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BLとBromance

最近BLドラマをたくさん見ていて、ふと思った。
「私、BLが好きなのかな?」
今更ながら。

このnoteを始める時にBLという言葉を使うのに実はかなり抵抗があった。もう今は巷では市民権を得ているありふれた言葉かもしれないが、わたしにとってはある時突然耳にするようになった言葉で、自分との間に少し距離感も感じてきた。自分の嗜好を表すためには私自身は未だ使い慣れていなかったし、男子の恋愛モノということはわかるけれど、本当はどの程度までの何を指しているのか把握している自信もなかったので使いにくかった。”boys”というのもちょっと引っ掛かった。

しかしながら、私がこのnoteを始めるきっかけになった『チェリまほ』は明らかにBL作品として世の中で好評を博していたので、それを好きということはBLが好きと言っても差し支えはないのだろうと思い、私としては割と思い切ってこの言葉を使い始めた。そして、長年好きなジャンルだったので、『チェリまほ』以後続々と製作されることになったBLドラマを見て感想を書いてきた。

ただ最近立て続けにBLドラマを見ていて、「こんなにBがLばっかりもどうかなぁ・・・」と思う自分に気付いた。「今度はこの組み合わせで、そのパターンか」みたいな、そう、『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』の主人公・モブみたいなちょっと引いた目線に時折陥っている自分に気づいた(『絶対BL』はドラマは未視聴。他の方の紹介記事を読んだり、先日原作漫画を少しだけ拾い読みしたくらいだが、面白い)。

長年好きなジャンルではあったが、以前はこんなにドラマや映画が矢継ぎ早に放送されるなどということはなかった。いつからこんなにBLが人気になっていたのか知らないのだが、私自身はBLドラマを見たことは、『チェリまほ』以前はほとんどなかった。ちょっとそれっぽく解釈できそうな男たちの結びつきをテーマにした作品を見たり読んだりして、余白を楽しんでいた。

それが今や、毎クールどこかで国内外のBLドラマが放送されるばかりか、そこに当代の人気俳優が主演したりする。BL漫画も小説も大人気らしいし、人目を憚るものではなく普通に楽しめるジャンルに、しかも世界中でなっているようだ。

BLはラブストーリーなので、もう初めから「この二人が恋に落ちる」ことになっている。とにかく二人は、多少の紆余曲折があっても恋に向かっているし、恋人同士になる。
おそらくは今までの自分の人生で経験がないほど立て続けに「必ず恋に落ちる男子二人」を見たために、「こんなにいつもloveじゃなくてもいいかなぁ・・・」と感じ始めたのだと思う。

そこで改めて気になったのが、以前知ったBromanceという言葉。

私がこの言葉に触れたのは、2年ほど前にそれまで見て来た数々の台湾・中国ドラマの英語タイトルを調べていた時だった。2015年制作の台湾ドラマ『アニキに恋して』の英語タイトルが『Bromance』。その時は単にドラマのタイトルとしてしか認識しなかった。その後、これはこのドラマより前からあった言葉で、あるジャンルを表す言葉になりつつあることを知ったが、その時はあまり細かくは調べなかった。

今回改めて調べてみると、Bromanceという言葉はアメリカ生まれで、brother とromanceを組み合わせたもの。BLよりも新しいということで、定義もまだかっちりとは定まっていないようだ。これからも変わっていくのかもしれないし、何をBromanceと思うかも人によってかなり違いそうだし、それでいいという感じがする。

以下の小西麗さんのおっしゃっていることは私も共感できる部分が多いので、紹介させていただくことにした。
あ!今調べたら、小西さんはnoteを使っていらっしゃる。知らなかった!


こうした記事やネットの記述から私なりに自分の嗜好に寄せて解釈すると

  • 男性二人以上の強いつながり

  • romanceという言葉は入っているが、恋愛関係、恋愛感情はない(なくていい)

  • 恋愛が絡まない結果としてプラトニックな付き合いになる傾向

  • お互いの存在を強く意識する関係であるが、必ずしもその感情は好意的なものだけでなくてもよい(ライバルや宿敵でもよい)

というようなことになるだろうか。あくまでも私なりの解釈だけれど。
BLという言葉よりも、この言葉が私の好きなものにより近い気がした。

私がこれまで見てきた作品で、古い作品なら映画の『アナザーカントリー』や『モーリス』(いずれもイギリスが舞台で素敵です)、比較的新しい作品なら、日本のテレビドラマ『チェリまほ』『美しい彼』、台湾の『We Best Love』はBL作品と言える。
そして、BLとは言えないがBromanceとなら言える大好きだった作品もたくさんある。
これまた古い作品なら、刑事とチャイニーズマフィアの若きリーダーの敵対関係を描いた映画『YEAR OF THE DRAGON』、異母兄弟の確執を描いた大河ドラマ『北条時宗』、比較的新しいものならドラマの『SUITS』や『SHERLOCK』などなど。
作り方によって趣が変わるものもある。中国ドラマ『君、花海棠の紅にあらず』は原作は歴としたBL小説らしい(私は未読)が、テレビドラマは”BL”ではなかった。でもBromanceではあると思う。
また多くの人に愛されている『チェリまほ』の主人公安達とその親友の柘植の関係は、私にはBromanceだった。

ガッツリとした恋愛ではない。でも、彼ら以外の人間が入り込むことも他の者が替わることもできない、彼らだけの大切な結びつき。仲がよいだけではなく時に反目し合い、中には憎しみや敵愾心だけで繋がっている関係もある。もちろん、爽やかな友情物語もあるし、なんとも言えない優しさや慈愛を感じさせてくれる関係もある。本人たちも気付いていないのかもしれないほどの淡い恋愛感情を思わせるような微妙な感情が垣間見える関係もあり、またそういった関係に次第に変わっていくこともある。余白が多く、そこをどう埋めるかはこちら次第。
そんな関係、物語がずっと好きだった。

そう言ってしまうと、複数の男性の繋がりがメインの物語ならなんでもBromanceじゃないかということになるけれど、どの作品を、どの関係をBromanceと感じるかは、人それぞれでよい気がしている。

男たちの何らかの結びつき(絆などという大袈裟なものではなくても、ただただ仲良く戯れあっているだけというものも含めて)に自分がときめく時、私は「あ、これはBromance」と感じる。

敢えてもう一つ付け加えるなら、私自身は、”はっきりとしたラブストーリーではないけれど、彼らの関係が恋愛に発展してもいいかもしれないと想像をかき立てられるほどに魅力的だ”と感じる時に、それをBromanceと呼びたくなることが多い。でも、これが絶対条件ではない。

BLはloveと言っているだけあって恋愛ストーリーだが、Bromanceは(romanceという言葉は入っているが)かなり範囲が広いのだと思う。
Bromanceの中にBLが内包されているような気もするし、一部が重なり合っている気もする。その位置関係もこれから定まり、また変わっていくのかもしれない。そして、いずれの位置関係にあるにしても、わたしにとってはBLとBromanceとそれ以外の物語の境界線はぼんやりしている。

「この二人の関係、なんかいいのよね」とは思うが BLではない時、私はそれをBromanceとしてこのnoteに書いてみようと思う。