何故英語民間検定試験導入しなければならないのか?

家庭や地域による受験機会の格差、採点の公平性などが問題となり2025年以降の大学入学共通テストで、英語民間試験が導入されない見通しとなった。
英語民間試験導入の目的は「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能をみるためだったという。

私は、この案が出た時から違和感を持っていた。
学校教育では「読む」「聞く」が中心で「書く」「話す」能力が不足する
からという。

そうであろうか?
私の経験を話そう。

自分は中学1年の時若くて熱心な英語の先生が毎回黒板一杯に口の内部の絵を書き、発音時の唇の形・舌の動き・歯の使い方を示して英語(当時はQueen’s English)の正しい発音法を教えてくれた。(今ならYou Tubeもあるが)
それが珍しく、それ以来英語の虜になった。今でもその光景を想い出す。

また、その先生は教科書の暗記を勧めてくれて、暗記して発表すれば、それだけで英語は5段階の4か5を貰える制度であった。

当時の高校入試科目は9科目で、区立中学から一流高校へ入学するには5当6落(睡眠時間5時間以内なら合格、6時間以上寝る生活なら不合格)と言われる時代であった。
また塾に通う児童はまだ少なかったし、自分も家庭の事情を考えれば塾に通う事など頭の片隅にもなかった。

帰宅後9教科の予習・復習時間を割り当て、更に英語の教科書をすっかり暗記するのは確かに時間的にはきつく、恐らく睡眠時間は毎日4-5時間だったろう。

でも教科書の暗記は楽しかった。

方法は

(1) 何度も音読する。
まず何度も音読する。するとどこで区切ればいいか、どのようにつなげて読めば英語らしく聞こえるかの訓練になる。

(2) 暗記のために書く
そして次に暗記するために声を出しながら書く。
そうすれば文法も理解できる。

(3) 暗記した文を英語らしく発音する。Listeningの練習にもなる。
最後に暗記した部分を、更に英語らしく聞こえるために抑揚に注意しながら何度も声に出す。そうしているうちに耳も研ぎ澄まされてくる。

(4) 暗記した部分を発表する。
ここまでくるのにどれだけの時間を費やしたのか数えきれない。

といっても当時はテープレコーダーも自宅になく、先生や他の生徒の反応が出来栄えの頼りであった。

この御蔭で中学校の頃は、海外の英語のドラマが少しは理解できるようになっていた。

この作業を高校1年の教科書まで続けた。高校1年の時には外国人の英語教師まで発音の良さを褒められた。

ところが、高校2年からは大学受験のため、教材が小説や随筆中心になってしまい、長文読解力が求められた。
元々、こうしたものは好きではなく、すっかり英語の授業が面白くなくなってしまった。

大学でも同様で、しかも英語の教師は山形弁まじりの発音のため、全く英語から遠ざかってしまった。

30代後半になって、仕事は楽で好きだったが、更にステップアップしたい(それまですでに4社転職していたが)と考えるようになった。

そのため、それまで国家資格が1個だけだったが、これではいかん、最低毎年1個ずつ国家資格等を取得すると心に決めた。
その時技術系のほか、好きな英語の資格取ろうと英検を受けようと決心した。

英語の勉強は、大学卒業後ブリタニカのLL装置付き英語教材(給料月5万のところ17万円)を月賦で購入し、家で勉強していた。
また4部作の文型パターン練習のテキストを買って家と通勤時ですべて暗記していた。
家では声を出せるが電車やバスの中では口パクしかできず、周りの人は不信に思ったのではなかろうか?

ブリタニカの教材もそうだったが、文型パターン練習は語彙を増やすにも非常に有意義であった。このころアメリカ英語の発音、特に巻き舌とLとRの発音に興味を持つようになった。

英検2級を取得した後、英検1級を目指してアルクの「スピーキングマラソン」通信講座を受講した。これもすべて口に出せるまでに暗記した。

ただ、英検1級の問題集を見た時、結構日本語能力・特に文章力を試されると感じ、英検準1級に変更し合格した。

その後、家系なのか海外志向となり、40歳にしてオーストラリアを本社とする外資系会社に入社した。
外国人はアメリカ人の社長だけで、英語を使う機会は本社と英語のFaxをやりとりするとか、社長と個人的に話す、時々本社からくる外人と技術的話をする程度であった。
ただ、Fax使用でもBusiness英語が、本社の外人との打ちあわせではHearing力が足りないと感じ、アルクのWriting及び Hearing Marathonの通信講座を受講した。
まだマスターしたとは到底言えないが。
家族でオーストラリア旅行に行った時、動物園の説明が殆ど聞き取れず、息子に「何いってるの?}と聞かれ返事に困った。

本格的に英語を使い始めたのは、47歳でコンサルタントに転職し、ODAプロジェクトに従事するようになってからである。

相手先・通訳との打ち合わせやセミナー等開催、報告書作成は、コンサルの場合は最低英語で行う。
そのためコンサルはJICAに英語の資格、主にTOEICの点数を証明書と共に提出しなければならない。

その点数で応札時の加算点数が変わる。
役人が応募する際は例外という変な制度。しかも10年毎に受験しなければならない。
海外で受験した人の中には解答時間が足りないから延長してくれと試験管に袖の下渡して点数が上がったと聞いたこともあった。

TOEICの試験は主に完全なBusiness英語でしかも営業等文系向きで、題材や語彙に拒否感を持ってしまい余り好きではない。

何回か受験して技術者としてほぼ海外での生活で不便を感じたことのない程度の点数だが、最近の若い技術屋が一発で高得点を挙げているのは尊敬に値する。

一般のTOEIC試験はnative な英語を「聞く」、メールを含む長文を相当早く「読む」ことが求められるが、「聞く」「読む」だけではない。

「聞く」時、穴埋めで書いてみたり、解答・解説テキストを音読してみたり、或いはリピーティングする癖をつける。そうすれば「聞く」「読む」だけでも「話す」「書く」能力は得られる。

25年以上約30ケ国で発展途上国や中流国ODAプロジェクトに携わり、そのたび英語を話す通訳と付き合ってきたが、皆英語は喋れる。
喋る限りは自分も相手も文法なんか気にしないから。

ところがレポートなどを書かせてみると、現地コンサルとして雇った大学の先生でも日本の中学生並みの文法力・文章力というのが殆どで、それを直す作業で忙殺されることがしょっちゅうあった。

顧みれば日本人だって国語の文章を文法の間違いなく論理的に書ける人は少ないのではないか。

若くして故人になってしまったが、しょっちゅう仕事で海外に行っていた私の数少ない尊敬する人の一人が「I areでもYou amでもいいんだ。とにかく喋りだすことだよ。そのうち自分の間違いに気づいて本格的に勉強始めるよ」と言っていたのを想い出す。

逆に私は今でもHearing力が足りないと思うというのは、我々の年代の英語の授業及び自分の話すための英語の授業が「読む」「書く」事から始まった影響もあっただろう。
今でもインド系の英語は抑揚がなく聞きづらい。

私は2年前JICA案件におけるTOEICの資格は失効した。つくづく馬鹿な制度だと思う。再受験しようと思ったらコロナで中止になってしまった。

もう海外のODAに関わることはないと思うが、コロナ感染の心配がなくなり、マスクも外せるようになったら、再度受験したい。

そのため時間があれば、今まで購入した旧から新、最新のテスト形式の膨大な問題集を時間があれば、リピーティングの口パク含めてtryしている。
でもリピーティング能力は確実に劣化している。

私の場合は通信講座や教材等には多少金がかかったかも知れないが、塾や学校など行かず、教材選びから独学で英語の勉強を行った。
英語塾の場合でも英語を書かせるとTOEIC的には間違いという“外国人教師”を雇っているところも知っている。

伝えたいのは

● 何も初めから「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を意識する必要はなく、自然に身につくものだということ。

● そして即効性のマスター法などないということ。

● 学校の教材を馬鹿にすることなかれ。
 自分次第で「読む」「書く」「聞く」「話す」能力は養えるのだ。
● そして自分で教材選びをしよう。そして現代はインターネットやYou  Tubeでも独学で進歩できるのだ。

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本当に有難うございます。励みになります。元々書くことは好きなのですが、一旦書き出すと長くなります。こんな時、絵心があればと思います。