【お仕置き小説】女子寄宿舎の反省室

 私の目の前で艶やかな長い睫毛が微かに震えている。
 その下で小さく作られた握り拳も白くなるほどきつく力が入っているのが分かった。
 注射の時と同じだ。気を紛らわす方法としてはありがちな方法。私だって自然とそうなるから分かる。

 彼女は星野エンリさん。
 かなり人数の多い学園で、しかも隣のクラスだけど名前は知っていた。
 これほど近くで、学園でも愛くるしい顔としなやかで均整のとれた肢体の持ち主として有名な星野さんを見たことはない。
 新聞部編集の発禁本「抱き着きたい少女百選」の第三位に入った程の容貌の美少女。
 もちろん、新聞部は今の彼女以上の厳しいお仕置きを受けることになったのは言うまでもないけど。

 震えは彼女の性格と気性からみても怯えではないことを分かっているから、痛みによる自然な身体の反応としてのことだろう。
 お仕置きにそれなりに慣れている上級生ですら早々に許しを乞うシスターのお仕置きに歯を食いしばってじっと耐えている姿には、呆れとともに尊敬すら覚える。

 数瞬後、星野さんのふわふわとした柔らかなショートボブの濡れ羽色の髪がびくりと跳ねた。
 ぷっくりとした紅い唇から吐き出された小さな悲鳴とともに、顰められた眉の下の猫のような黒瞳からはじわりと涙が溢れ出している。

 生徒指導のシスターの言いつけ通りに、上半身を机に伏せさせられた彼女の手をしっかりと握っている。
 違反者がお尻を庇わないようにそうするのが風紀委員の私の仕事。 
 何のメリットもなく、目の前で自分も受けたことのあるキツイお仕置きを見なければいけないなんて罰ゲームもいいとこだ。当然誰もやりたがらないから、くじの結果で私は負けた。

 でも、今回だけは少し違った。ケインが肉を打つ音は相変わらずこちらの心臓も痛くなるけど、それを忘れるくらいの綺麗な顔が目の前にあるのだから。
 私がそんな邪なことを頭の片隅で思っていると、ぎゅっと痛みを耐えようとして瞑られた彼女の瞳がふと開いて私と目があった。
 遠い異国の血が黄金の色を。光加減でほんの微かに琥珀色に見えるエキゾチックな瞳に魅入られてしまう。心が、魂が吸い寄せられる。
 さっきまで煩いほどだった心臓の音が遠くで聞こえている気がした。
 緊張と恐怖で胃の上の辺りが苦しかったというのに、彼女の潤んだ黄金の瞳を見た瞬間自分がどこにいたかさえも分からなくなった。
 はっとして思わず取り繕うように声をかけようと口を開きかけた ると同時に何打目のケインが彼女の剥き出しのお尻を弾く。

 ビシリッ!

「……ぃっ!…つっ…」

 乾いた肉を打つ音に、彼女は小さな呻き声を漏らす。
 危なかった…。
 まがりなりにも風紀委員がお仕置き中に私語なんてしたら彼女の倍はお尻を鞭打たれることになっただろう。
 ああ、口元にちょっと愛想笑いなんて浮かべながら何かを言いかけた私は多分凄く間抜けな顔をしていたと思う。恥ずかしい。 
 ちらりと星野さんの方を窺うと、彼女はまた俯きがちに執務机に目線を落としながらきつく唇を結んでいた。お尻全体に浸透していく辛い痛みに耐えようとしているのだと思う。

 私は謝罪と頑張ってという言う意味を込めて、ほんの少しだけ握った彼女の両手の甲をポンポンと小さく柔らかく手の平で叩いた。

 星野さんの顔は俯いたままこちらを見なかった。だけど、強く握りしめられた小さな二つの拳がまるで仔猫のように私の手の平に甘えるようにすりすりと二、三度往復した。 

 ビッシィッ!

「んぅっ…!」

 そうしている間にもまた、きつい打擲音と彼女のくぐもった悲鳴。
 いくら気の強い彼女とはいえそろそろ我慢の限界なのかもしれない。
 ケインの数は十打を超えた。お尻の痛みを紛らわそうとその肢体を身悶えさせ、食いしばった歯から漏れる悲鳴の声は涙混じりで大きくなっている。

 私は風紀委員という立場をほぼ忘れてしまっている。この特等席に感謝する程度に。
 彼女の瞳や手の温もりを強く意識してしまった私は、いけないことだと思いつつも彼女の様子を細かく観察してしまう。  

 今、星野さんは机に伏せていて私は立ってその手を押さえている。
 どうしたって背中からのライン、捲り上げられた制服のスカート、そして盛り上がった二つの丘、白い双臀が見えるわけで。

 ビシッ!

「いっ…!……たぁ…」

 星野さんの艶めかしいお尻が木の鞭で弾かれる。お尻の肉をぐにゃりと潰れてぷるぷると揺れて戻った様を私は食い入る様にじっと見てしまった。
 もちろん角度的にお尻が紅く腫れているところは見えないが、お尻のすぐ下まで下ろされて丸まっている星野さんの淡い水色のパンツや打たれた後に無意識に上下させてしまっているお尻は見える。
その姿はお仕置きの時の自分とは違ってとても可愛く思えた。

 この学園の女の子なら誰しもがケインでお尻をビシビシ打たれている。
 だからその痛さは十分にしっているし、情けなく泣き喚いた姿が綺麗なはずもない。
 そう、普通はこんなにも人を惹きつけたりはしないはずなのだ。

 ビッシィッ!

「ひぃっ⁉」

 一際甲高い鞭の音に私は自分が叱られたように思わず身を竦めた。それと同時に星野さんの肢体が跳ね上がり、頬を涙が伝う。
 膝を曲げ声にならない声を上げて痛みを堪えようとしている姿に私は緊張からくるものなんかよりもよほど狂おしい鼓動の高鳴りを感じていた。

 何て悪い子なんだろう、私って。だって、星野さんがお尻をぶたれている姿をもっと見ていたいと思ってしまうなんて。
 また唾を呑んだ。さっきから何度も落ち着こうとして唾を呑む。

 彼女は震える足をどうにか伸ばして、紅い蚯蚓腫れに覆われたお尻を突き出している。
 じっとりと汗をかいた額に艶やかな髪が張り付いて彼女の苦痛のほどが見て取れる。
 今日のお仕置きはかなり厳しい。校則違反の累計でケイン打ちの数が多いせいで、星野さんは限界みたいだった。

 ビシリ、ビシリ。
 鞭の音とともに目の前で振り乱される星野さん髪、背は弓なりにしなり、泣き声をあげている。  
 打たれる度にびくりとお尻をくねらせているが、お尻を逃がそうとは出来ないから私の手を必死に掴んで我慢していた。

「ああーっ!ごめんなさぁい!ごめんなさいぃ!ごめんなさぁあいっ!」

 ビッシィッ!

 流石に心が折れてしまったのか、頬を涙が次々と伝っていく。
 幼子のようにごめんなさいと繰り返しながら泣き叫ぶが当然手は私が押さえているから涙を拭うことも許されない。
 私に押さえられ、見られていることなんかもう頭にないようだった。

 それからどれだけ打たれたのか。シスターのよろしいという声でようやく星野さんのお仕置きが終了した。私は少し名残惜しい気持ちを残しながら、汗ばんだ手を離す。
 星野さんは離された手で涙を素早く拭うと、体を起こしてお尻を押さえた。痛そうに熱い息を吐き出す。
 重力に従って腰まで捲り上げられていたチェック柄の制服のスカートが紅く腫れがったお尻を隠した。眉を顰めながらもゆっくりと火傷に触るようにパンツをあげる。
 私はその様子をぼうっとみていた。その視線に気づいたのか、星野さんは恥ずかしそうに手で顔を隠した。

 そのあと、シスターが少しお説教をしてお仕置きは終わり。
  …のはずだった。
 星野さんが足早に部屋を出た後に私はシスターに呼び止められ、お仕置きを宣告された。
 ぼうっとしてちゃんと仕事をしていなかったでしょう?と言われて言い訳もできなかった。
 星野さんのお仕置きに心を奪われた罰だとしたら、甘んじて受けるしかない。
 身体を机へと伏せ、お尻を剥き出しにする。星野さんと同じように。
 彼女と同じ罰を私もお尻に刻み込むのだと思うと、いつもとは違う厳しくも甘い鞭へと変わった気がした。
                                                               Fin

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