見出し画像

うさぎや(阿佐ヶ谷)

阿佐ヶ谷駅の北口を出て、線路の高架沿いを高円寺方面に向かうと三本の細い道に枝分かれする。

高架下の道は最も人通りが多く、こだわり食材のスーパーや1000円カット、セイレーンのロゴを持つ人気シアトル系コーヒースタンド、大衆中華料理チェーンにピザを出す洒落たバルまでバリエーション豊富な飲食店が並ぶ。その一つ北側の道は駐輪場に続く高架下と並行する味気ない道で謎の廃車が何年も前から置いて(うち捨てて?)あり、もはや現代アートの一種なのではないのかとも思えてくる。そしてさらに北側の道は駅から進むと、たこ焼き屋、花屋、有名なお笑い芸人の事務所と経て、どらやきで有名な和菓子の老舗「うさぎや」が姿を現す。

「姿を現す」という表現が全くしっくりこないくらいの見落としてしまうほどひっそりとした佇まいの狭いお店だが
日中に通る人であれば誰もがその店先をついつい覗いてしまう。
お店には和菓子を買い求めるお客さんでいつも行列ができているのだ。

「どらやきのうさぎや」というと、和菓子好きの人であれば上野広小路のうさぎや、
もしくは日本橋のうさぎやを思い出すかもしれない。
僕の敬愛する音楽評論家の伊藤政則先生も甘味好きで有名でたびたびうさぎやの名前を口にするが
先生のいう「うさぎや」は上野広小路うさぎやのことである。

この阿佐ヶ谷のうさぎやは上野広小路の店の暖簾分けの店舗というわけではなく
上野広小路うさぎやの創業者の娘さんが東京大空襲で嫁ぎ先の材木屋が焼けてしまい、
生活を立て直すために西荻窪の地で和菓子店を開業したことが歴史の始まりで、
店舗の賃貸契約期間の関係で、西荻窪からの移転先に選んだのが現在の阿佐ヶ谷の地だったという。

ちなみに、日本橋うさぎやも上野広小路うさぎや創業者の息子さんが始めたもので
暖簾分けではなく、それぞれの店が子孫によって受け継がれている同名他店なのである。

店は入口入ってすぐに商品を並べたカウンターと会計がある。
和菓子屋ではよくある、店先の番重に商品が並んだスタイルではなく
一品ずつの見本だけが並び、注文を受けてから奥にある工房で詰めて提供する方式をとっている。
理由はわからないが、阿佐ヶ谷にあるほとんどの和菓子屋は「番重スタイル」を
とっているので高級店舗でよく見るこのスタイル(必ずしも高級店スタイルとは思わないが)で提供している店は珍しい。

今回購入したのは
どら焼き10個入
どら焼き5個入
塩大福
餡団子
みたらし団子

どら焼きはアカシアはちみつを使ったしっかりと甘みのある味で
一方の餡は甘さが控えめ。

塩大福はお餅が口でとろけてほどけるような柔らかさで
豆は塩気が少なめ、餡もどら焼き同様に甘さが控えめになっている。

団子はどっしりとした大きさのしっかりとした食べ応え。
餡は同じく甘さ控えめ、みたらしのたれは甘さよりも塩気が勝つタイプ。

数種を食べ比べると全体的に甘さを控えた味付けになっているが2個目に手を伸ばしたくなる絶妙な甘さなのだと気づく。

今回は買ってはいないが日持ちのする最中に使う餡はしっかりとした甘さだというので次回はこちらも食べ比べてみたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?