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『ワンルームエンジェル』(2023/日本)

思ったより短く全6話で終わった。物語に一波乱起こすために長引かせるより、コンパクトに終わったほうがいいのかもしれない、と最近短めに終わるBLドラマを見ていて感じる。

ビジュアル的にそれほど好みではなかったこともあり、このドラマは見始めた頃はあまりピンとこなかったのだが、だんだんいい話だなと思うようになった。
天使と出会ったことで幸紀は知らぬうちに前向きになり、以前のように人生に投げやりではなくなっていった。履歴書を何枚も書いてなんとか就職しようと頑張っている幸紀と、それを応援する天使のやりとりを見ているうちに、私は二人を応援したい気持ちになっていった。全然BLとは関係ないところで、なんとなくこのお話が嫌ではなくなっていった。
天使がなぜ天使になったのかのエピソードは悲しいモノだった。A君のエピソードはとても短かったが、彼のひねくれた態度に隠れた天使への淡い恋心がよく出ていたと思う。それだけに悲しい展開だった。この恋のエピソードは短いながら、天使が天使になるほどの最後の決断を下した辛さもよく伝わってきた。また、事情を知らない部外者が勝手に憶測でものを言ったりネットに書き込んだりすることで、事実が歪められる展開はとても現実的な感じがして恐ろしかった。

5話の終わりで天使が幸紀に抱きついて”離れたくない”みたいなことを言った時は、正直「二人そんなに盛り上がってなかったよねぇ。急じゃない?」と引いてしまったが、やはりそんな急展開はなくてほっとした。

最終回は切なくて、前向きな、いいストーリーだった。
幸紀の寂しさはとてもよく伝わってきたし、泣いてしまうのも自然に思えた。その寂しさを胸に、前とは違う生活に勇気を持って一歩踏み出した幸紀に清々しさを覚えた。

BLかと聞かれれば違うとまでは言えないのだけれど、きついラブシーンもなく、なんとなくBL風な感じという程度で、私はそこが気に入った。幸紀の天使に対する気持ちは、恋愛までには盛り上がっておらず、戸惑わずに相手に表現できるようになった”大切な相手への好意”だという感じがした。自分に優しい言葉をかけてくれた天使、生意気な口調ながら落ち込む自分を元気付けアドバイスをくれた天使、一緒に楽しみと辛さを共有してくれた天使。幸紀はそんな天使を大切に思い、それを照れながらも相手に伝える勇気をもてた。天使も、自分の過去に向き合い、幸紀の優しさに触れ、前を向いて”開き直り”できたからこそ、離れていった。お互いに相手の優しさに出会えたから、新しい自分として一歩踏み出す勇気が持てた。
予想していたよりもずっと優しい物語だった。

この枠はBLドラマ枠なので、作品がだんだん濃密な方に進んでいっている気がしていて、どぎついラブシーンがあまり好きではない私は最近ちょっと気持ちがついていけなかったのだけれど、そんな時にこの優しい物語が入ってくれたのは嬉しかった。

ラストシーンが意味深だったなぁ。気になる。