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好きな磁器

小倉駅近くの展示場で九州陶磁器展が開催されたことがあった。九州全域の窯元が集まりそれぞれの作品を持ち寄り大々的な展示会である。楽しく広い会場を散策していると一段と目を引く作品があった。

ひと抱えもあるワインクーラーで、全面彫刻の染付け磁器である。売り場に出してなくて後ろの控えに置いてある。欲しくなって店主に売り物かどうか聞いてみた。店主曰く「これは売り物ではなく自分の実力を見てもらうために陳列しているだけです。」諦めて場内をまた見て回った。広い会場を見て回りながら先ほどの磁器が気になったのでまたもどってきた。もう一度、売っていただけないか尋ねてみた。「何度も失敗してようやくここまで出来た。これはもう二度と作れないから売れない」と言われた。色々世間話をしているうちに私の祖母の実家を知っている様子。打ち解けながらもう一度「もし売るとしたらいくらですか?」と聞いてみた。彼が私の手持ちの範囲内の金額を言ったので、すかさず現金を取り出した。

とうとう譲ってくれることになったのだが彼は「待ってくれ」と言う。場内にいるご子息を探し出して、この作品と名残の写真をとっている。「もう二度と作れないから」と言う。何枚も何枚も写真を撮って名残惜しそうに譲ってくれた。

私は嬉しさのあまり作家のお名前をお聞きするのを忘れてしまった。一緒に買った小物の器を妻が気に入ってもっと欲しいそうだが手に入れることができない。特に欲しいのがエイの図柄の四角い染付けの小皿だそうだ。福岡県の田川、もしくはその近辺の作家だと推察するが、ネットでも出てこない。どなたかご存知のかたはいないだろうか。

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