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救急救命士国家試験-心電図問題攻略パターン5(患者への対応)

パターン5:CPAの患者(+心電図)への対応

パターン5では、救急隊到着時に患者がCPA、もしくはCPAに移行する可能性が高い症例で、現場活動はどうしますか?というものを整理しました。この種の問題を解くには心電図の理解とプロトコルの確認が必須です。

【39回D11】

58歳の男性。突然動悸が出現し救急要請した。
救急隊到着時観察所見:意識JCS3。呼吸数26/分。脈拍160/分。整。血圧78/50mmHg
車内収容後、突然、意識と脈拍が消失し、呼吸が不規則となった。
この時の心電図モニター波形を別に示す。まず行うのはどれか。2つ選べ。

1.下顎挙上
2.胸骨圧迫
3.電気ショック
4.アドレナリン投与
5.経口エアウェイ挿入

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【正解】2と3
【解説】
救急隊現着時の脈拍は160ですので、心電図モニター波形の脈拍数と合致します。(300÷1.8≒160:パターン1参照)
心電図波形は心室頻拍(VT)です。
VTの特徴的な波形は覚えておきましょう。
VTの場合、脈がある場合は除細動器のパッドを装着します。パッドがまだ貼れていない状態で脈なしになったら、胸骨圧迫開始を優先し、同時に除細動の準備をします。
本設問では到着時は脈ありVTであったものが、車内収容後に脈なしVTと変化しています。
直ちにCPRを開始し、除細動器の準備ができたら解析し、電気ショックを実行してください。

【40回C4】

60歳の男性。運動中に全身痙攣を起こして倒れたため、救急要請され、バイスタンダーによる電気ショックが1回行われた。
救急隊到着時観察所見:意識JCS300。呼吸なし。総頚動脈触知せず
心電図モニター波形を別に示す。
心肺蘇生法を直ちに開始する。
次に行うべき適切な対応はどれか。1つ選べ。

1.気管挿管
2.口腔内観察
3.瞳孔径確認
4.静脈路確保
5.電気ショック

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【正解】5
【解説】
CPAの患者です。心電図波形はVTです。脈は触知しません。
当然、CPRを開始(継続)し、電気ショックを実行してください。
前問(39回D11)と全く同じ解説ですが、CPAの患者の対応はプロトコルに沿って行ってください。
気管挿管や口腔内観察は、状況設定に換気が不十分である旨記載があるはずです。
CPAの患者の活動中に瞳孔径を見るヒマはありません

【40回A27】

半自動除細動器でモニターしている胸痛傷病者に、図に示す心電図モニター波形が突然出現した。まず行うのはどれか。1つ選べ。

1.胸骨圧迫
2.脈拍の触知
3.呼吸の確認
4.反応の確認
5.電気ショック

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【正解】4
【解説】
心電図はVTです、といっても前2問(39回D11/40回C4)とは少し形が違うのがわかると思います。これは多形性心室頻拍(Torsades de Pointes:TdP)という波形です。

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設問は、「まず行うのはどれか。」ですので、電気ショック!といきたいところですが、落ち着きましょう。
前2問の状況設定をもう一度確認して頂きたいのですが、「救急隊到着時所見」所見には、意識レベル、呼吸、循環が記載しています。
前2問(39回D11/40回C4)はそれらを確認した上で、次に何を行うかを問うています。

この設問はプロトコルをきちんと理解していますか?という問題です。

この設問ではモニター心電図波形を確認しただけで、いの一番にやるはずの「大丈夫ですか?」をやっていません。
VT=除細動という流れをもとに反射的に回答すると不正解となります。
ですので、正解は4となります。
ちなみに設定が半自動除細動器にしているのは、AEDではTdPに反応しない可能性があるからかもしれません。(コマカイデスケド)

【41回D9】

63歳の男性。統合失調症で通院中であった。
朝起きてこないので妻が見に行くと、自室で倒れているのを発見し救急要請した。
救急隊到着時観察所見:意識JCS2。呼吸数16/分。脈拍64/分、整。血圧116/48mmHg。SpO2値96%。
救急車搬送中、突然反応がなくなった
その時の心電図モニター波形を別に示す。
まず行うべき対応はどれか。2つ選べ。

1.胸骨圧迫
2.血圧測定
3.瞳孔の確認
4.呼吸の確認
5.頸動脈の拍動触知

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【正解】4と5
【解説】
救急隊到着時所見は意識レベル1桁で、その他のバイタルに問題はありませんが、搬送途中に反応がなくなった(レベルが落ちた)という症例です。

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心電図は心室性期外収縮が確認できます。2回目のPVCはR on Tにも見えます(パターン6を参照)。
反応がなくなったということですので、設問からは判断できませんが無脈性電気活動(PEA)となったのでしょうか?
いずれにせよ反応がなくなっていますので、直ちに呼吸と循環を確認してください。

【41回A71】

動悸とめまいとを訴えている傷病者の心電図モニター波形を別に示す。
直ちに行うべき処置はどれか。1つ選べ。

1.胸骨圧迫
2.補助呼吸
3.静脈路確保
4.電気ショック
5.除細動パッドの装着

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【正解】5
【解説】
心電図波形はVTです。
患者はまだ意識があるので脈ありVTであると判断します。
ただ、いつ脈なしVTになるかわかりませんので、直ちに除細動ができるよう準備が必要です。
他の選択肢は、現時点で行うべき処置ではありません。

【42回D8】

6歳の男児。野球のボールが胸部にあたり倒れたため救急要請された。
そばにいたコーチにより心肺蘇生が開始され、AEDによる除細動が1回実施された後に救急隊が到着した。
救急隊到着時所見:死線期呼吸頸動脈の拍動を触知できない
この時のAEDの心電図波形を別に示す。
直ちに行う処置はどれか。1つ選べ。

1.胸骨圧迫
2.回復体位
3.口腔内の吸引
4.アドレナリンの投与
5.声門上気道デバイスによる気道確保

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【正解】1
【解説】
6歳の男児の胸部にボールが当たって倒れた症例です。
AEDが作動したのでVF(心臓振盪)になったと思われます。救急隊の観察所見もCPAです。
AEDによる電気ショックの後にPEAとなるのはよくあることですので、知っておいてください。
心電図波形は幅が広いQRSとなっています。脈は触知できませんのでPEA(無脈性電気活動)です。

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小児のCPAですのでプロトコルに沿って心肺蘇生法を継続します。
(小児の場合の1人法、2人法は確認しておいてください)
つまり、選択肢1が正しいです。
選択肢を考察します。
2.心拍再開していないので回復体位にはしません。
3.5.換気が不十分であれば、口腔内吸引を行い、それでも改善が無ければ器具を用いた気道確保を検討する。
4.6歳なので適応外です。

【42回D16】

90歳の男性。高齢者療養施設に入居中である。朝、ベッド上で意識が無く、脈が遅く微弱なのを発見した施設職員が救急要請した。
救急隊到着時所見:意識JCS300。頸動脈で脈拍を触知できない
細身の体形で皮膚は乾燥し張りがなくなっている
この傷病者の病態で考えられるのはどれか。1つ選べ。

1.除細動の適応がある。
2.死線期呼吸を認める。
3.神経学的回復が期待できる。
4.代謝性アシドーシスは軽度である。
5.心停止までに循環不全が長時間持続した。

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【正解】5
【解説】
高齢者施設に入所中の90歳の男性の意識障害、徐脈で発見された症例です。
救急隊到着時所見はCPAです。皮膚が乾燥し張りが無いという所見から高度な脱水所見(循環血液量減少性ショック)を確認できます。
CPAになるまでに長時間循環不全を起こし、救急隊が到着する前にCPAとなったのでしょう。心電図モニター波形は前問と同じく、幅が広いQRSとなっています。脈の触知はありませんのでPEAです。

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選択肢を考察します。
1.VF/VTでないので除細動の適応はありません。
2.死線期呼吸が認められるのは、それまで元気だった人が致死不整脈をおこし、CPAになった直後、まだ脳幹が機能している場合、呼吸刺激を起こす場合です。本症例ではじわじわと組織の酸素レベルが低下していき、いよいよCPAになった症例ですので、死線期呼吸は認めないでしょう。
3.2の理由で脳幹のみではなく、他の中枢神経も障害を受けているはずです。仮に心拍が再開したとしても神経学的予後は不良です。
4.長期間の脱水は腎機能の低下(腎前性腎不全)をきたします。またCPRを行ったとしても循環は良くて30%くらいですので、組織に酸素が届かずに代謝性アシドーシスとなります。代謝性アシドーシスは高度です。
5.その通りです。

【まとめ】

パターン5では、救急隊到着時に患者がCPAもしくはCPAとなった症例で、現場活動はどうしますか?というものを整理しました。
プロトコルを今一度ご確認ください。
簡単ですが
1.意識の確認
2.呼吸・脈の確認
3.胸骨圧迫
4.AEDパッド装着+(VF/VTならば)除細動

の順番を問題用紙に書き出せば間違いにくくなります。


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