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発災当日 後編(妻の体験)

今週は土石流災害の件で動きがありましたね。

復興検討委員会の設置、関係会社への家宅捜索。どちらも良い方向に進んでいくことを願うばかりです。

少し時間が空いてしまいましたが、今日は妻の体験を書いていこうと思います。実体験ではないので多分前回ほど長くはないと思いますので、ぜひ御一読いただければと思います。


・在宅

前回の通り、妻と下の子は家に残っていました。普段であれば習い事があり、義母が10時30分頃に迎えに来てくれますがこの日は休み。
大規模だったとされる第2波が10時52分頃。もし習い事が休みでなく義母が迎えに行っていたら安全だったかもしれない。
一方でもし第2波が早まっていたら、義母を含めて3人が助からなかったかもしれない。これはもう、運でしかない。そう思っています。

第1波の後、伊豆山神社線と国道の中間付近にある自宅の少し上まで泥や石等が流れてきていました。
妻は近所の方と通りに出て「危なそうだから避難しようか」と話していたそうです。それが幸いしました。上流から押し寄せる土砂が確認できた。妻はそう言いました。


・在宅避難

「まずい!」妻はそう思い、その近所の方と一緒に家の中に入りました。
もしその時外で見ておらず、家の中にいて「何が起きたんだろう」と外を見に行っていたら、妻は土砂に飲み込まれ生きていなかったでしょう。

妻と下の子と、近所の方は2階に避難しました。垂直避難です。災害時には垂直避難をするように言われています。確かに1階では土砂が流れ込んだ時に生き埋めになってしまいます。しかし、2階に逃げるということはそれ以上の逃げ場を失うことです。

妻が2階側から撮った写真には、降りることはまだ可能でしたが階段にも土砂が流れ込んでいました。この時私は「家にいれば大丈夫だろう」という楽観と「いや、脱出させたほうがいい。でもどうやって?」という不安が入り混じっていました。
私は2階から外へ出る方法を考えていました。しかし4歳の子を安全に2階から避難させる方法が思いつかない。結果消防へ通報し、助けを待つ以外方法はありませんでした。


・近所の結束力

海側のお宅のご夫婦も2階に避難をしていました。しかし玄関側(通り沿い)はもう出れない、と言うことで勝手口なのか?とにかく通りには面していない出入り口から避難を開始しました。
そのご夫婦も私の自宅に妻と子どもが取り残されている事が分かっていたそうです。近所の方数人が集まってきて、はしごをかけ妻と子ども、近所の方を助けてくれました。
残された階段の隙間を抜け、1階へ脱出の経路を切り開かなければそのまま流されていたことでしょう。


・脱出そして避難

はしごから近所の方、子ども、妻の順で脱出したそうです。
妻が脱出した数秒後、家は全て流されました。数秒後、それは誇張した表現かもしれない。一方でその時間の感覚すらも麻痺するほどの体験だったことは間違いないと思っています。

でも私は数秒後、というのを信じています。何故なら子どもが「ママの大事にしてたもの、流れて行っちゃったね」と流されていく様を見ていて、それを教えてくれたからです。
とにかく間一髪だった。それこそ何かを取りに行っていたら助からなかったと思っています。

妻は近所の方に靴を借り、下の子は近所に同世代の子どもがいなかったので靴を借りることができず靴下のまま竹やぶの中を歩き仲道公民館へ避難しました。
本当によく耐えた、よく頑張ったと思います。

その後避難所となった仲道公民館にて、被害程度によって割り振りが行われたそうです。
妻からの聞伝えなので正確なことは分かりませんが、全壊(帰れない人)と住まいが残っている人。そのように分けられたように聞きました。
帰れない人はハートピア熱海さんへ移動し一夜を過ごし、翌日に市街地のホテルニューフジヤさんまで移動しました。
妻はやはり一睡もできなかったと言っていました。
私も浅い眠りを30分程度しただけで殆ど眠れませんでした。
私と寝ていた上の子も、なかなか寝付けず頻繁に寝返りを打ち、妻から聞いた話でもやはり下の子もなかなか寝れなかったようです。


・まとめ

未だにこの時の事を思うと寝れなくなります。
「もし…だったら」そう考えると、妻と子どもが助からない結末にしかならないのです。
もし外に出ておらず、通り沿いの部屋にいたら…
もしそのまま2階に留まっていたら…
もし近所の方が気付かず助けてもらえなかったら…

妻はあの危機的状況から僅かな運を味方につけ、全て最善のカードを切り続け自分の命と子どもの命を守ったのです。
でもそれは私がいくつもの予兆に気付いていれば、あんな危険な目に遭わせずに済んだはずなんです。

次はこの時から抱いている後悔について書いていこうと思います。

※写真は友人から送られてきたものです

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