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【ドクトルJの告白026】がん検診は受けるな

親交のあった新潟大学大学院医歯学総合研究科の故・安保徹さんなどは、がんになりたくなかったら「がん検診を受けるべからず」と言い切っていました。それには2つの理由があって、まずひとつは、がん検診は疑わしいものを広くひっかけて精密検査をします。ひとりの胃がん患者を見つけるために、だいたい20~30人を抽出するわけです。ですから、当然関係ない人まで「がんの疑いあり」ということで精密検査をしなければならなくなります。
これは大変なストレスになります。おそらく、がんになったと同じくらいの大変なストレスがかかると予測されます。それで本当に発がんしてしまう人もいるくらいです。おそらく、疑いをかけられた人のうち10人に1人は発がんするのではないかと思います。世界には、検診グループのほうが発がん率が高いという論文がたくさんあります。米国でも日本でも検診グループのほうが発がん率が高いというのが定説になってきています。

もうひとつの指摘は、いまのがん検診は、早期発見・早期治療が必要だからといって無理やり見つけては切除して抗がん剤や放射線で本格的な治療を始めようとします。ですが、それで100%治るという保証はありません。これは放っておくよりもむしろ危険です。早期発見・早期治療と言っても、治療法が間違っていたとしたら話はちがってきます。がんによる死亡が10数年も増え続けています。よくあるのが、摘出手術は成功したにもかかわらず、結局は亡くなったというケースです。私の感覚でいったら、5年以内に9割以上の方がそうではないかと思います。本来、適切な治療をしていれば徐々に停滞してくるはずですから、結局、西洋医学が推奨する「早期発見・早期治療」は逆効果になっているということになります。

どうも目に見えない圧力が働いて、がん撲滅の幻想を与えつつ、検診や健診の有効性を無視してやみくもに社会適用している気がしてなりません。ということで、医者が検査に熱心な理由について触れておきます。それは極めて単純明快で、云億円もする検査危機を買ってしまったからです。買ってしまったら、どんどん使ってコストを回収しなければならないのは当然です。

かつて、今日のように国民医療費の問題がとやかく言われなかった時代がありました。それは患者さんたち(特に高齢者)が医療はタダだと思って病医院に日参していた時代でもあります。患者さんが費用負担しなくても、病医院には国からジャンジャンお金が入ってきます。病医院はさらに儲けようと、最新鋭の機器をどんどん購入します。それを売りにしてひとりでも多くの患者さんを集めようとしました。20年前くらいのことです。その習性がいまでも根強く残っています。

日本の医療機器の充実ぶりは異常です。米国や英国の病院に較べて、CTスキャナーやMRIなどの高額精密機器の設置台数は群を抜いています。OECDの統計によれば、日本は世界最多のCTスキャナーとMRIを保有しています。人口100万人当たりのCTスキャナー数は約100台、米国の3倍。検査の有効性を認めていない英国と比べたら何と12倍です。もうこれ以上言うまでもないと思います。

なお、私の周囲では、健診や検診なんぞ受けたことがないという医師がほとんどであることを書き添えておきます。彼ら自身がその有効性を信じていない証拠ではないでしょうか。

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