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【対談】デジタルグリッド 豊田社長

<YouTube対談リンク>

https://youtu.be/T7TZIZ1KdP4

棚瀬:デジタルグリッドの豊田社長にお越しいただきました。

豊田:豊田と申します。よろしくお願いします。

棚瀬:まず豊田社長から簡単に経歴や会社のご紹介をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

豊田:改めましてデジタルグリッドの豊田と申します。皆さんよろしくお願いします。デジタルグリッドは比較的新しく、2017年の10月から始まっている会社で、今18人くらいでデジタルグリッドプラットフォームという電気を自由に売買できる市場を提供させていただいています。今まで電気は限られた人たちが作ったものをぼくたちが使うというものだったので、エネルギーを自由に取り扱えるような社会ってどうやったら作れるだろうという思いが根底にあります。ぼく自身はこのデジタルグリッドの研究を大学3年生の頃からやってます。もともとデジタルグリッドは東京大学の阿部力也先生が発明された技術で、面白そうだな、電力の世界にもインターネットみたいな革命が来るんだろうというわくわく感があって研究室で4年ほどその勉強をしました。ただ、なかなか難しかったのと当時はまだ原子力も動いてたこともあり、分散電源とか自由に売買できるって説明しても「売りたい人ってそんなにいないじゃないか」、PtoPって言っても「電力会社から買うんでしょ」という反応でした。研究を発表してもなかなか刺さりがよくなくて大学時代に「分散電源ってないよな」って思ってたんですけど、卒業して入った仕事場で分散電源を作る仕事をさせていただいて。その時の経験の中で「分散電源って本当に広がっていくんだな」というのをすごく感じました。何か持続可能な仕組みを作りたいなという思いもあり、デジタルグリッドを創業時からやっています。本日はよろしくお願いします。

棚瀬:ありがとうございます。よろしくお願いします。ここからは豊田社長に色々質問していきたいなと思います。デジタルグリッドさんの目指す世界という説明の中で電力とIT技術と金融という足し算をされてたと思うんですけど、どういう形で金融が関わってくるのかをお話しいただけますか?

豊田:電力ってかなり金融に近いなと思うところがあって、例えば僕たちが銀行のATMで母親に5万円仕送るときに母親が群馬県のATMで5万円を抜いたところでそれ絶対僕の5万円じゃないですよね。でも僕の銀行口座には母に5万円仕送ったのが記録されて、実際僕の5万円がなくなります。電気の世界もほとんど一緒で、系統と呼ばれる電線に電気が入りますが、それを誰が使ったかという物理的な電気は誰にも制御することはできません。誰から誰にどう電気が流れたかを記録する銀行口座の役割をするのが電力の世界ではスマートメーターなんですよね。メーターが誰から誰にどう流れたかだけ記録すれば電気は管理できるということで、その事実だけでもすごく金融っぽいなって思うんですけど、もう少し具体的に金融の知見が生かせると思っているものがあります。ぼくたちは再生可能エネルギーをもっと増やしたいって思いがあるんですよね。でも発電所作るのにお金って必要ですよね。今まで再エネが増えてきたのって銀行やリース会社さんがお金を貸せるFITのような環境があったからなんですよね。FITで20年間国の補償で買い取ってもらえるので銀行が安心してお金を貸せたということです。そこで、これからも誰もが安心して太陽光パネルを付けられるようにファイナンスが付くような仕組みを提供したいなと思っています。それが1つPtoPの良さというか。事業家と発電家が直接契約をしていればそこに安心感が生まれる。要は系統に流しておしまいだと誰が買ってくれるか分からないし、「買いたい人いなくなっちゃったらどうすんの?」、「だったらお金貸せないよ」っていう話なんですけど。そうじゃなくて「〇〇さんの発電所は伊藤さんが10年間買うって言ってます」と。「そうか伊藤さんが買ってくれるんだったら安心してお金貸せるね」というので発電所が1個新しく建つわけですよね。金融が付きやすいっていうのはPtoPとの相性の良さの1つだと思っています。

棚瀬:確かに。市場はボラティリティが高いんだけど、エンドユーザーさんまでちゃんとつなげられればお金を貸す方が今よりも増えてくるっていう可能性はありますよね。

豊田:そうなんですよ。そこが今この仕事やってて一番こだわっているところの1つで、やっぱり追加的にエネルギーを増やしたいなって思うといろんな方の力が必要で、色々な規模の会社さんが発電所をどんどん作っていける安心感のあるプラットフォームを作っていきたいなと思っていますね。

棚瀬:ちょっと突っ込んだ話になってくるんですけど、スライドに日本初の民間による自由な電力取引所として需要家と発電家がプラットフォームを通じて出会うという書き方をされていて、イメージとしては小売電気事業者がなくなっていくみたいな思想になるんですか?

豊田:なくなることはなかなかないんじゃないかなと思います。小売電気事業というお仕事から場合によってはアグリゲーターみたいな形で発電を束ねられるような仕事になっていくとか。そういう束ねたり、電気を売り買いする矢面に立つ方っていうのは大事なんじゃないかなとは思います。それはひとえに与信ですね。やっぱり企業間とか財を扱ううえで与信の問題があったりするので。束ねられる人がいるのは安心できるかなとは思います。加えて今って需要家は1社の電力会社からしか電気を買えない問題があります。本当は需要家ってもっと自由に電気を買いたいじゃないですか。全部再エネじゃなくてもいいけど例えば「工場のこのラインだけ再エネが欲しい」とか。「再エネは20%で、あとの80%はやっぱり電気安い方がいいよね」とか。「災害が起きたところから電気買おうか」とか。そういう自由な選択肢があってもいいと思うんですよね。ぼくたちのプラットフォームを通じていれば電力会社複数社から買えますし、直接買っていただいてもいいですしというのでそういう小売電気事業者さんをより柔軟に活躍できる場を提供できるのかなとも思っていたりします。

伊藤:あれですね。ちょっと思ったのが旅行代理店っぽいなって。昔ってHISとか東急トラベルとかが全部ツアー組んでくれてたじゃないですか、それが小売電気事業者でデジタルグリッドさんのプラットフォームはトラベルコちゃんみたいな感じでカスタマイズができるのかなって。

豊田:本当にイメージその通りです。

棚瀬:あと環境価値にブロックチェーンを利用する利点を教えていただけますか?

豊田:ブロックチェーンって結構使いどころが難しく、電気の世界で使うとしたらやっぱり環境価値とか属性価値をやるのが一番相性いいと思ってます。ブロックチェーンのいいところってセキュリティが高い、改ざんがされない、誰から誰に行ったかがトラッキングされてそれが誰にも変更不可能であるということです。例えば棚瀬さんのお家で、ある一定の期間でどれだけCREVになったか計って、それが正しいっていうのが分かったらそれをブロックチェーンにあげましょうという場合。ブロックチェーンってこういう処理にものすごく強いんですよね。秘密鍵という鍵をかけてしまって改ざんできない形でクラウドにあげるんですけど、そうすると僕たちもいじれないんですよ。すると、「ある一定期間で棚瀬さん家でできたこのCREVは本物です」という形になるので、ぼくたちみたいな信用がまだ少ないベンチャーがやるのにもブロックチェーンは相性がいいかなとは思いますね。

棚瀬:ありがとうございます。最後お聞きしたいのが今後の展望というかこんなことを将来的にやっていきたいなというのがあればそこをお聞かせいただきたいなと思います。

豊田:そうですね。短期的なところと中長期的なところと2つあって、1つはようやく作ったCREVとかデジタルグリッドプラットフォームを事業パートナーの皆さんに使っていただくべくプロダクトをよくしていきたいなという思いがあります。本当に新しい、日本で初めての電気の買い方だと僕たちは思ってますので。中長期的にはしつこいようですけどやっぱり再生可能エネルギーを増やしたくて。そのために解決しなきゃいけない問題を1個ずつ解決していきたいです。また、単純に再エネ作ってファイナンス付けておしまいではなく、10年後とかにも対応できるように系統を考えたりと、本当の意味で再エネを増やせるような世の中を作っていきたいなと思っています。

電力関連を中心にほぼ毎日気づきを書いてます!少しでもお時間があれば立ち寄ってご一読いただけると嬉しいです!