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きょりたもつ だけど心は すぐとなり

中日新聞 2021.02.09 朝刊 文化面 より

きょりたもつ だけど心は すぐとなり

-三重県いなべ市の人権標語最優秀作-

今週のことば
尾畑 文正

 コロナ禍が起きてから朝のウオーキングを始めた。朝焼けに輝く鈴鹿の山々の麓に、私の住む三重県いなべ市はある。小学四年生のこの作品に触れたとき、自らを省みて冷や汗が流れた。コロナ禍以来、ソーシャルディスタンスが求められ、マスクをつける生活へと大きく変わった。しかし、問題は人と人との物理的な距離を保つことが、そのまま社会的な関係を閉ざし、豊かな人間関係を見失っている現実ではないだろうか。感染者や死亡者などの数字には関心を寄せても、その人たちの人生と命に、思いを馳せることがどれほどあっただろうか。

 仏教では、あらゆるものはただそれだけで存在するのではない。相互共存としてあると説く。現実には「きょりたもつ」関係であっても、その根底には繋がりあって生きている世界がある。その事実に立ち返り、「心はすぐとなり」という関係を、今ここに取り戻していきたい。

(同朋大名誉教授)

尾畑先生はブラジルで出会った先生です。ブラジルに来て出会った先生は一人ひとり思い出がありますが、未だに頻繁にお付き合いがあるのは尾畑先生だけです。その先生が中日新聞にコラムを定期的に書いておいでです。

簡潔でありながら心に響く言葉が素晴らしいのでこのnoteにもシェアさせていただきます。今までは自分のフェースブックにシェアしてました。

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