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慢性骨髄性白血病患者の治療選択:服薬編

はじめに

慢性骨髄性白血病患者・家族の会いずみの会が実施した慢性骨髄性白血病の治療及び日常生活に関するアンケート調査(2021年)のレポート第二弾となります。今回のテーマは、現在、慢性骨髄性白血病(CML)患者がどのような治療を受けているのかです。

郵送調査(調査期間:2021年3月31日~4月15日)
WEB調査(調査期間:2021年4月27日~5月12日、
郵送調査回答者を除き会員以外も回答)
有効回答数 558 (郵送調査:511、WEB調査:47)

※ なお、調査結果は、現在の慢性骨髄性白血病患者における治療方法の実態を明らかにすることを目的としております。どの治療方法が優れているかなど、治療効果等医学的所見について述べるものではありません。

余談ですが、医師や医療関係者だけでなく多くの(そして世界中の)患者さんが、「慢性骨髄性白血病患者」のことをCMLと呼んでいます。これは、慢性骨髄性白血病患者の英語名“Chronic Myeloid Leukemia”の頭文字をとったものです。患者さんのなかには「病気のことをよく知らない人に「慢性骨髄性白血病患者」と伝えると、「白血病」だけ印象に残って大変な病気だと思われてしまう」ことが多いためCMLという略称が気に入っているという方もおります。

慢性骨髄性白血病患者の標準治療

この記事をお読みの方は、慢性骨髄性白血病の患者などある程度「慢性骨髄性白血病(CML)」のことを知っていると思います。また、治療方法については、必ず主治医に相談し、情報を集めるときも、国立がん研究センターや日本血液学会など信頼のおける機関の最新の情報を調べることが基本になると考えております。この記事では、代表的な情報源をリンクしておきます。

国立がん研究センター 慢性骨髄性白血病患者
https://ganjoho.jp/public/cancer/CML/treatment.html
日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版補訂版
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/1_4.html

他にどんな信頼できる情報源があるか、あるいは冊子で情報が欲しい場合などいずみの会までお問い合わせください。

現在の治療方法の傾向(2021)

それでは、CML患者さんは、現在どのような治療をうけているのでしょうか。調査では、「あなたの(患者様の)「現在」の具体的な治療法を教えてください」と尋ねました。その結果が以下のグラフです(「その他」と回答された方のうち、化学療法、移植療法に当てはまる回答はそれぞれ振り分けています)。なお、調査は患者さんに分かりやすいように商品名で行っています。

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結果を見ると、グリベックからアイクルシグまで、分子標的薬で治療されている方が全体の78.1%(計417人)と治療中の患者さんの98%を占めています。現在は、スプリセル(26.8%)、タシグナ(18.0%)、グリベック(16.9%)を服用している患者さんが多いですが、第1世代のグリベックは調査を行うごとに毎回その割合を下げています(2013年は48%、2018年は29%)。また、グリベックは現在、ジェネリック医薬品が複数販売されており、そうしたジェネリック医薬品を服用している人も徐々に増えてきています。

しかし、全体としては分子標的薬での治療を行っている人の割合は減少しており、代わって「服薬休止中(これには臨床試験で休薬している人以外も含んでいます)」の方が増えてきました。こうした服薬休止の現状については、また別の記事で詳しくご紹介します。ただ、今回の調査では「その他、治験に参加」という選択肢に回答された方のほとんど(47人中44人)が、記述欄を読むとなんらかの形で現在服薬していないようです。服薬をされていない理由など、改めて分析が必要になりそうです。

また、現在でも、造血幹細胞移植や臍帯血移植といった移植治療を受けている患者さんもおります。また、インターフェロン療法を受けている方の中には、分子標的薬を服薬しながらの妊娠は赤ちゃんへのリスクがあるため、この治療を受けている方もいると考えられます。なお、現在新しい治療薬の臨床試験が行われており、それに参加されている患者さんもいました。

治療方法を変える患者さんの割合

CMLの場合、最初に選択された治療薬から、治療効果や副作用によって他の薬に変更する患者さんが多くいます。調査の結果、現在、いずれかの分子標的薬で治療をしている患者さんのうち、1度も他の薬や治療法を行っていない方は50.8%、他の薬や治療法を行っていた方が49.4%になりました。現在服薬を休止している人もそれ以前には、なんらかの治療を受けていることを加味すれば、途中で治療方法を変更している方が約6割にのぼることになります。

また、同じ薬の場合でも、その量を変更している患者さんもいます。患者会の交流会でも、それぞれの薬特有の副作用が体や生活に合わず主治医に相談して薬の量や種類を変更をしている患者さんや、治療効果が思ったよりもなく主治医から治療方法の変更を告げられたという声を聴きます。

さらに、現在いずれかの分子標的薬を服薬している患者さん(417名)のうち、これまでに薬の量の変更を除き、他の治療方法を何種類行ったかを見てみましょう。その結果、他の治療方法が1つの患者さんが 29.7%、 2つが12.9%、 3つが5.3%、4つが1.2%、5つが 0.2% となりました。現在分子標的薬以外の治療を行っている方を含んでいないため、この数値は参考程度ですが、何種類もの治療を試しながら自分の体に合った治療法を探っている患者さんが決して少なくはないのです。

患者会の交流会でも、それぞれの薬特有の副作用が体や生活に合わず主治医に相談して薬の変更をしている患者さんや、治療効果が思ったよりもなく主治医から変更を告げられたという声を聴きます。そして、なによりCMLは長く付き合う病気です。10年以上分子標的薬での治療を続け、その間に何度も治療方法を見直してきた患者さんもいらっしゃいます。

治療方法が変わるとき

治療方法が途中で変更になると、とても不安な気持ちになる患者さんもいらっしゃいます。しかし、CMLの場合、治療の選択肢が複数ある、しかも複数の分子標的薬があることをむしろ「安心できる」ことと考えられると思います。実際に薬の変更をしている患者さんも多くいます。不安な時は、主治医やセカンドオピニオン、看護師さんや薬剤師さんに納得できるまで相談してみましょう。もちろん、いずみの会には同じ体験をした患者さんがたくさんいます。交流会などでお話を聞いてみるのもいかがでしょうか。

いずみの会 河田純一(お問い合わせ info@izumi-cml.jp
いずみの会HP:http://www.izumi-cml.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/cml.izumi



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