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救急救命士国家試験-心電図問題攻略パターン2(低体温症)

パターン2:低体温症(J波)

パターン2は低体温症の心電図です。救急救命士の国家試験では頻出です。
低体温症に特徴的なJ波(オズボーン波:以下J波に統一します)を見つけて下さい。
体温が32℃を下回ると心電図でSとTの間にJ波が確認できます。

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心電図にJ波を確認できる場合の深部体温は32℃以下です。
状況設定問題ではそのような状況や意識・呼吸・循環の低下がわかる記述があるはずです。

【38回D42】

68歳の男性。自宅玄関で倒れているのを家族が発見し救急要請した。
昨日遅くに飲酒して帰宅し、そのまま玄関で寝ていた様子であった。
救急隊到着時所見:意識JCS300。呼吸数8/分。脈拍44/分。血圧66/44mmHg。体温32℃。心電図モニター波形を別に示す。
この病態に特徴的な心電図異常の部位はどれか。1つ選べ。

1.A
2.B
3.C
4.D
5.E

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【正解】3
【解説】
・傷病者が低体温環境に長時間暴露されていた(体温32℃:中等症)
・意識レベル、呼吸数、血圧、体温の全てが低下している
ことから低体温症であることが推察されます。

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その上で、心電図を確認すると低体温症の心電図で特徴的なJ波が確認できます。

【低体温症】
深部体温が35℃以下の状態
軽 症:32~35℃
中等症:28~32℃
重 症:20~28℃

【39回D40】

54歳の男性。冬に公園のベンチで横たわっているところをパトロール中の警察官に発見され、呼びかけに応じないため救急要請された。
救急隊到着時所見:意識JCS200。脈拍86/分。整。血圧120/72mmHg。SPO2値92%
救急車内に搬入時の心電図モニター波形を別に示す。
この傷病者にみられる病態はどれか。1つ選べ。

1.呼吸数は増加している。
2.心拍出量は増加している。
3.末梢血管は収縮している。
4.1回換気量は増大している。
5.深部体温は33℃以上である。

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【正解】3
【解説】
・冬の公園のベンチで低体温に暴露されている。
・意識レベル低下。脈拍数、血圧は正常。SPO2がやや低下。
・心電図をみるとJ波が確認できる。

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選択肢をみてみましょう。
選択肢1・2・4は低体温症では、意識・呼吸・循環は低下します。
選択肢3:末梢血管は収縮します。
選択肢5:心電図でJ波が確認できるので、体温は32℃以下である。

低体温症では、末梢血管が収縮するためパルスオキシメーターの値が不正確である可能性があることを確認してください。

【43回A40】

53歳の女性。9月末日の未明、アパートの階段の踊り場で、ずぶ濡れで倒れているところを住民に発見され119番通報された。
救急隊到着時所見:意識JCS3-R。呼吸数16/分。脈拍48/分。血圧106/69mmHg。SpO2値測定不能
瞳孔は両側3.0㎜、対光反射は迅速。体表面に明らかな外傷はなく、四肢を動かす。
現場での心電図モニター波形を別に示す。
傷病者の対応・判断として適切なものはどれか。1つ選べ。

1.血糖値を測定する。
2.静脈路を確保する。
3.補助呼吸を実施する。
4.体位変換は愛護的に行う。
5.衣服の上から毛布で保温する。

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【正解】4
【解説】
この状況設定では、女性が踊り場でずぶ濡れになっています。
所見をみていくと、
・意識レベルは1桁で不穏がある。
・呼吸数は正常、脈拍は遅い。血圧は正常。
・SPO2が測定できないのは抹消循環不全でしょうか。マネキュアなど他の測定できない要素の記載はありません。
・瞳孔の大きさ、対光反射は正常なので、中枢神経(脳)の異常はなさそうです。
・四肢も動かしていますので麻痺は無く、体表面の観察からも動けなくなるような外傷は認めません。
つまり、異常な所見は、意識レベル低下と徐脈、SPO2測定不可です。
心電図をみると、J波があります。

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選択肢をみてみましょう。
1.低血糖を疑わせる記載はない。
2.ショックではない。
3.呼吸数も正常である。SPO2の測定不可が極端な低酸素によるものと考えさせようとした選択肢でしょうか?
4.低体温では心筋の易刺激性が著しく高まり致死性不整脈が発生しやすくなるので、愛護的に対応します。
5.低体温になっていますので濡れた着衣を脱がす必要があります。

【まとめ】

 低体温症では、状況設定で低体温に暴露している記載があるか、体温が35℃以下であることが記載があります。

 意識、循環、呼吸はすべて低下し、末梢血管は収縮しSPO2が測定しにくく(もしくはできない)なります。

 体温が32℃を下回ると心電図でSとTの間にJ波が確認されます。つまり、心電図がある場合には32℃以下です。

現場活動は低体温状況からの離脱、保温です。
この際、心筋の易刺激性が原因で致死性不整脈(VF/VT)などを誘発しないように愛護的に傷病者に対応することと、万が一致死性不整脈(VF/VT)が起こっても迅速に対応できるようAEDのパッドを貼り、意識、循環、呼吸を常に確認しCPAになっていないかを観察します。

実際の現場活動では、意識レベル低下の原因は複数ある場合が考えられます。中枢神経障害(例えば脳出血や低血糖)を起こした後に低温環境下に長時間暴露していることもあるでしょう。今後そのような問題も出題される可能性は十分にあるはずです。

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