【老親リスクを回避せよ11】老いて学ぶことの限界

とても言いづらいことなのですが、20年もの間、大勢の老親世代(70~80代代)の人たちとおつきあいをしてきて感ずるのは、やはり、老いるということは理解力や判断力が危うくなっていくものだ…ということです。本人の問題意識が高くてもそうでなくても、いくら情報収集してせっせと勉強をしたとしても、いざという時には学んだことを活かせない。つまり、なかなか実践に移せないのです。
 
●ある日突然、がんであることを告知された。
●ある日突然、うっかり転倒して、介護が必要になった。
●ある日突然、配偶者の入院先病院から退院してくれと言われた。
●ある日突然、配偶者の言動がおかしくなった。
●ある日突然、配偶者を施設に入れなければならなくなった。

こうしたことは、元気な時にはなかなか考えないものですが、お金持ちも、そうでない人も、誰しもがほぼ必ず出くわすことばかりです。それでも、いくらたくさん本を読んで準備した気になっている人たちであっても、いざその時になると、おそらく自分では何もできない。動揺して、何をどうすればいいのか判断がつかない。行動に移せない。だれに何をどう伝えればいいのかがわからない。

そして、そんなとき多くの老親たちは、子どもたちの携帯を鳴らすことになります。そして、その頻度が高まるのと正比例して、親子関係がおかしくなっていく…。そういうケースをたくさん見てきました。で、子どもを頼れないとわかると、焦って慌てて藁をもすがる思いでババを引いてしまう。専門家もどきにダマされて、気づいた時には後の祭り……。

結局、日頃からあれやこれやと勉強している人たちであっても、いざとなれば動揺して、理解していたはずの万一の場合の対処法を脳内データベースから抽出することがかなわず、身動きできなくなってしまう確率が高いということです。

というのも、老親世代にとって必要となる諸々の手続きというのは、どれもかなり厄介で専門性が高いものです。IQの高い霞ヶ関の官僚たちが、B層には理解できないような難解な制度設計をしているためです。永田町や霞ヶ関の住人たちに有利になるように、でもそれが一般大衆には見破られないように……と言ったいったほうがいいかもしれません。ましてや、それを勉強するシニアの側は記憶力が低下していますから、記憶が定着しづらい。だから、いざ何かが起きてしまったとき、せっかく学んだ知識や情報を活かせないのも当然だと思います。

これが、20年間にわたって、シニアを対象とする24時間対応の電話相談サービスや、老い支度に係る啓発講座を続けてきた実感です。

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