・マーベル』でクリー人とスクラル人の確執が描かれたほか、そもそもクリー/スクラル戦争はコミックの重要エピソードゆえに聞き逃せないが、これもケヴィン社長によると「散りばめられたイースターエッグのひとつ。マリアやフューリーがどこか変だということを示唆するもの」。ただし、これが今後も単なるイースターエッグにすぎないのか、それともMCUの今後に通じる伏線に転じるものなのかは分からない。

なおワッツ監督は、本作にはカットされた伏線も存在することを明かしている。『キャプテン・マーベル』(2019)で、フューリーは自分がスクラル人ではないことを証明する情報として「三角トーストは食べられない」と話していたが、これを逆手に取って、本作では「フューリーに三角トーストを食べさせようとしていた」というのだ。なぜ削除されたのかは不明だが、監督は「(採用していたら)バレていたと思いますね」とも述べている。

S.W.O.R.D.は今冬にもサービスが開始する動画配信サービス『ディズニープラス/Disney+』のオリジナル作品、ドラマ『ワンダビジョン/Wandavision』での初登場が確実視されている。このままドラマに続くのか、はたまたそれ自体が詐欺映像になってしまうのか、今後のフェーズ4が楽しみでならない。


おまけ
S.W.O.R.D.と思われる施設で、休暇を取っていたフューリー。この風景、見覚えないだろうか。マーベルのオリジナルドラマ『エージェント・オブ・シールド』でフューリーが、シールド時代の部下フィル・コールソンに異星人のDNAを流用して蘇生させた『T.A.H.I.T.I.(タヒチ)計画』に類似していないか。

「エージェント・オブ・シールド」最終シーズン(第7シーズン)は2020年5月27日より米国放送予定。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?