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ODAの実態を見る!(その7)

前回から水・衛生・環境ODAプロジェクトに携わってきた筆者の経験を基に、主にこの分野での問題点と提言を述べています。

今回は 3. JICA組織効率を見直せという題で述べていきます。 

3. JICAの組織効率を見直せ 

(1) 無駄なプロジェクト関係者が多いのでは?

 1) プロジェクトアドバイザー
   JICAプロジェクトでは必ずJICA担当者のほか何名かの国土交通省、環
   境省、厚生労働省等プロジェクト関連官公庁、地方公共団体、関連団
   体役員や大学等から成る所謂“有識者”が“アドバイザー”として配置さ
   れる。

   仕事してますよとアピールするためか、レポートに何かしらのコメン
   ト送ってくるが、国内外で実際の修羅場をくぐった経験者が少なく、
   見当違いのコメント多く、本質的な議論にならない
   
   むしろ上記本質的問題点を見抜くこともできないのでは、こうし
   た ”アドバイザー” の配置は無意味で予算の無駄使い。


  ● 特に官公庁の連中は処によっては観光気分で海外に来て来るなり海
     水浴にいったり、現場に来て何か 物申して、逆に、相手国から陰で
            「あの人何しにきたの? こっちの努力・事情も知らないで」と言わ
             れる始末。

以下はキューバの廃棄物管理プロジェクトの際の実話

 当時キューバの首都ハバナ市ではごみ量をごみを運んだ延べ台数xそのト
 ラックの積載可能重量(2トントラックなら2トン)でカウントントして
 おり、実際の排出ごみ量の計測が行われていなかった。
 
 そこでJICAは正式には認めなかったが、パイロットプロジェクトとして
 図-1のようなポータブルトラックスケールをプロジェクト予算で購入し
 て、ごみ量の実態を把握しようとした。
 
 このトラックスケールを設置するのに、キューバ側は人海戦術で盛り土を
 し、人力で締固めて、その上にキューバ側の責任者が近所の製鉄所に頼み
 込んで厚い鉄板を分けて貰い、トラックスクールの土台とした。
 水準器で測定し、可能な限り水平に設置した。、 

 実際の測定が始まった頃、「廃棄物管理専門家」と称する御仁とあちこち
 の海外プロジェクトを訪ねてるというのが自慢の大学教授が現場に来た。

 「廃棄物管理専門家」の御仁はやおら、そこにあった水準器で水平を確認
 し、水準器の目盛りが真ん中にきていないとして「水平になっていない」
 と大声を出し、いかにも高圧的態度であった。
 キューバ人も雰囲気を察して、少し険悪な様子になった。
 通訳に聞いたら、将に「あの人何しにきたの? こっちの事情も努力も知
 らないで」と言っているという。 

 筆者は彼に「この測定装置は日本の道路で過積載トラックを摘発するため
 に使われる簡易トラックです。日本の道路すべて完全に水平ですか?」と
 聞いたら黙ってしまった。

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 また大学教授のアドバイザーはキューバ側のプレゼンに「図が間違って
 る」と鬼の首でもとったような口調で言うものだから、キューバ側発表者
 はオロオロしだした。

 そこで「そんなに声荒らげる問題ですか? ここにこうして線を延長すれ
 ばいいだけの話でしょう」と大学教授殿に言ってやった。

 彼にはマケドニアでも会ったが、筆者をみるとバツ悪そうに下を向いてい
 た。

 次はいつもコンサルのレポートの「てにおは」や「・・・すべき」という
 コメントをつけてくる “JICA専門家"  の話。

    氏はモンゴル下水プロジェクトでは「工場廃水」担当で担当者にもなった
 が、コンサルとは一緒の行動はせず、単独行動、しかも現地で筆者を見る
 と柱の陰に身を隠した。
 
 とんちんかんなことをカウンターパートに聞くものだから、カウンターパ
 ートからも馬鹿にされていた。
 
 初めからこの人には「工場廃水」は無理と思い、筆者が工場廃水対策のプ
 ロジェクトのTORを考えた。

 
 帰国後コンサルのレポートに対し、いつものように多量のコメントを送っ
 てきた。
 確かに他の担当者部分のレポートは調査・内容不十分で「ご指摘ごもっと
 も」という点もいくつかあった。
 しかしながら当人担当のレポートは締切過ぎてから数枚「・・・すべき」
 ばかりで具体的な提言は何もない。

 皆で大笑いした。

2)  現地JICA担当者
 現地JICA担当者も時に訳の分からないのがいる。特に若い年代に。

 以下はネパール地方水道能力強化プロジェクトの現地担当者の例

 ● 地方で水質管理トレーニング中に突然現場を30分程度訪問してトレ
     ーニングのやりかたと内容に一方的にコメントを残していったが、
   全く的外れであった。
 
    筆者自身のやりかたに自信を持っていたので無視した

       お客様(JICA)は「神様」と言って、すべて「御説ごもっとも」と
     持ち上げると小役人は調子にのる
から。

 ● 彼はまた他の援助機関の動向を知りたがったが、TORにないから黙っ
         ていたら「本来こちらで調べなければいけないのですが」と丁寧な言
          い方に変わった。後日、筆者は調査して差しあげたが。

 ● 現地JICAは中間評価ミッションが来る前、我々の活動に赤点をつけよ
    うとしていた。

         
         他のコンサルが行う中間評価ミッションで、その原因はJICAのTORに
         起因すると、そのミッションチームが書いたら、JICAの責任を逃れる
   ため5項目評価すべきところを3項目評価だけとした。

 ● 筆者に対して、そのJICA担当者は「いう事を聞かない」と根に持って
    いたようで第2次プロジェクトには参加できなかった。

 ● こうした現地のJICAスタッフの小役人的対応にはJICA本部のベテランも
     ぼやいていた。

3) 現地事務所の現地雇用スタッフは無駄が多いのでは?

 ● 上記ネパールプロジェクトでは常に政情不安でデモのため地方への移
     動が制限された。
           安全担当のローカスタッフからメールは来るが、情報が古く、時に不
           正確で、ホテルや地方のカウンターパートに確認する方が正確だっ
           た。
 ● 概して現地ローカルスタッフは暇そうで多いと感じられた。
         その割にJICAローカルスタッフの給料は現地人の平均給料の何倍も高
    額。

4) 本邦や第三国研修の無駄
 
 ● プロジェクトのご褒美という側面及びJICA実績としてカウントする
         め、本邦研修や第三国研修が必ずと言っていいほどプロジェクトに含
         まれる。
         
         しかしながら
          参加できるのは殆どの場合、現場を知らない上層部だけで処理場等
               で実務を行っている者は通常参加できない。
          特に短期研修は観光旅行
     本邦研修に来た者はJICAでは感謝の念を伝えるのだろうけど、実際
     現地で尋ねると異口同音に「役に立たない」と答えている。
                理由は我が国と援助国の内情が全然違うということであった。
       また、トレーニングと言っても例えば「このボタン押して」とかで
               意味が分からない。

   JICAが勧める第3国研修にしても、本当の意味での基礎を教えていな
   い、或いは教えられない、或いは教えて貰えなかったためか、或いは
   元々教える方の能力不足か
、帰国者のプレゼン等を見ると不十分であ
   る。

  従って研修は現地での じっくり時間をかけたon-the-job trainingが最適
    である。

    ネパールの時もカンボジアでの第3国研修の話がでたが、筆者の on-the-
       job トレーニングの方が身につくはずと受け付けなかった。

 ● マレーシアの運転維持管理専門家派遣プロジェクトでの話

   筆者の現場トレーニング終了後、12月にJICAが12、3名(人選はCP了承
        の元筆者が行い、実務をしている管理者も含めた)を本邦研修として
         広の下水処理場
へ招待した。 
       
     その時初めは私が講師を務める方向でJICAと話が進んでいたが、その後
        帯広市から1日当たり数十万円で維持管理会社に講師を頼むとJICAから
        連絡があった。
       
        筆者を含め2名合計アサイン9.0ケ月の運転維持管理専門家派遣プロジェ
   クトコスト自体は2名で1,800万円くらいに対し,12、3名の2週間の研修
        費用はその数倍と計算された。

        参加した全員にメールで研修の感想を確認したところ「温度条件も違う
        し一般的なセミナーばかりで収穫はなかった。」という全員同じ回答

 帯広市のように、実際は運転維持管理会社が講師となっても「我々もこう
 して研修生を受け入れ国際貢献していますよ」と宣伝したい自治体
は、他
 にもあるに違いない。

 なお、このプロジェクトには以下のような事情がある。

   筆者はマレーシアの下水専門家派遣プロジェクトでJICAプロジェクトによ
  り数年前から運転が調査し、そのうち4ケ所(処理方式は3種類)で運転管
  理指導を行った。
   
   2カ所では、 それまで東京都から“専門家”やメーカーが1年以上常駐してい
  たが、どこも満足に運転できていなかった。

  そこで設計を徹底的にチェックし、所定の性能を最大限出すにはどうした
  ら良いかを、既存水質値、水温を基に我が国の下水事業団発刊維持管理指
  針
等の図表や計算例を参考に計算した。 
 
 計算結果から予想値(主に総窒素濃度や微生物濃度、削減空気量など)、
 そのための運転方法を客先に具体的に示し1週間から10日後に各処理場を
 訪ねて
水質分析した結果、全ての処理場で予想値にほぼ合致した。 

計算方法等の指導を行い、各処理場主体のセミナーを開催し、指導した処
理場から以前の問題点、改善策、改善運転方法、根拠等を発表させた。
 
ここで我が国の維持管理指針はじつによくできていると感心した。
 
この事はモンゴル案件でも感じた
 ただモンゴルの場合はマレーシアに比べ一度運転条件変えると安定的な結
 果をうるのに1-1.5ケ月要した。 

    
    各処理場主体のセミナー結果からマレーシア政府からセミナーの席で名指
  しで私の継続的な派遣をJICAに要請したが
マレーシアは中流国でもはや
  日本の援助対象国ではなく、この分野での次のプロジェクトが不明という
  理由で採用にならなかった。
(その割には、このプロジェクトの前に第2
     期計画対象地域15所の調査に参加したが)

 
 これも正真正銘相手側が望むプロジェクトを政治的理由ではねつけた例。
 また中国・韓国にできないことを日本が行うことは国益に沿っていると思
 うのだが。

5) 能力不足の専門家

 国内外現場で修羅場をくぐってきた“有識者”、“アドバイザー”が少ない、
 或いは無能と言わざるを得ないことは1)で指摘した。

 本邦研修でも海外でも“専門家”といわれる者の能力不足は筆者からだけで  なく、よく言われるところである。
 そのため専門家派遣プロジェクトも同じようなことを何年も同じところで
 行い、まともな成果があがらない。


 例えば運転維持管理では、近年よく地方公共団体役人や運転維持管理会社
 が有利に選定される傾向があるように見えけられる
が、実務経験がない、
 語学がだめ、レポートが書けない等の理由で成果は上がらない


 定量的水質管理運転維持管理では、一人で幅広い知識と経験が要求される
 が、彼らにそうした素養があるのだろうか?

 同様にセミナー等能書きだけのプロジェクトでは大学や独立法人関係の者
 が優先的に選定されるようであるが、相手国の実情も知らないで、自分の
 専門の狭い範囲のセミナーだけ行って何になるのだろうか?
 これも単なるアピールか?

6) JICA能力アップの必要性

 無意味、無駄なプロジェクトを繰り返して我が国、相手国の税金の無駄遣
 い無くすためコンサルの選定、プロジェクト形成、プロジェクト計画、プ
 ロジェクト評価、専門化派遣などに関してJICA自身の能力強化が必要
であ
 る。

 旧JBICと統合されてからJICAはレポートの体裁だけを熱心に追及するが、
 本質を見る目を養う必要がある。


 そのためには、年齢に関係なく能力のある者を頼るべきである。
 プロマネ経験者は、JICAのいいなりであり、必ずしも適当な人材とは言え
 ないであろう。
 
 上記に関連するが一億総活躍といいながら、経験や知識があっても一般の
 コンサル上がりの者には活躍できる機会がない。

 それに関連して志を持ったシニアボランティアは尊敬されず、現地で十分
 にサポートされず、宿なども酷いところをあてがわれたりとシニアボラン
 ティアの扱いに対する不満
は届いているのだろうか?
 
 こうした事は緒方貞子が理事長になってから顕著になっており、JICAは単
 に、これも実績として宣伝だけに利用しているのではないか?

   


本当に有難うございます。励みになります。元々書くことは好きなのですが、一旦書き出すと長くなります。こんな時、絵心があればと思います。