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明日、ママがいない 第6話 魔王の話。
持ってる枕を、その胸に抱きなさい
お前たちは、何におびえている?
お前たちは、世間から白い目で見られたくない そういう風に怯えているのか?
だからその原因になるかもしれないあいつを排除する。
そういうことなんだな?
だがそれは、表面的な考え方じゃないのか?
もう一度、この状況を胸に入れて、考えることをしなさい。
お前たち自身が知るあいつは本当にそうなのか? 乱暴者で、ひどい人間か?
そんな風にお前たちは、あいつから一度でもそういう行為や圧力を受けたことがあるのか?
ならばなぜかばおうとしない?
世の中がそういう目で見るのならば世の中に向けて、あいつはそんな人間じゃないって、なぜ戦おうとしない?
あなたたちはあの人のことを知らないんだって、一人ひとり目を見て伝えようと、そう戦おうと、なぜ思わない?
臭いものにふたをして、自分とは関係ない、それで終わらせるつもりか?
大人なら分かる。
大人の中には、価値観が固定され、受け入れられないものをすべて否定し、自分は正しいと声を荒げて攻撃してくるものもいる。
それは胸に、クッションを持たないからだ。
わかるか? そんな大人になったらおしまいだぞ?
話し合いすらできないモンスターになる。
だがお前たちは子供だ。 まだ間に合うんだ。
一度心に受け止める、情緒を持ちなさい。
この世界には、残念だが目を背けたくなるようなひどい事件やつらい出来事が実際に起きる。
だがそれを、自分とは関係ない、関わりたくないと、シャッターを閉めてはいけない。
歯を食いしばって一度心に受け止め、何が酷いのか、なにが悲しいのか、なぜこんなことになってしまうのか。
そう考えることが必要なんだ。
お前たちは可哀想か? 本当にそうか?
両親がいても、毎日のように言い争いをしている、その氷のような世界にいる子どもたちはどうだ。
両親がそろってるくせにと、冷たく突き放すのか。
もっとつらい子はたくさんいる。
誰かに話したくても言えない子だっている。
それでもお前たちは、世界で自分たちが一番可哀想だと思いたいのか?
違う・・・ 違うよ
そうだろ、うんざりだろ。
上から目線で、可哀想と思われることに・・・ 何がわかるっていうんだ、冗談じゃない。
可哀想と思うやつこそ可哀想なんだ。
つまらん偽善者になるな
つまらん大人になるな
つまらん人間になるな
お前たちがつらい境遇にあるというのなら、その分、人の痛みがわかるんじゃないのか?
寂しいとき、そばに寄り添ってほしい 自分がそうしてほしいことをなぜしようとしない?
お前たちが心にクッションを持てないというのなら、これから、たとえどんな条件の良い里親が表れても、実の親が迎えに来たとしても、俺はこの家からお前たちを出さんぞ。 絶対出さん。
これがあいつのノートだ。
お前たち一人一人のことが書いてある。
アレルギーのこと 何が好物で何が嫌いか 大切にしているものは何か 誕生日はいつか
そして、どんな子供か 一人ひとり手に取って、それを見なさい。
それでもあいつを追い出したいと思うなら、それで構わない。
あいつは黙って、出で行くだろう。
いいか、最後にもう一度言うぞ。
一度、心に受け止めるクッションを、その胸に持ちなさい。
世界に存在する、あらゆる穢(けが)れから目を背けず、
一度受け止めてみなさい。
それができる人間は、一方で、この国の美しさ、愛しさを知ることができるだろう。
お前たちは傷つけられたんじゃない。
磨かれたんだ。
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