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JAET よみもの 片山士駿①

「きっかけ(切っ掛け) 」というのは、自分の思いもよらない所に転がっているものです。

音楽との出会いや始まりは、人によって千差万別。初めから自らの強い希望があってその楽器 を手にした人、或いはひょんな事から手にした楽器が、自分にとってピッタリだった人...色々な形 があって、みんな違ったルーツがあるから面白いのだと思います。僕がフルートとジャズを始めた きっかけも、まさに思いもよらない場所にありました。

僕が音楽を始めたのは、中学1年生の春。中学受験に失敗し、滑り止めだった都内の一貫校に 入学するのですが、特に目標も無く、これからどうすっぺか、と思っていた矢先の事でした。兼ね てから音楽を聞くのは好きだったのですが、当時よく聞いていたアニメ映画のサウンドトラックの 中で、一際音が目立っていた楽器が何なのかを知る事になります。それは...ティンパニでした。 ズコーー!フルートじゃ無いんかい!そんな声が聞こえてきそうですが、何を隠そう僕が初めて 手にしたのはフルートではなく、打楽器のスティックです。このティンパニなる最高にカッコいい音 の出る楽器を叩きたい、そう思って吹奏楽部に入ったのが切っ掛けでした。それからというもの、 やればやるほど楽しくて、初めて半年後には「将来はこれを職業にしたい」と思い始め、音大に進 む事を決めて、プロオケの打楽器奏者の方のレッスンにも通うようになりました。そんな中、まも なく中学2年になろうかという頃に、僕は出会ってしまうのでした...。

僕の記憶が間違っていなければ、当時母校の吹奏楽部は人が少なく、廃部の危機すらあった状 態でした。そんな中、僕らが入学した年にごそっと入部し(中高一貫校だったので、新入生自体の 数は多いのです。)、何とか合奏が出来る人数に達したような、決して強豪と呼べる規模のもので は無いものでした。その為部員の人数に対して、学校の備品楽器は、各パートぽつぽつ使われ ていないものがある状態だったのです。先に述べた通り、音楽を聞くのは好きだった僕は、ある 時「Fly Me To The Moon」という曲をフルートが演奏しているものを耳にします。クラシックや吹 奏楽で聴くそれしか音色のイメージがなかったフルートでしたが、その時初めて「ジャズもあるん だ!」と思い、使われていなかった備品のフルートを借りて、部活が終わった帰りに近所の公園 でピーヒャラ練習し始める事になります。そしてこれまたある日、先述の「Fly Me To The Moon」 はサントラの録音なのだから、本当のジャズミュージシャンのフルートはどんなものか、という興 味が湧いて、偶々手にしたCDが、フルート奏者 Jeremy SteigとピアニストBill Evansの連名に よる名盤「What’s New」だったのです。

「What’s New」を聴いた時の衝撃は今でも忘れられません。これまでのフルートのステレオタイ プを一気にぶち壊すような、エネルギーに溢れた野生的な演奏。まさに雷に打たれたような衝 撃。初めは演奏から狂気すら感じました。しかしそれが本当に格好良くて、僕もこれがやりたい!


次第にそう思うようになりました。いつしか打楽器よりフルートの練習の方に熱が入ってしまい、 中学卒業の頃には夢はすっかり「ジャズフルート奏者」になっていたのでした。この後、片山少年 はいよいよ本格的にジャズの道にのめり込んで行くのですが... ここからまたながーい話になるの で、それはまた次の機会に...。


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