前田社長のインタビューを読んで、ジェフの積年の問題について考える
前田社長のインタビューを読んで、少し心配になりました。
昨シーズン終盤の連勝によって、課題を解決あるいは克服したと思ったと述べられていることについてではありません。身近な人から「やせた?」と聞かれることが多くなったと述べられていることや、家で愚痴を言うようになり、奥様から「変わったね」と言われているというエピソードについてです。
食べたら排泄するのと同じで、人と関わって心を動かせば、必ず排泄物が出る。それを「絶対に安全な場所」である家庭でブーブー言えるようになったのは、ある意味では健康的な生活を送れている
とポジティブに語られていますが、強がりのようにも感じられます。ちょうど1年前のインタビューでは、組織のマネジメント経験に自信を見せられていましたが、やはりJリーグのクラブのトップを務めるということには、特にピッチ上での結果が悪いときには、想像を絶するプレッシャーやストレスがあるのではないかと思います。
一方で、前田社長の言葉からは、これまでの職場とは違う経験をされ、日々新しいことを学んでいるという充実感も感じられます。失敗しない人間はいません。失敗は成功のもとですから、うまくいかないことがあっても、ぜひそれを今後のジェフの経営に活かしていただきたいところです。
と、ここで、別の心配事が浮上します。前田社長が個人として成長しても、出向元に戻ってしまうとジェフにその経験が残らないのではないか、ということです。
これまでの例を見ると、ジェフの社長は大体4年周期で交代しています。前田社長が選任されたのは2016年1月13日ですから、あと1年で出向元のJR東日本グループに戻られる可能性が非常に高いでしょう。
前田社長がせっかくジェフの社長として色々なことを学んでも、出向元に戻ってしまったら意味がないという考え方は短絡的すぎると思います。なぜなら、JR東日本はジェフの大株主であると同時に大口スポンサーですので、ジェフでの経験を経て成長した人が戻っていけば、有形無形様々な面でジェフにはメリットがあるであろうからです(それは古河電工についても全く同じです。)。
一方で、ジェフの内部のノウハウの蓄積や、戦略の一貫性については考えなければいけません。社長が交代する毎に、それまでの取組みがリセットされる組織があるとしたら、その組織には重大な欠陥があります。よほどのワンマン社長でもない限り、会社は1人でやるものではありませんから、社長が代わっても、長く勤める社員や他の役員が経験を蓄積していて、新社長に伝えていくというのが普通だと思います。
しかし、ジェフの場合は、この普通のことができていたのか、やや不安があります。つい最近までの傾向を見ると、GMあるいはTDといった強化部門のトップは約3年、監督は更に短いスパンで入れ替わっており、社長の4年間の任期の間に強化責任者も監督も必ず1度は代わっているという状態でした。
もちろん、強化責任者や監督というポジションではなく、現場で長く勤められている方々はいらっしゃると思います。そういったことも含めて、内部の事情は分かりませんが、側から見ていてジェフには、組織としての戦略の一貫性や継続性に問題があったように思えます。これまでの前田社長や高橋GMのインタビューを読んでも、このような問題意識があることは明らかだと思います。
だからと言って、何でも長期に継続すれば良いわけではもちろんありません。悪いことを継続すれば、それだけ傷口が広がります。でも、右に進んでも左に進んでも距離はそれほど変わらないのに、近道を探してあまりに無節操に進む道を変えまくった結果が、地道にゆっくりと同じ道を歩き続けた他のクラブに追い抜かれ、元々前にいたクラブには姿も見えないくらい引き離されてしまった現状だと思うのです。
その意味で、僕は高橋GMが長期にわたってジェフに残り、うまくいかなかった理由を検証して次に活かす、いわゆるPDCAを回し続けてくれることに期待しています。また、エスナイデル監督が、2年間の日本での学びの成果を来年見せてくれることにも期待しています。そのために、2人とも前田社長が述べられている「個人として職務を遂行する能力がない場合」に該当しないことを、行動と結果で示し続けて欲しいと思います。
前田社長には、何より、昨年末のインタビューで述べられていた「時代が変われども一貫すべき社是のようなもの」「このクラブは何者なのか」を、有言実行で定めてくれることに期待しています。
もし誰かを無能呼ばわりすることによって、その人がより有能な人物に置き換えられるのであれば、僕もそうするかもしれません(その場合、僕も間違いなく誰かに無能呼ばわりされるでしょうが。)。
しかし、それは起こらないというのが、過去10年以上、右肩下がりの成績が続くジェフというクラブを応援してきた僕の結論です。そうであれば、今、ジェフで頑張っている人たちを信じて、少しでも力になれるように行動するしかありません。
前田社長、高橋GM、エスナイデル監督、そして2019年にジェフでプレーする選手の皆様。今、ジェフの課題を解決できるのはあなたたちだけです。心から応援しています。
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