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戦いはまるで1916年の大砲戦ーウクライナで戦ったアメリカ人兵士の証言翻訳Newsweek

Newsweekの独自取材。ルヴィヴでウクライナ兵と共にロシアと戦う元アメリカ軍人に話を聞いた。

 ルヴィヴはアメリカ軍人でいっぱいだ。制服ではない、現役ではないアメリカ軍人。この古い町の通りに並ぶカフェで、アメリカ英語が聞こえてしまったら、聞かなかったふりはできない。

 数千人いる外国人のうち、直接ウクライナ外国軍と契約し、公式の兵になっている者もいる。ウクライナ外国軍はロシアの侵略が本格的に始まった2月24日に設立された。公式の兵でない者は、前線でも後方でもウクライナ兵の訓練をする名もなき集団に属している。

 彼らのようなアメリカ人は当然の事だがロシアの工作員に対して非常に用心深い。しかし一度信用すれば、何故彼らがこのロシアの侵略者が民主主義のウクライナを地図から消そうとしている”ダビデとゴリアテ”の戦いに参加しているのかを話してくれる。彼らは何のために戦い、そして何に命をかけているのかが明確だからこそ話せるのだろう。

 テラステーブルのあるカフェで出会ったエルビスは緑の野球帽をかぶり、防止には筆記体で”non de guerre"と書いてある。体格はそれほど大きくも無く、細めの20代半ば、細目の目からは常に周りの脅威を読み取っているような、そんな雰囲気が漂っていた。彼は4月16日にロシアと戦うため国際部隊に参加した。

彼が話すに当たってNewsweekに提示した条件は一つだけ。

”この話を政治的にゆがめない事。私は家に帰れなくなった仲間の為に話すのです。あの街で死んでいった仲間の為に。人々は生の真実を知る必要がある”

”あの街”と言うのはセベロドネツクの事である。東部ウクライナの工場の街で、6月に入ると長い砲撃戦に突入し、ウクライナ軍は6月25日に撤退することになった。それ以来ロシアはリシチャンスクを取る勢いだ。同時にスロビャンスクに対して砲撃を開始し、エルビスの言葉を借りれば、ドンバス戦争の”削り”が行われていると言う。

”この戦争はイラクじゃない。アフガニスタンでもシリアでもない。ミンチ戦です”と彼は言った。”第一次世界大戦の西部戦線みたいですよ。常に砲撃の応酬だ”

アメリカは過去50年間このような戦争の経験はないとエルビスは言う。

”砲撃戦だから”第一次世界大戦に近いですね。こんなレベルの戦いはベトナム以来でしょう。ブービートラップ(仕掛け爆弾)ってあるでしょぅ?あれがあるんですよ。走ってトンネルに飛び込む!みたいな。3千人のロシア兵が群がってくる。こんな戦いは第二次世界大戦以来見たことがないです。”

エルビスによるとアメリカもNATOもこのタイプの戦闘の準備ができていないと言う。

”もしNATOが出てきてロシア戦線を全部空爆して破壊したとしても、アメリカにこんな戦いはできない。この類は無理です”

彼によると、ウクライナ軍も国際志願兵として参加した兵も両方がこのロシア軍の砲撃戦への準備不足が否めないと言う。ラッセル・オノレ将軍がNewsweekに語った言葉を借りるとロシア軍は”世界一強力な砲撃部隊”なのだ。

”トップクラスの兵隊が来てますが、こんな戦いの訓練をしてる人はいません。Tier I、SFとか、GSG9、SASもいます。でもロシアの砲撃に食われて、くちゃくちゃ噛まれて吐き出されるようなものです。訓練なんかなんの意味もありません。ヤバイ所にヤバイタイミングでいたら砲弾が飛んできて、数秒後に死にます。”

”キューンて音が聞こえて、その音がどんどん大きくなるんです。超高速列車が通るみたいな爆音になります。そしてその音が長く続けば自分に近づいてきているって事で、短い音なら遠いから問題ない。もしその音が近づいてきて自分のそばまで来たらキルゾーン。逃げるなんて無駄です。”

”いい事もありますよ。気が付く前に死んでるって事ですね。”とエルビスは言った。”僕が見たのは砲弾が直接当たった人。彼は原型をとどめてなかった。あちこちに彼のパーツを見つけました。例えば小指がある~とか、一番すごかったのは誰かのイチモツが壁に引っ付いてた時。のりでくっつけたみたいに。でもこれが現実です。
究極になると誰もヘルメットを付けなくなりました。何故かって砲弾が飛んで来たら簡単に死ねるように”

”僕が到達したのは、砲撃の音が止むと、身の危険を感じる状態まで行ったことです。音がしているうちは、やつらが何をしているのかが分かる。ロシア軍が静かになった時には何かを計画している時だから、そっちの方が恐怖でした。その静寂が今からやるぞってサインなんです。”

エルビスはセベロドネツク制圧時、ロシア軍空爆後の戦術を語ってくれた。

”ロシア軍は強く押し込んでくるときはまるでゴキブリですよ。何千で押し寄せてくる。うちらが200~300人だから3,000人なんかを止める事はできません。普通に通りをトコトコ来てるうちには沢山殺すことができました。でも彼らはどんどん戦術を上げてきて、建物に沿って、一つ一つクリアしてから進んでくるようになりました”

”第一波はだいたいドネツクとルガンスク軍の正規兵が来ます。少しロシア人が混ざってる状態で。格闘用専門兵を入れてくる感じですね。死ぬ確率が高いのを知っているから”

”その後国家防衛隊、でチェチェン兵、それからBMP-3かT-90に護衛されたGRUスペツナズ(特殊部隊)が来て、だいたい砲弾とかロケットの中とか後ろを歩いてます。”

”T-90は奴らがウクライナの部隊を見つけた時にメインで使います。ウクライナ兵全員が単純に全滅したのを見ました。ロシアは殺せるだけ殺してるって印象です。戦略的に動いてるって言うより、ただ殺そうとしてる”

そして彼はロシア軍が市民の生活を無視していると言った。

”セベロドネツクの武器は郊外にあったけど、たまにT-90が来て、めたらやったら撃ちまくってました。戦争犯罪です。僕らに対してはリン弾も使うしクラスタも使う。ジュネーブ条約シカトで何でも落として殺すって方法です。”

ただし彼は、犯罪行為はロシア側に限らないと言う。

”これは神に誓う真実です。ウクライナ側も留め金が無くなった状態になっています。対空ミサイルを人間に使ったりします。武器が限られていたので。14.5cmの対空ミサイル、ディッシュガンよりちょっと大きいヤツを、開口部を見ればすぐわかるけど明らかに対空ミサイルを窓にセットして、撃てば一気に15人とか一瞬で(指パチン)-バイバイ”

エルビスは同時に戦場での民間人への犯罪行為も話した。

”みんなに気が付いて欲しいのは、ウクライナ軍は戦争犯罪を隠すのがすごくうまいんです。最近は集団墓地なんか作らないでただ焼いちゃえばいいってなってる。市民を連れてきて情報を聞いて、ロシア制圧下になりそうで戦えそうな年齢はただ処刑する。女子だったら年齢なんか関係なく、9歳でもレイプして殺す。殺さないでレイプされ過ぎて自殺するまで使いまわすときもあります。”

”死体も持ち歩いて汚すのが好きですね。聖書のシンプルな言葉で言うとただの”悪魔”。死体を串刺しにしたり切り刻んだり、人々に恐怖を植え付ける為に死体を展示したりする。そりゃ心理的なダメージはあります。彼らはは完全に頭がいっちゃってます。”

エルビスは内偵調査で戦争犯罪を目撃したが、それを止める力はなかったと言う。

”僕が居る間だけでもアホみたいに犯罪を犯してました。一つ一つ指摘したかったけど、黙っているようだった。騒ぎ立てると自分たちがやられる、自分が殺されるって事だから。不幸な事につらい決断を何度もするようでした。
戦闘って言うのは、銃で撃ったり砲撃をよけたりって思うでしょう?それだけじゃないんです。日常では起こらないような事が目の前で起こってそれを見ていないといけない。おまけにそれを止めるすべがない”

エルビスはロシア軍が撤退した所には地雷が仕掛けられており、そこで死者がでる可能性も指摘している

”ロシア軍が撤退する時は地雷を置いてくんです。普通の村なのに関係なく。子供が乗っても気にしないんです。近接地雷は近くを通るだけで上に乗らなくても爆発します。空中に撃ちあがり、ジジジジジって聞こえたらボーン!半径100メートル以上アウト”

”ザポリージャ以南の戦いはまったく近代的じゃありませんね。あの辺はだだっ広い野原に生垣があるだけ。だから生垣から生垣に移動する感じになる。で、もしロシアが過去にそこにいた場合、あいつらは必ず何かを仕掛けていきます。例えば罠、地雷が木に仕掛けられていたり、ただのフレアだったり、F-1手りゅう弾とか。接近地雷だったこともある。だからみんなでフォレストガンプのチョコレートボックスみたいに何があるのかお楽しみ~って冗談言ってた”

敵対し合う紛争でそれぞれの戦術があったとしても、エルビスのような西側の兵士はウクライナの必死の防衛には疑問があると言う。アメリカの訓練士はウクライナの兵士に、いかに武器や物資が豊富に提供されているのか自慢げに言う。しかしドローンのような商用ガジェットを軍事利用する為に改造したとしても、ウクライナ軍は西側から提供された軍備の活用に失敗しており、ゴミになっていくのがストレスの元にもなっていると話す。

”西は確かに軍備を送ってくれてます。そうそう、トリプル7(M777)を見ました。すごく良いものだけど、前線でどうやってそれを効果的に使うのか分かる人が居なければ、どうにもなりませんね”

”僕の一番の愚痴は、ウクライナ軍の幹部が必要な武器を持ってるにも関わらずうちらに渡さない事です。キエフには西にもらったNVG(暗視ゴーグル)があるのに、倉庫に眠ったまま。トレーニングもしてない特別な部隊にだけ配ってるんです。彼らはそれを受け取っても”傷が付いてるじゃん”とか”使えねーよ”とか文句ばっかり言ってて、俺に言わせれば、お前ら使い方わからないだけじゃねーの?って。西から来ている兵は全員それなりの訓練を受けているから、NVGを付けて運転だってできる。NVGを付けた作戦の進め方だってわかるのに、ウクライナ人は支給されたものを生かそうとしないんですよ”

”アメリカやイギリスから来てる人はは大抵20年以上の戦闘経験があるから、そういう装備の使い方は良く分かってます。それが自分たちのの強みなんです。でもウクライナ兵は言う事を聞かない、プライドだけ高いんです。プライドが高いのは悪い事ではないけど、自分の国を守ろうとしてるんでしょ?それで守れなかったら自分の国を失うんだよって思います。おまけにウクライナの思想ってのが”国の為に死ぬ、英雄を称える”ってやつで、それは尊敬するけど、国の為に生きるってのも必要だろって思う。今生きてる人たちが全員死んだら意味ないから”

苦難が待ち受けているが、ウクライナの権利の未来の為に、ウクライナに残って戦う事を選ぶエルビスのような人々が後を絶たない。

”これは一回しか言わないと誓います。でもここに来ているみんなは同じ気持ちです。我々は最高司令官(バイデン)がアフガニスタンから撤退を決意したのは恥だと思っている。ああいう撤退の仕方は20年間で負傷したり死んだりした兵の事を何も考えていないと思う。僕たち全員にファッキューを言ったのと同じです。祖国が背を向けたその時、ゼレンスキーが戦う人が必要で、戦えばウクライナ国籍がもらえると言うんだから、戦う事しか能がない自分たちは・・・・”

”ここには心も思考もない。戦いだけ。自分の得意としていることで、一国を救おうとしている。だからまだここにいるし、隠す事なんかありません。ウクライナ人は製薬会社とか石油会社の社長みたいに金持ちになりたいなんて思ってなくて、ただ自由を信じて命をかけているんです。だから僕たちはそんな人々を助けてる”


よく訓練された兵士でもロシアの砲撃戦には壊滅的な影響が出ると言う。

”何人も見てきました。何て表現したらいいかわからないけど、話してた人が一瞬で死にます。数分のうちに。話していたのに、砲弾が飛んできて、一秒で(指パチン)”

”自分には変な風に影響していると思いますよ。人間が砲弾で吹き飛ばされるのを見るのが日常になってしまったから多分平常とは言えないですね。セベロドネツクの前線で戦ったあと、家に帰る人は問題抱えると思う。そんなんだから僕はアメリカに帰ろうとは思わない。”

”自分が見たことは誰かに話せる事じゃないですね。アメリカの退役軍人省が志願してここに来た人も支援してくれるってようやく発表がありましたけど。でも自分はヨーロッパから離れないと思う。なんの為に国に帰るの?って。ホームレスになりに?ガソリン代が1ガロン6ドルなのに?そんなの嫌ですよ”

Newsweekはロシア国防省とウクライナ防衛省にこの話についてコメントを求めた。

次の日、エルビスからメッセージが来た。彼は前線に戻るとのことだった。


※麻薬中毒の話と死体がどうのこうのは翻訳していません。

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