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【医療マガジン】エピソード6 美香と百田の出会い(中編)

ここで直子は、はたと気づく。あれっ。これ、過去動画よねぇ。オンエアは……あっ、1ヶ月前だわね。えっ。じゃあ何よ。美香ちゃん、今どうなってんのよ! ちょっとヤダ~っ!」
 
直子は速攻で、LINEで美香に電話する。
 
「あっ、美香ちゃん。いま『しらこわ』観ててねぇ。あなたでしょう。上野毛の美香さんって。ね、どうしちゃったのよぉ~。大変だったんだねぇ。お母さん、何にも知らなくってぇ~。えっ。大丈夫なの~っ?」
 
まくしたてる直子に、美香がなだめるように言った。
 
「あっ、ごめんごめん。観たんだぁ。お母さんに心配かけるのもなんだなぁって思ってね。ホラ、お母さんが電話してきた時があったでしょ。百田寿郎っていいわよって。『しらこわ』のことも。あの頃がホント、いっちばんキツい時だったんで、藁をもすがるような気持ちでYouTube観てみてね。百田さんのホームページも見てさ。思いきって相談のメール、送ったのよ。『しらこわ』のサイトからね。
 
そうしたら、わりとすぐに番組で取り上げてくれるっていう連絡が来てネ。そのあとすぐ、百田さんの事務所にも行ったの。で、二度目は旦那も連れてってね。あとはトントン拍子で精神科の認知症病棟に入院させて、退院後の段取りもしてくれて。いゃあ、素早かったわぁ~。こんど帰った時にゆっくり話そうと思ってたんだけど…。ごめんねェ」
 
「そうだったのぉ~。じゃ、解決したんだねぇ?」
 
「うん。おかげさまで。なんか、あまりにもあっさりすぎてね。憑き物が落ちたみたいよ、今は。あはははは」
 
「そうなんだ~。よかったねぇ。本当によかったねぇ。大変だったんだねぇ~。お母さん、何にも知らなくってね。な~んにもしてあげられなかったねぇ~。ごめんなさいねぇ~」
 
「全然、そんなことないよ。『しらこわ』と百田寿郎のこと、教えてくれたの、おかあさんじゃない。ホント救われたよ。ありがとね!」
 
直子はまたまた大洪水だ。
 
そして突然、直子がはたと冷静さを取り戻す。
 
「で???百田寿郎に会ったのよね、あなた。どうだった?イケてた?ちょっと教えてよっ」
 
「がはははは。そうくるかぁ。でも、すっごく若かったよぉ。百田さんっていくつだっけぇ」
 
「52よ、52」
 
「いゃあ。とてもじゃないけど、そんなには見えなかったよぉ。私と同じくらいかと思ったもん。それとさぁ、誰だっけ? お母さんが似てるって言ってた役者さん…」
 
「役所広司!」
 
「そうだ!役所広司。なんか雰囲気、似てたよぉ」
 
「でっしょお~ッ!そ~なのねぇ~。やっぱりねぇ。だわよねぇ。それで、今はあなた、もう本当に自由の身になったのよね?」
 
「うん。おかげさまで。実際に病院に入っちゃったら、手続き的なことは全部、実の子である旦那のほうの仕事だから。百田さんにメールで教えてもらいながら動いてるみたいよ。見舞いも旦那が週一で行ってて、私はまだ一回しか行ってないわぁ。あはははは」
 
「そっかぁ。よかったわぁ。お母さんもホッとしたわ。寛貴くん、来年、高校でしょう? 元気にしてるのかしら。ほら、お兄ちゃん(眞)とこの志保ちゃんと響介君。もう大学生だよぉ。ふたりしてお母さんにパソコン教えに来てくれてねぇ。考えてみれば、そのおかげで百田寿郎のこと知ったわけだもんね。そうそう。お兄ちゃんもね、会社に百田さん呼んで講演会やったって。なぁ~んか、みぃんな百田さんにお世話になってるよねぇ~。 えっ。ちょっと待ってよ。お兄ちゃんも美香ちゃんも、ナマ百田に会ってるわけじゃない。ヤダもう。お母さんだけじゃないのよ会ってないの~ッ。ナマ百田に会いたい~ッ。何でよぉ~。ちょっと、ひどくなぁ~い?」
 
……と、まぁ話は尽きない…。
 
 
美香との電話を終えた時には、パソコンの中の『しらこわ』はもうエンディングの告知コーナーまで進んでいた。
 
鶴ちゃんが元気な笑顔で話している。
 
「は~い、いよいよですね。『究極のかかりつけ医みぃ~つけたプロジェクト』がスタートしまぁす。人気急上昇中の華乃宮小町さんが監修する、お医者さんの品定めチェックリストに基づいて、みなさんの街のドクターを採点してみてください。そして、これぞ『本当にかかってみたい究極のかかりつけ医』を発掘して、採点済みのチェックシートとこちらの必要情報を添えて、こちらの宛先まで郵送でお送りください。

締め切りは今日からちょうど3ヶ月後。11月14日の月曜日必着です。どれだけの応募があるかはわかりませんが、華乃宮小町さんと百田さんを中心に協議していただいて、クリスマスイブには、『決定!かかりつけ医大賞2023』を開催致します。次週の放送では、華乃宮小町さんから、お医者さんの品定めチェックリストを発表していただくことになっていますので、まずはみなさま、そちらのほうを是非ご覧になってみてくださいね~っ!」
 
これだこれだこれだ~っ!
 
子宮直撃レベルの閃光が走り、眼を見開いた直子が思わず叫んだ。いちばん最初に『しらこわ』を観て以降、直子なりに4件のかかりつけ医をチェックして回ったが、この企画に乗っかって、未知の診療所にも出向いてみることを思いついたのだ。
 
究極のかかりつけ医を見つけ出すことができれば、ナマ百田に会える可能性がグッと高くなるし、それが叶わなかったとしても、自分の勉強にもなるし、地域の人たちに参考情報として発信することだってできる。実にやりがいのある活動ではないか!
 
そう考えたら、直子はもう、居ても立ってもいられなくなって、『しらこわ』のホームページから、プロジェクトの要領を漁るように目を凝らすのであった。(To be continued.)

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