さくらインターネットの株価はなぜ上がっているか

【さくらインターネットの株価暴騰について解説】

さくらインターネットの株価が10バガーについて解説していく。
株価10倍を達成したが、このわずか数ヶ月で株価を10倍上げた理由には3つある。

(1)政府の資金でNvidiaのGPU(H100)を大量購入してAI向けデータセンターを建設した
(2)政府クラウド事業者に選定された
(3)政府がNvidiaに強い支援を要請したり、金を配ったりとにかく支援をしている

・さくらインターネットとは
日本企業で、サーバーを提供する会社の日本の先駆け的な存在だった企業。いわゆるレンタルサーバーやさんやな。

・さくらインターネットの業績がいいの?

良くはない。
AWS(Amazon)、 Azure(MS), GCP(Google)の大手3社がぐんぐん売上を成長させていっているにもかかわらず、さくらはなんとこの5年間売上を全く成長できていない有り様である。
大手3社が、平均して年平均30%も成長している(=5年間で3.5-4倍に増えている)にもかかわらず、2019年の年商は200億、5年経って2024年も220億程度であり、ほぼゼロ成長に等しい体たらくである(利益はその間多少伸びたが)

大手3社と比べると技術力も低ければ使い勝手も悪く、とても大きなワークロード(大規模サーバー用途)に使えたものではなく、Web技術者の間ではだんだん見向きもされない存在となりつつあった。
(AmazonのAWSの売上は世界で13兆円、さくらの650倍である)

・なぜ株価が上がったの?

(1)の政府の資金でNvidiaのGPU(H100)を大量購入してAI向けデータセンターを建設したのがきっかけ。
2023年6月、125億円を投じてNvidia GPU、つまりAIの学習用の半導体を大量に使ったデータセンターを建設すると発表した。そこに50%、68億円もの日本政府の補助金が入っていることが発表されたため。

株価が猛烈に上がり始めた。

この日までに、日本政府はTSMCに数千億の補助金を出して半導体を国内生産することを発表していた。
コロナ禍で半導体が不足して困った経験、そして中国台湾の戦争リスクを考えたときに自国で半導体を賄う必要性を感じた日本政府は、国内にIT産業を復活させようと目論んでいた。

台頭し始めたOpenAI、ChatGPTの勢いに追いつこうとしても、日本国内にはAIを学習させるために使う半導体(Nvidia GPU)が大量に搭載されたデータセンターはなく、AI研究者がAIを作ろうにも半導体がないという状態があった。AIに関しても政府には危機感を感じたわけやね

AIの学習に関しては普段の日本政府の無関心ぷりとくらべると見違えるほどにAIに関する規制をゆるくして、AIを促進させようと考えていたが、そこに補助金の話が出てきたわけで、市場関係者は「半導体にも公的資金ぶっこむし、AIもこりゃ日本政府ガチやん」って思ったわけやね。

しかもNvidiaGPUは全然手に入らず、特に人気のNvidia A100という半導体は、Amazon, Microsoft, Googleのデータセンターでも完全に枯渇していて、在庫を用意すれば即座に完売という状態であった。
使いたくても使えない状態やね。
そこで更に高性能の最新型H100を2000基も用意できそうと発表したのは、市場から見ても非常に好印象やったわけやね。
建設すればその分売上が伸びるわけやし、高くても買う(使う)ユーザーはいくらでもおるわけや。
儲かりそうな話やね。

しかもサーバー代の半分が政府の金なわけやし、入手困難なNvidia GPUをなぜか2000基も用意できたわけで、空から金が降ってきたようなもんやね。

ここが1段目の株価上昇や。

・政府認定クラウドは売上に貢献するか

次に、政府クラウド事業者に選定されたことは意味があるのか検証する。

日本政府はクラウドファーストを掲げて様々なWebサービスのクラウド化を進めている。
しかしクラウドはセキュリティの心配があるため、政府がセキュリティや性能を評価して認定しないと「ガバメントクラウド」には選定をされない仕組みになっている。

AWS, Azure GCP、つまりAmazon, Microsoft, Googleの3社はそれら性能を満たしており、従来から認定を受けていた。
これら3社でクラウドの市場シェアは8割〜9割に上る。
そこにさらにデータベースソフトで有名なOracleが認定されて、4つすべて外資系という状態が続いていた。

なんとかして日本企業も使わねばと思っていた日本政府は2023年11月28日、日本政府はさくらインターネットをガバメントクラウド事業者として認定を出した。
日本政府はなんとしてでも認定をしたかったが性能要件を満たしていなかったので「2025年末までに性能要件を満たすように改善すること」という条件がつけられた。前代未聞である。
要するに無理やり認定をしたわけやな。

政府案件を受注できるようになったということで、株式市場は大いに沸いたわけや。この日から株価が急速に上昇し始める。
これが株価上昇第2弾やね。

・実際に売上があがるの?

ゆな先生はこの時点で株価が急騰していても、売上がついてくることには懐疑的だった。だからさくらの株を買わなかった。

政府のIT事業というのはNTTデータとか日立とか富士通など大手SIerが群がっているからわかるように、要は「公共事業」の色が強い。
なのでお金がバンバン出るのではという期待があった。

しかしゆな先生が投資をしなかったのは、ガバメントクラウド事業者に認定されても、実際に契約をするかどうかは自治体や各省庁などに任されていて、ただちに日本政府が大口でバンバンクラウドを契約してくれるわけではないというのをわかっていたからや。

ガバメントクラウド認定を受けているAmazon, Microsoft, Google, Oracleの4社のうち、なんと全国の自治体で採用されているクラウド基盤の9割はAmazon AWSである。
圧倒的なシェアと、他の自治体での実績、大量のエコシステム(=扱うSIer企業の数、技術者の数や経験値、ドキュメントやブログ記事など)があるからやね。

MicrosoftとGoogle, Oracleは政府案件で大した売上も利益も上げられてないわけや。

だから、その3社よりはるかに性能もエコシステムも劣っているさくらが売上を伸ばすことなんて相当なことがないと無理やろ、と思ったわけや。
ゆな先生は、さくらガバメントクラウド事業者に選ばれても売上が伸びるなんて全く思ってはいなかった。

だが株式市場はそうは思わなかった。
爆発的に株価が上昇した。
ゆな先生は「認定されても売上はあがらん」と思ったが、市場関係者は単純に売上が上がると思って買ったのか、それとも「技術的に劣っているのに認められるなんて、政府は本気でさくらを支援して行こうと思ってるに違いない」と考えていたのかもしれない。

・年末から更に上がっているのは?

2023年12月4日、Nvidiaの創業者社長、通称「革ジャン」が日本にやってきて岸田総理と面会した。
5年くらい前まで日本では「謎の半導体メーカー」とされていたのとは待遇がまるで違う。
そこで岸田総理からGPUの積極的供給を依頼された革ジャンは

「できる限りGPUを日本に提供できるようにしていく」

と約束したことが評価され、さくらインターネットの株価はさらに上昇をする。さらに

「ソフトバンク、さくらインターネット、NEC、NTTなどの日本企業と提携していく」

という発言も見られ、さらに株価が上昇するきっかけになった。
この時に、今後日本語に強いAIは日本で作っていくことになる、という発言も流れ、国内で作る=日本のAIデータセンターの需要が高まる、と市場で理解された。
Softbank、NEC, NTTと並んで言及されたのも大きい。

革ジャンは自民党で勉強会を行ったりしたが、自民党での勉強会の部屋があまりにボもロくて、なんとパイプ椅子と長テーブルの狭い部屋だった。

「時価総額200兆円、世界トップ5の会社のCEOをよくこんなところに招いたな」

という感じの揶揄するツイートをしたところ、片山さつき議員
@katayama_s から

「いい会やったし革ジャンも上機嫌やったで!」

という反論のDMがゆな先生に届いていたのだが、ゆな先生はスパムDMを表示しない設定にしていたので片山氏のDMに気づいたのはなんと2ヶ月半後の2024年2月末であった。
2ヶ月半も経つとなんとなく返信しづらいが、悪気はない。
片山議員、無視してしまった形になって申し訳ない。

・年始からもなぜ上がってるの?

業績がついてきていない状態ではあるが、Nvidiaの業績が良かったことが大きい。

Nvidiaは2月末に最新の四半期決算報告をしたが、市場のアナリストたちの予想した数値よりもだいぶ上の売上と利益の結果を発表した。

GPUの供給不足の問題は大きく改善し、最新のH100を含む多くのGPUが大量供給できていて、最新鋭のGH200(Grace Hopper)も好調が予想される。

また、3月頭に開催したNvidia GTCという技術カンファレンスで、Nvidiaは最新鋭GPUとしてB100というGPUを発表した。
さらにDellが情報をおもらしして2025年にB200というさらに強力なGPUがリリースされることが判明し、さらなる盛り上がりを見せている。

・今後の株価は?

ゆな先生はAIで儲かる会社は限られていて、AI開発企業にツルハシを提供している会社だと考えていた。
Nvidiaはその典型例だった。
だからこの熱狂は、業績もついてこないとすぐ冷めるかもしれないとも思っていた。
ゴールドラッシュで一番儲かったのはツルハシを売る会社だったという逸話もある。

しかし、最新のDell Technologies(サーバー屋)や、SuperMicro(AIサーバー屋)の業績を見ると、Nvidia GPUを仕入れてサーバーにして売るだけの会社もまた大きな売上と利益両方を確保できていることがわかっている。
両者とも、株価がATH(All time High=史上最高値)を遥かに更新して暴騰している。

つまり、とにかくNvidia GPUを大量に仕入れることが出来れば売上も利益もついてくることが判明したわけで、さくらインターネットが大量にGPUを仕入れることが出来るか次第ということになる。

ここで岸田総理と革ジャンの会談で「日本にGPU供給できるようにするで」というあの言葉が思い出される。
大量にGPUが供給できるならば、という条件つきではあるが、それを日本政府の関与なり、日本に親しみをもつ革ジャンの厚意なりによって実現できれば、業績も株価についてくる。

それが現在のさくらインターネットの株価の状況や。
ゆな先生の株式投資の専門分野は半導体やけど、面白い分野やで。
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