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ODAの実態を見る!(その4)

今回は前前回(その2)で提起した 3. 水質を軽視し、運転・維持管理の重要性が認識されないプロジェクトが横行している

という点について詳述します。

ODAの実態を見る(その1)で述べたように筆者は近年水質管理に関する運転・維持管理の実技指導(水量・水質に応じた最適施設運転指導)と社内コンサル的な業務に携わる機会が多くなった。

私は元々水質管理や環境管理を専門とする化学屋で土木は門外漢。

内実はプロジェクトの最後で運転維持管理指導に、或いは水質的ににっちもさっちもいかなくなってからの派遣であった。


水インフラプロジェクトの目的は人々の衛生・環境を改善するというはずであるが、

● 水質を軽視或いは無視し
●  定量的な水質管理に関する運転・維持管理を軽視したプロジェクトが横
       行している。
そのため定量的な施設設計の評価ができない場合が多い

これは何も筆者が所属したプロジェクトだけの問題ではなく、土木(箱もの)主体とする建設コンサルタント及び箱ものに単に竣工式で日の丸の旗を揚げたいJICA、外務省のせいでもあるだろう。

所定の処理水質が得られ、汚泥処理・処分を含めた処理システム全体の評価する事を待たず、水が流れれば、竣工式となる。(竣工式=通水式)

水量・水質に応じた最適施設運転指導即ち定量的な水質管理を発展途上国で指導するには、
以下の障害を取り除く必要がある。

(1) 発展途上国側の問題
 1)  信頼できるラボがない。
   よくHACH社等の簡易分析計購入を水質分析室計画の柱として例をよ
   く見かける。
   JICAも米国EPAで認めているからと提唱している。している。

    しかしながら筆者の経験では、それなりの前処理装置や純水製造装置
   含めた付帯設備・適切なガラス器具や標準液・試薬が容易に入手で
   き、維持管理費負担できる組織なら、非常に限定的な分析項目ではあ
   るが
下水や工場排水の水質分析にも使用可能得であるが、殆どの項目
   では不可である。

   浄水でも前処理や“標準添加法”で確認しなければ分析の信頼性は担保
   できない。

          第一単に試薬加えればいいなどという簡易分析で信頼性ある測定値が
   得られるならJISもISOも必要ない。
   尤も筆者の経験ではJISもISOもalmightyではないが。

信頼性のあるデータなくして適切な計画などできる訳ない。

簡易分析法の信頼性・トレーサビリティを検証できる信頼できる水質モニタリングラボの確立がまず先であろう。

筆者はまず、自分のアサインに関係なく、必ずと言って良いほどISO17025取得している分析機関やその国独自に認めたという権威ある分析所を訪ね、そのレベルを検証した。

以前我が国の計量証明事業所の責任者をしていた筆者の眼から見ると、満足できるレベルと判定できた分析所は1ケ所のみ。
少し指導すれば満足できるレベルは数か所で、そこでは時間の許す限り如何に分析精度を担保するかという指導を詳細に行った。
特にその国独自に認めた分析所の中には、箸にも棒にもかからないところも多々あった。
前回4部作セミナーの事書いたが、このセミナーには、如何に分析精度を追求するかというものも含まれている。

筆者はまず分析結果表を見て、結果が23.44 とか、やたらに数字の桁数が多かったり、同じ項目でも、分析書によってこの数字の桁数が異なっていたら、そこで、この分析所はアウト。
分析の基礎である有効数字の取扱いが理解できていないから。

2)  分析項目の定義が曖昧、また分析法が確定されていない
  分析項目はあるものの、その定義が曖昧な国がある。
  
  例えば鉄と書いてあっても、前処理を伴う全鉄か溶解性なのか、或いは
  亜硝酸と書いてあってもas NO2-N 或いは NO2なのか不明(規制数値を
  見れば検討はつくが)。

  中には分析法が簡易分析的だったり、分析所任せとして全く規定してい
  ない国もある。

  逆に規制値は先進国より厳しくして、分析法が明らかに追いついていな
  い国
もあるし、規制項目はあっても分析法が抜け落ちている国もある。

こうした場合、法律上の齟齬を指摘し、適正な分析法を定めるような指導を行う必要がある。

3)  分析にかかる費用を負担できない。
  定量的な水質管理を実行するには、それなりの項目と分析頻度が必要
  で、施設の運転維持費が増加するには止むを得ないが、計画時にそれを
  見込んでいる例は少なく、いざ施設運転始まると、そのコストを負担で
  きず、ただ水が流れていれば、「旨く行ってる」と思い込むか、結果を
  鉛筆舐めて捏造する
ことになる。

こうした場合、手間とコストがかかる分析法の代わりに、簡易で安価に測定できる項目で代用できないか、主要項目間の相関を取っておく必要があるが、その場合は相関をとれるだけの信頼性のあるデータが取れる体制をまず確立しておく必要がある。

(2)  コンサル側の問題
前に
 ● 水質を軽視或いは無視し、
 ●  定量的な水質管理に関する運転・維持管理を軽視したプロジェクトが
   横行している。
と書いた。

その原因として発展途上国側の問題は上記(1)に書いた。

では、施設計画・設計を行うコンサル側の問題はどうか?

 1)  土木中心のコンサルのため、水質の事など門外漢。
   相手国に分析頼んでも信頼できないという点はあるが、まず実際の水
   質を調査しないプロジェクトも少なくない。

 2)  単に我が国の設計指針の表面面を基にして施設設計する。

 3)  そもそも設計者は施設の運転維持管理に疎いから水量・水質に応じた
   運転できる施設計画になっていない。

サンプリング計画含め、いい加減な水質分析を基にした計画など、お話にならないが、援助される側、援助する側の問題から、いいかげんな水プロジェクトがはびこってきたのも現実である。

中には施設の“運転維持管理マニュアル”に書かれている項目がサンプリング孔がなく、測定できない例も多発される。
この場合、運転マニュアルはどこかの機関が発行したものをそのまま使用して、設計者は運手維持管理を考慮して計画・設計していないのが殆どであろう。

追加するならば、よく無条件に旧主国の基準を採用している国がある。
使用する水量も内訳も違うため、過大な数値を基に施設計画・設計し、結果といて過大設計となり、しかも水量・水質に応じた分割運転できる施設計画になっていない例もある。

この点もコンサルが実地調査を充分に行い、被援助国と協議して実情に合わせた数値で施設計画・設計すれば、こうした事態は減少するであろうに。

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次回はほんの数例の いいかげんなプロジェクト・内容の例を紹介しよう。


本当に有難うございます。励みになります。元々書くことは好きなのですが、一旦書き出すと長くなります。こんな時、絵心があればと思います。