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救急救命士国家試験-心電図問題攻略パターン7(透析患者)

パターン7:透析患者

透析患者もしくは透析導入前の慢性腎不全患者に関する問題です。
透析前の高カリウム血症がある場合、様々な不整脈が出現する可能性があります。特に気をつけないといけないものは致死性不整脈です。

【39回D26】

58歳の男性。朝食直後に庭で意識を失っているところを家族が発見して救急要請した。
救急隊到着時観察所見:意識JCS20。呼吸数24/分。脈拍28/ 分、整。血圧86/44mmHg。SpO2値96%
手指は冷たい。週3回透析を行っており、本日透析予定である。
心電図モニター波形を別に示す。
可能性が高い病態はどれか。2つ選べ。

1.偶発性低体温
2.洞不全症候群
3.高カリウム血症
4.うっ血性心不全
5.完全房室ブロック

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【正解】2と3
【解説】
透析直前の患者が意識消失している設定です。
意識レベル低下、頻呼吸、高度徐脈、血圧低下、手指冷感という状況です。
心電図をみてみましょう。

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P波がありません。
T波の増高も認めます。
R-R間は約12マスありますので、300÷12=25で、脈拍数とほぼ同じです。
考えられる病態は透析前の高カリウムによる洞不全症候群(徐脈性不整脈)です。
この症例では、洞不全症候群による高度な徐脈で十分な脳血流が確保できずに意識障害を起こしたと推察されます。

他の選択肢ですが、
偶発性低体温症に関しては、朝食後に庭で倒れているので可能性はありますが、偶発性低体温症を疑うには少なくとも、環境(冬の外など)、深部体温(35℃以下)、心電図にJ波出現(中等症以上)の記載が必要です。手指の冷感の記載はありますが、パルスオキシメータで測定ができていますので、末梢循環不全がおきていないと判断できます。

うっ血性心不全に関しては、透析前なので当然可能性はありますが、SPO2値が低下しているはずです。その所見の記載はありません。

完全房室ブロックに関しては、P波とQRS波がバラバラに出現するのが完全房室ブロックです。そもそもこの心電図ではP波が確認できません。

【41回D15】

82歳の男性。2週前から食欲が低下していた。自宅で脱力し動けなくなっているため妻が救急要請した。救急隊到着時観察所見:意識JCS1。呼吸数24/分。脈拍48/分。血圧60/28mmHg。SpO2値98%
体温36.1℃。呼吸音は左右差なく肺雑音を認めない。腹部は平坦で、反跳痛はない
舌は乾燥し、皮膚は冷たく弾力性が低下している。左右下腿に浮腫も腫脹もない
以前から慢性腎不全を指摘されていたが血液透析は未導入であった。
心電図モニター波形を別に示す。
この傷病者のショックの原因として可能性の高いのはどれか。2つ選べ

1.心原性ショック
2.神経原性ショック
3.アナフィラキシーショック
4.循環血液量減少性ショック
5.心外閉塞・拘束性ショック

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【正解】1と4
【解説】
所見を確認していきます。
陽性所見
意識:JCS1、頻呼吸、徐脈、血圧低下、皮膚冷感およびツルゴール低下
陰性所見
体温、呼吸音、腹部、下腿に異常所見なし

透析導入前の慢性腎不全患者ですので、水分貯留、電解質の異常などがあるはずですが、肺水腫や下腿浮腫の所見がありません。
おそらく、2週間前からの食欲低下(水分摂取不足)が原因で脱水状態になっていると考えられます。そう考えると皮膚の弾力低下の整合性が取れます。
つまり、ショックの原因の一つは、脱水による循環血液量減少性ショックの可能性が高いです。

心電図をみてみましょう。

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P波は確認できますが、QRSの直前ではありません。
P波とQRS波がバラバラに出現していますので、完全房室ブロックです。
脈拍数も 300÷6.2=48 となり徐脈を呈しています。
この徐脈性不整脈による正常な心拍出量が保てないためにショックとなっていると考えられます。
つまり、心原性(心臓自体に原因がある)ショックです。

他の選択肢ですが
・神経原性ショック
脊損を疑わせる記述はありません。

・アナフィラキシーショック
アレルギーの暴露や皮膚症状などの記述はありません。また、聴診で連続性ラ音(笛声音)も認めません。

・心外閉塞減少性ショック
頚静脈怒張の記述はありません。また気胸(聴診の左右差なし)、肺血栓塞栓症(SPO2値正常)なども除外できます。

【43回D17】

54歳の男性。糖尿病性腎症の既往があり、血液透析が導入されていた。
本日透析クリニックで血液透析が4時間実施され、そこからの帰宅途上突然倒れたため通行人が緊急要請した。救急隊到着時観察所見:意識JCS300。呼吸なし。脈なし
心電図モニター波形を別に示す。
この傷病者の心肺停止の原因として最も考えられるのはどれか。1つ選べ。

1.尿毒症
2.急性心筋梗塞
3.高カリウム血症
4.うっ血性心不全
5.ブルガダ症候群

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【正解】4
【解説】
透析後のCPA患者の設定です。
透析後ですので、選択肢1・3・4は考えなくて良いでしょう。
心電図をみてみましょう。

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心電図は心室性の不整脈(幅が広いQRS波)が確認できます。
脈は触知しないのでPEAです。

残る選択肢は、急性心筋梗塞とブルガダ症候群です。
ブルガダ症候群が原因でCPAとなっているのであれば、国家試験的には心電図は心室細動(VF)となっていると思います。
患者は糖尿病もありますので、糖尿病の合併症として急性心筋梗塞が原因でCPAとなったと考えるのが自然です。

【まとめ】

透析前の患者は水分過多、電解質異常を念頭に問題を解く。

電解質異常(特に高カリウム血症)があれば、どんな不整脈が出てもおかしくないので、心電図は要チェック。

VF/VTに移行する可能性を考えていつでも除細動ができるように準備する。

透析患者の対応(シャントなど)は確認しておく。

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