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2024年6月7日(金)琵琶湖北湖一周 

ゼミが休講になった。これから梅雨、猛暑と来る前の絶好のサイクリング日だと思い、前日にビワイチ決行を決意。しかし、前日に一週間ぶりのローレンの配信があり、見ていたら当たり前に寝不足になった。そのため、3時前には起床するはずが4時に起床。タイマーも掛けず二度寝したので、寧ろよく起きれたまである。慌てて30分で生ろぉるパンを口に含み水で流し、風呂を洗い、日焼け止めと化粧をして荷物を確認する。出かけざまに中学のヘルメットを久々にかぶり、家を出発した。辺りはもう日の出が近く、かなり焦って湖岸まで急ぐ。

自宅からスタート地点までも距離があるのだが、なんとか気合で駆け巡る。一切欠伸は出なかった。そして、家で摂取したパン分のカロリーは消費してしまったと思うので、コンビニでビビンバおにぎりを買い、食べる。朝5時15分、すでに明るいスタート地点で記念写真を撮り、北湖一周開始。ちなみにクロスバイクのレンタル料金、また宿泊料金を手放しで支払えるほどの金銭的余裕はないので、中学進学の際に購入したママチャリを相棒にすえ、1日で約160キロ踏破目標でスタート。


セブンのうるち米シリーズ好き。なのだが、急いでいたため味わう余裕なし。後日普通に食べたいなと思いながら胃に入れた

ビワイチのいい所は、地面を見れば青色のマーカーが引いてあるので(ところどころ薄かったり急に消えたりするが)いちいち地図を確認しなくて良い点だ。ルートに従って黙々と進んでゆく。辺りは日の出を迎えていたが、まだ早朝なので車の通りはそこまで多くない。朝日を浴びながら、同じような平坦な道をどんどん進んでゆく。野洲に入ってから初めて坂道に出会い、ママチャリでは手押しの方が逆に早いことに気付けたのは僥倖だった。上り坂はほぼ全部手押しでGOする、とここで決めたため、変に意地を張らずに効率的に進めた。

意外と近江八幡市が近いことを知る。あと、野洲や近江八幡辺りは畑周辺を走っているので、肥しの匂いが残っている。琵琶湖の、田舎の匂いを全身で受けながら、一時間に5分ほどの休憩をはさみ、ハンガーノック対策として、水とエネルギーに変えやすい炭水化物を摂取する。この日食べたものはすべて補給でしかなく、自分というロボットにガソリンを注ぐ感覚だった。

米原辺りで休憩した際に、初めて琵琶湖の水を触った。滋賀県に住んでいると言えど、今まで琵琶湖で遊んだことはなかった。穏やかな水と、鷺と、石の間で休息を取る。そして、進む。出発時点で計画より遅れていたため、体力のあるうちに後れを取り戻したいと思い、カロリーを取って出発。ここで初めてビワイチをロードバイクで走る人とすれ違うが、焦りの気持ちは特になく、背筋を伸ばして道なりに、自分のペースで漕いでゆく。


ぱぺに色んな景色を見せようと旅の際連れている。ぱぺがいると無事帰宅せねば、と思うので御守りとして効果◎

予想より早く長浜に到着した。この時点で、時計と走行距離を見合わせた結果、遅くても20時には自宅に着けると予想していた。ビワイチの参考動画として、ぽんぽこの動画でおおよその必要時間を予想していたのだが、私はママチャリだったため、やや多めの時間を見越していた。しかし、ママチャリでも恐らく同じくらいの走行時間でゴールできると計算し、気が楽になった。長浜城を初めて見て、写真だけ撮って通り過ぎる。

北になってくると、ところどころ信号が縦になっているのが面白い。逆に全部縦じゃないのが不思議である。豪雪地帯なのに、横信号で冬は不便じゃないのだろうか。長浜の方は景色が一辺倒で、ひたすらまっすぐである。その分、たまにある水の中に生えている木や、ぽつんと立った小さな鳥居と社だけの神社などの空間が光って見える。人はほぼいない。自分だけがこの雄大な自然に存在しているという高揚感があった。

湖の中で生きている樹 違う国からやって来たみたい
急に出現する社。周りは荒々しい土と樹に囲まれるだけなのに、小さな敷地以上の存在感がある。

出発から4時間、目当ての道の駅に立ち寄る。ビワイチロードは基本的に歩道があれば、その区間はガードレールか段差が続いており、反対側の道路に渡るのに苦労する。ちなみに、歩道の僅かなスロープ部分を見逃すと、一生歩道に入れず、肩身の狭い思いをして車道の隣を通らなければいけなくなる。例にもれずこの区間も段差などがあり、なんとか自転車を下ろして道路を渡り、道の駅に入ることができた。(道の駅から帰る際、もう少し進んだところに横断歩道があることを知る)

道の駅の営業時間が9時からだったので、今朝の寝坊も結果的にはファインプレーとなった。一時間早く出発していれば、開店待ちをくらっていたのだから。見たこともない超地元の名産品が所狭しと並んでいる店で、この道の駅限定のお菓子を買った。黒豆羽二重餅。辺境の道の駅限定の商品って、生産ラインどれだけ限られているのだろう。物珍しさと色の綺麗さでしそサイダーもお土産として購入。小さな日陰のコテージで小休憩し、ヘルメットを再び被る。このヘルメットは、激突してくる蜂をはね除け、伸びまくった植物の緩衝材となったため、間違いなく今回のMVP道具と言えるだろう。

しそというかのゆかりの香りが鼻に突き抜ける。炭酸は弱めで、飲む薄いゆかりみたいな感じ。黒白もちは黒豆がおいしい
学籍番号が貼られたままのヘルメット。元々ボロボロだが、旅を終えた今では、その古傷ですら栄誉の証のように思えてきた。

暫くか走った後、ついにトンネルが出現し始める。北湖の苦労するポイントである、急傾斜の坂が賤ケ岳周辺に位置するのだ。とにかく無理せず手押し。ずっと座りっぱなしで生じた尻の痛みを緩和するためにも、体制を変えて歩きを入れたのは良かったのかもしれない。トンネルを自転車で通るなんて初めてだ。音が思ったより反響する。空気が冷えていて気持ちいい。そして、トンネルを過ぎた後の琵琶湖の景色は何とも気分がいい。スピードが出すぎる下り坂に注意しつつも、風を全身で味わいながら愉悦をひとりごちる。最高だ。汗でとれてしまった日焼け止めも、サドル周辺の痛む肉も、全く気にならない。自らの意思で、自分の足で、旅をしているという実感に包まれた。


空と湖の青、雲の白、木々の緑、と実にシンプルな色構成の景色を眺める。単色な風景は脳にストレスを感じさせず、五感を鋭くしてくれた。

トンネル付近に歩道はあまりない。車からはこの上なく邪魔だろうなと思いながら左端を走る。一度自転車から降りて、北の澄んだ水を触る。県民がよく唱える「南より北の水が綺麗」だということを、身を持った知識として獲得できたような気がした。そしてこの辺りでサルを10数匹見かける。見かけるというか、普通に道に出現した。あと数メートル自転車を停める位置を間違えていたら、自転車を囲まれていたかもしれない。ぽんぽこの動画でサルが出現するかもしれないと身構えていたので、冷静でいられた。5年以上使用していない自転車の鈴を鳴らし、どいてもらう。サルに出会う前の下り坂にひっそり佇んでいたお地蔵様を思い出す。遠隔ながら、サルに襲われなかったことを感謝しておいた。

透明な北湖の水。運動で熱くなった手を癒やす
人知れず立つお地蔵さんたち 地蔵にお供えをするために車を駐車するならば、超デンジャラスな道である

ビワイチのルートを少し外れて寄り道を開始。折角琵琶湖を一周するなら、メタセコイア並木を見ておきたかった。メタセコイアの新緑が見たくて、この時期での決行をしたまであった。そして、ビワイチのルートを外れたためGoogle mapに道案内を頼る。案の定、ヘンテコな最短ルートを示され、mapを確認しながら走ることとなった。これが一番嫌だった。奇怪なルートを確認するために、短いスパンで立ち止まる必要があり、まさかビワイチで疲労のイライラよりmap確認のイライラがはるかに凌駕するとは思わなかった。


ここでビワイチのために入れたアプリ(BIWAICHI Cycling)の走行ログを開始してないことが発覚。加えて、アプリを1度閉じてしまい帰りまでの距離を確認できず、ちょっと萎える。

紆余曲折ありつつも、メタセコイア並木にたどり着いた。思ったより人がいる。人気観光地に驚きつつも、青い木のパワーを浴びる。近くの道の駅みたいな施設でジェラートを食べた。ヨーグルトのような爽涼を感じるバニラ味で、強くなってきた日差しで茹だった体を冷やしてくれた。売店では身内(JA勤め)が持って帰ってきたことのある、マイナー玉ねぎドレッシングが大量に置いてあってビビる。なんかこの店舗で大量に売れているらしい。ドレッシングにしては強気な量が設置されていたので驚きつつ、それを片目に帰路を確認する。道路の両端のメタセコイアに自分だけが包まれ、ビワイチルートに戻り始める。

青々しさを瞼の裏に焼き付ける。人や車を写さず写真を撮るには少し忍耐が必要

ここでも道確認に手間取る。そして、どう考えても自転車が通らない国道のルートを走り申し訳ない気持ちになる。高架下に自転車用の道があるなら早めに言ってくれ。普段見ない地名を見るワクワク感と、カロリー補給(スイカバー)で自身のSAN値を保つ。なんとか琵琶湖が見えた。この時、ビワイチのルートを示す青いラインのありがたみをひしひしと感じた。その為冒頭でビワイチの良い所として、真っ先にルートが分かることを挙げたのである。細かい道確認マジで嫌だ。

近江高島辺りからは、歩道はなくなるが、自転車用の道が少し確保された状態で走ることになる。隣に車もいるが、スペースに余裕があって安心した。そして、白髭神社が見える。ニュースで白髭神社の横断をする観光客がいて危険、と聞いていたが、確かにこの道路で横断はありえないといった感じだった。左端の自転車ロードを通っているからこそ、近くで写真を撮れて、ビワイチの甲斐あったなと思った。この付近は水が澄んでいるだけでなく、SUPなどのマリンスポーツも盛んなので、砂が細かく、琵琶湖で一番綺麗だった。

砂が綺麗だと水が映える。SUPでこの神秘的な鳥居の先の空間に存在する瞬間があれば、楽しいだろうなと思った。

あとはひたすら、走る。この近辺の土地勘がないため、地名が出現してもいまいち距離感が分からない。また、電車が見える。ここまでの道のりで線路を見ていなかったので、新鮮な気持ちだった。この時点で、帰宅タイムを明確に想像できるまでになる。高架下で最後の補給を16時15分に行い、これから一時間で琵琶湖大橋を渡り切ると決意した。固形のカロリーメイトは摂取しにくく、用意した水を全て飲み切った。いつもは水しか飲まないのに、身体が糖分を欲しがって甘いジュースが欲しくなる。琵琶湖大橋を越えた麓のコンビニでジュースを買おうと決め、自らに発破をかけた。身体中の熱を全て足に集めて、走る。

堅田に入って、橋付近にあるゴルフ場のグリーンネットが見えた。視覚的なゴールが近い。お尻の骨がサドルにあたり、肉の擦れる感覚を覚えつつ、橋についた。琵琶湖大橋の傾斜はかなりきついので今までの学びを活かし、即座に手押し。この傾斜は長く感じたが、確実に進み切る。そして、登りきったところで今回の相棒のママチャリと写真を撮る。パンクせず、よく山道を走り切ってくれた。あとは下るだけだ。ママチャリに祝砲の風を纏わせ、ついに17時15分、琵琶湖大橋を下りきった。12時間。十分すぎるタイムで、初の北湖一周を達成することができた瞬間だった。

明るいうちに一周できて、景色を随分楽しめた。琵琶湖大橋の上りをノンストップで行く強者を見かける。その筋肉に敬礼。

すぐさまコンビニでカルピスを買う。待ちに待った砂糖を摂取できて身体が喜ぶ。体力もなく、そもそも外出を異様に嫌っていた自分からすれば、北、南(別日に実行済)ともにビワイチを達成できたのは大きな成功体験となった。県民として琵琶湖を楽しめてよかった。そして、今回のオチ。コンビニ近くでは男子大学生らしき人物が「名古屋」と書いたスケッチブックを掲げており、ヒッチハイクの現場を目撃。やはり、出かけるとたくさんの発見があるなと思った。家まではゆっくり気合で帰り、痛む膝と格闘しながら二階に上がった先で、睡眠を勝ち取った。私はビワイチ完遂者となったのだ。


グリップを強く握りすぎて少し黒く、汗にまみれたボロボロの手にあるカルピスが輝いて見える。勝利の乳酸菌。






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