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2022年 29/100冊 本を読む

年間100冊読むぞ!目標に向けての29冊目。

『茶の本』 岡倉 天心

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「The Book of Tea」の宮川 寅雄 訳。厚さ4mm、ページ数72。

「茶は医薬としてはじまり、のち飲料となった。」にはじまり、「微笑みを浮かべながら、利久は未知の国へ旅立ったのである。」でしまるこの本は、明治期に西洋へ日本の茶道文化を伝えるために英語で発表された数少ない作品。学生の茶道研究会で読んだハズなのに記憶が飛んでいることも相成り、読み返すと感想が全く違うことに驚きます。

 岡倉天心は、1863年幕末の横浜に生まれ、東京外国語学校(現東京外国語大学)を経て東京開成学校(旧東京大学へ改称)へ入学。卒業後は文部省で日本美術を調査したのち、東京美術学校(現東京芸術大学美術学部)設立に尽力し初代校長になっている。1904年にはボストン美術館に迎えられ、国内では茨城県五浦に拠点を移し、アメリカとの二拠点生活を開始。行政マンであり、アーティストであり、自由人。日本美術を引っ張った岡倉天心、その中でも茶道を中心としたお茶文化は格別なものと捉えていたと言われています。

「私たち日本人の住居、習慣、衣服や料理、陶磁器、漆器、絵画、そして文学にいたるまで、すべて茶道の影響を受けていないものはない。日本文化を学ぼうとするなら茶道の存在を知らずにはすまされない。」

「日本らしい」と感じる文化的特徴、日本人のアイデンティティを形作っているものが、日本茶文化と考えていたように感じます。

 お茶はそもそも中国からもたらされたものと言われ、古代中国神話に出てくる伝説の帝王・神農が薬として茶を服したという神話が伝わっているほど。日本に入ってきてからは薬、飲用そして室町時代から戦国時代にかけて大成された茶の湯は、その深い精神性、禅の思想を取り入れることで、独自の文化を育んでいきます。

茶に向き合い亭主を務める時、自然や季節を感じ、その変化を取り入れ相手が楽しむ余白を考え席を整える。その席には亭主の身体、精神、そして文化度がさらけ出される場でもある。

 先人達が脈々と繋いできてくれた誇るべき文化、グローバルな時代、自己のアイデンティティがなにか、を考えさせられることもある。日本を表現するモノのひとつとして日本茶と接したいと思わせてくれる作品でした。

それにしても、土曜社さんのこの装丁のシンプルさ、素敵。

#年間100冊

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