サバティカル休暇のきっかけ「人生後半の戦略書」
サバティカル休暇をとるきっかけにもなったハーバード大教授アーサー・C・ブルックス氏の「人生後半の戦略書」を読み直しています。
人生後半における生き方を考えている方に多くの気づきと勇気をくれる、おすすめの本です。
本書を読んで一番衝撃的だったのは、人間がもつ2種類の知能の発達の違いについてです。一つが柔軟な思考力、真新しい問題の解決力などの「流動性知能」。こちらは30代から40代に急速に低下し始めます。
一方で、知識を統合・伝達したりと、過去に学んだ知識の蓄えを活用する「結晶性知能」は年齢を経るほど向上します。つまり、人生後半はいかに「結晶性知能」、つまり自分の中に蓄えた知恵を生かすことが重要になってきます。
読んだ時、流動性知能が下降しつつある年代であることに落胆をかんじつつも、やっぱりなと腑に落ちるものがありました。
当時はスタートアップのIT企業で働いていましたが、 20代30代のメンバーのゴリゴリと進める体力、素早いキャッチアップから産み出される企画提案には、正直かなわないなと思うものがありました。
もちろん担当顧客の利用率の向上や売上増などについて一定の評価をもらっていたとは自負しています。ただ、私の成果の源泉にあるのは、これまで培ってきた相手の立場や組織を考えた提案力やコミュニケーション力、分析力だなと薄々気づき始めていた時でした。
年功序列の公務員として働き続けていたなら、もうしばらくこの現実に気づかずにいられたかもしれません。少なくとも私が公務員の時には、職位や担当による役割がしっかりと決まっていて、その中で能力を発揮する場面が多かったです(もちろん例外はあります)。一方でスタートアップでは、役割はあってないようなもの。各個人が持つ能力や特性をフル発揮して、役割以外の領分にどんどん手を伸ばしていきます。いやがおうにも、自分の落ちてきている能力や自分の強みに敏感になります。
日々の仕事の中でなんとなく感じていたことをこの書籍で突きつけられて、私は明確に自分の人生後半を意識するようになりました。
これまでと同じように目的にむかってがむしゃらに働き続けたいのか?
人生後半も今の働き方でいいのか?
これからを幸福に生きるためにどうありたいのか?
私なりの人生後半の幸福を得るために
本書では、人生後半で幸福を得るためには、世俗的な欲求に引っ張られるのではなく、生きるための新たなスキルを身に付けなくてはいけない。例えば、「欲や執着を削って足し算を続ける生き方をやめる」「人間関係を育む」「弱さを受け入れて自然体の境地へ」などのヒントが書かれています。
最初に読んだ当時、これらのヒントは私には少し遠い存在でした。意味はわかるし、その通りだとも思うのだけれど、自分にどうアレンジしていいかわからないもどかしい感覚です。今、読み直した時、少しこれらのヒントが近づいてきたような気がしています。それは、私が今自分に投げかけている問のせいかもしれません。
会社という所属先や周囲からの評価をなくした時、それでも私の本当にやりたいことはなんだろうか?
誰から評価されなくとも、誰かがみていなくても思わず、手が伸びてしまう、やらずにはいられない。私にとってそれは何なのか?
サバティカル休暇を使って私はこの問いを深めているのだと思います。そして、この答えがクリアになればなるほど、自然体で自身を満たして人生後半を生きられる予感がしています。