仲林自伝〜初恋4〜

私は大学生の時にイギリスに1ヶ月だけ短期留学をしていた。あの天下のオックスフォード大学に留学していたのだ。早稲田大学にあった金を払えば行ける留学制度であったのだが、その時にフランス人と仲良くなった。名前はレミと言う。彼は日本に興味があり、色々と質問をしてきた。そんな中、ケイが好きな日本のアーティストを教えて欲しいと言われたので、ポルノグラフィティとミスチルと答えた。ポルノグラフィティってとんでもない名前のバンドだねと言っていた。確かによく考えると、私たちからすると「エロ画像」って言う外国のバンドがいいよと勧められていることになる。イカれちまってると思うだろう。そのレミにある日、日本語を教えてくれと言われた。馬鹿な仲林はラッキーガールという意味だよと言って「うんこ」と言う言葉を教えた。レミに「運」と「子」の辞書のページを見せて、納得させたのだ。そしてレミは日本人の女性に会うたび、うんこうんこと連呼するようになった。誰か教えてあげてくれればいいんだが。元気にしてるかな、レミ。

全然脈絡もない話だが、本編に移っていこう。

春休みの直前、突然先生から衝撃の事実を告げられた。カナちゃんは私立の中学に転校すると言うのだ。3年生からその中学に入るために半年弱の間、私の中学に転校してきたのだ。

ここで、私の初恋は終わりを告げた。

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と言うのは冗談だ。そのぐらいで諦める男ではない。終業式まで、あと二日しかなかった。当時、携帯電話がそこまで普及していなかった時代、もちろん私も持っていなかった。これからの連絡手段をどうすれば良いのか、仲林は悩んでいた。わたしにはオタクの兄がいる。その兄であれば何かわかるのでは無いか。そう思い、兄の部屋を訪ねた。

兄貴は高校時代から不登校になっていた。全く部屋からも出ず、ずっとゲームをしたりアニメを見たりしていた。食事の時間になると兄貴の部屋の前に食事が置いてあり、それを兄が回収し、食べ終わったら外に出すと言う絵に書いたような引きこもりだった。仲林家で話が出来るのは選ばれし勇者であった私だけであった。

「兄貴、話があるんだけど」

そう言って扉をあけてもらうと、部屋からとんでもない異臭が流れてきた。当時兄貴は全くお風呂に入らず、高校時代にすでにハゲていた。ちなみに親父もハゲており、おじいちゃん2人ともハゲている。つまりは仲林、ハゲ確だ。どんなことがあろうと運命には抗えない。ハゲることが確定しているのだ。絶望に抗うことは出来ないのだ。

兄貴に好きな人がいること、連絡手段が家電しかないこと、彼女が転校してしまうことを伝えた。もちろん彼女などいたことのない、童貞100%の兄貴に聞くのも我ながら馬鹿だったなとは思うが、当時は藁にもすがる思いだったのだろう。

「それならチャットがいいよ」

チャットと言うものを皆さんはご存知だろうか?今でこそ色々なゲームについているが、当時はチャットルームを作り、みんなで集まって会話をするだけと言う原始的なものだった。兄貴にしてはなかなかいいアイデアを出してきたなと感心した。早速カナちゃんの家電に電話をし、みんなでチャットルームを作ろうと言う話になった。

兄貴がいる時だけと言う約束で、兄貴のパソコンを借りるとが出来た。あんた引きこもりだから家にいないことなど、ほとんどないだろとは思っていたが、秋葉原に月に一回だけ出かける日があったのを思い出した。早速、私はチャットルームを立ち上げた。

URLとチャットルームの名前をカナちゃんに伝えて、カナちゃんを待つ。その間、暇だからマインスイーパーでもしようかと、デスクトップを見ると動画と言うファイルを見つけた。エッチなの無いかなと開いてみると、ご名答、AVの格納庫だった。しかし背中に兄を背負っている状況で見ることはできないため、兄貴が秋葉原に行く日に楽しもうとさっとファイルを閉じた。

カナちゃんは5分経ってもこない。まだかまだかと仲林は待ちわびた。10分たった。マインスイーパーも2周ぐらいしていた。

「ぴろりん」

誰かが入室した音が聞こえた。カナちゃんがやっときたのかと、マインスイーパーを閉じてチャットの画面を見た。

「みあが入室しました。」

なんでやねん。

読者の皆さんはこれを嘘だと思うだろう。私も当時目を疑った。紛れもない事実だ。みあちゃんは幾度となく仲林の邪魔をしようとする。

みあちゃんに、なぜこのチャットルームを知ってるのか聞くと、カナちゃんに聞いた、カナちゃんも後で来るからクラスの子も集めてるとみあちゃんは答えた。仲林の計画は台無しになったが、これからもカナちゃんと連絡を取れることに喜びを覚えていた。

そして春休みになり、仲林の恋は急展開を迎える。

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