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救急救命士国家試験-心電図問題攻略パターン4(P波が確認できない場合)

パターン4:P波が確認できない場合

パターン4は心電図にP波が無い場合をまとめています。P波が確認できない場合は心房細動という不整脈です。心房細動では、血塊を作るのでそれが体の各所に流れていき、血管の太さが血塊より細くなった時点で詰まります(梗塞)。特に脳梗塞が問題となります。麻痺症状の記載があれば心電図でP波を探し、P波が無ければ心房細動が原因の脳梗塞を強く疑います。

【43回D15】

67歳の男性。突然卒倒し、自発開眼しているが意思疎通がとれなくなったため家族が救急要請した。家族から「健診で不整脈を指摘されていたが受診していない。」との情報を聴取した。
救急隊現着時観察所見:意識JCS3。呼吸数16/分。脈拍118/分不整。血圧113/66mmHg。SPO2値95%。
顔面にゆがみがあり右口角が下がって唾液が垂れている。右上肢の挙上もできない。開眼しているが不明瞭な言葉しか出ない。嘔吐・失禁はなく、舌根沈下は認めない。
心電図モニター心電図波形を別に示す。
搬送先選定の際に考慮すべき最も重要な治療法はどれか。1つ選べ。

1.開頭術
2.除細動
3.血栓溶解療法
4.ペースメーカー埋め込み
5.緊急PCI

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【正解】3
【解説】
突然、意識レベルが低下し(中枢神経症状)、顔面および右上肢の麻痺が出現した症例です。脳出血か脳梗塞を疑います。
聴取された情報に不整脈を指摘されていたとのことですので、心電図をみてみましょう。

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P波が確認できません。
P波が確認できない場合は心房細動か心房粗動です。この心電図は心房細動です。所見で脈の不整もあります。
心房粗動は規則正しいのこぎりの歯のような心電図をできます。

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心房細動は心房が痙攣しているので、血栓ができやすい状態となります。この症例でも、指摘されていた不整脈は心房細動で血塊が飛んで脳梗塞になったものと推察できます。
当然、搬送先は血栓溶解療法ができる施設を選定すべきです。
参考までに他の選択肢のキーワードは
1.重症頭部外傷。特に急性硬膜外血腫
2.VF/VTは施設選定ではなく除細動
4.ペースメーカー埋め込み:AVブロックやSSS
5.AMI

【38回D31】

80歳の男性。呂律がまわらないと本人が訴えたため、家族が救急要請した。
救急隊到着時所見:意識JCS1。呼吸数18/分。脈拍76回/分。不整。血圧148/96mmHg。SPO2値95%。
右半身不全麻痺を認める。
心電図モニターを別に示す。
家族からの聴取内容で最も重要なものはどれか。1つ選べ。

1.症状の発症時刻
2.普段の活動状況
3.糖尿病治療の有無
4.抗凝固療法の有無
5.最後に摂った食事の内容

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【正解】1
【解説】
意識レベル低下、呂律がまわらない、右半身まひで脳梗塞か脳出血を疑います。心電図をみてみるとP波が確認できません。基線も細かいので心房細動です。

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脳梗塞の治療は前の問題で解説しましたが血栓溶解療法です。発症から4.5時間以内を目安としています。
家族から聴取すべき内容は、症状の発症時刻です。

【まとめ】

麻痺症状が設定されていて、心電図がでたらP波を確認してください。

P波が無ければ心房細動か心房粗動です。

心房細動でも心房粗動でも血塊が飛んで脳梗塞になりますので、最悪わかればいいのはP波があるか無いかです。

麻痺の程度は血栓の大きさや場所(梗塞範囲)によって違います。

心電図が心房細動か心房粗動の場合、麻痺の原因は(心原性)脳梗塞ですので、治療は発症から4.5時間以内の血栓溶解療法ができる施設に搬送します。

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