ODAの実態を見る!(その2)

今回から具体的に関わってきた、或いは見聞きした水・衛生・環境部門ODAプロジェクトの問題点とその原因、提言等を述べます。

内容は主に2018年河野太郎氏が外務大臣だった頃、河野議員の持論であったODA改革に対して河野大臣(当時)宛てに送付した18,000字の内容を基にしています。
同じような内容は2005年に小泉総理(当時)にもメールしたことがあります。小泉総理サイドからは総理御自身からではないと思いますが、メールで謝意が伝えられました。
河野大臣(当時)がご覧になったかどうかは、何も反応がなかったので定かではありません。なお、河野大臣宛ての書類には、具体的プロジェクト名を載せていますが、ここではそこまで致しません。でも関係者はどこの案件か容易に想像できるでしょう。

前回「ODAプロジェクトのキーポイントは「持続性」だが思うが、この趣旨に反し、しかも無償・有償に関わらず、この目的が計画の段階から抜け落ち、結局負の遺産となっていて、その結果として相手国及び我が国国民の税金を無駄使いしている例を身を持っていくつも知っています」と書きましたが、共通項がいくつかあります。

主要問題点としては
1. 現地事情(気候・風土・慣習)に即した水需要・供給の水道計画、下水計画ができていない。

2. 総合的な計画がなされていない
 ● 汚泥処理・処分計画が欠落している。
 ● 工場廃水対策が欠落している。

3. 水質を軽視し、運転・維持管理の重要性が認識されないプロジェクトが横行している。

今回は1.について具体例をいくつか紹介しましょう。

1. 現地事情(気候・風土・慣習)に即した水需要・供給の水道計画、下水計
 画ができていない

(1) 現地を歩いて地道な調査を行わないコンサル
単にGoogleの地図を利用して管渠や処理場の位置を計画する。
コンサルに言わせると旧JBICが現JICAとくっついたために調査期間が短すぎる。 その通りだと感じるがコンサルの質もとにかく悪い。 

管渠などはコンピューターソフトを使って計画するが、現場を足で歩かずに、また、相手側に確認せずに(もっとも相手側もきちんとした情報もっていない場合が多いが)平面的なgoogle地図を基に管渠計画する。
無論将来計画、埋設物や細かい建物構造、敷地形状など確認する必要があるが、こうした事に汗かかないから、いざ工事が始まると様々な問題が顕在化し、場合によりルートや工法変更等によりプロジェクトコスト増加や、いい加減な工事を強引にすることになる。

このソフトを使えることが技術屋と勘違いしている若いコンサルが余りにも多すぎる気がする。
そのため管渠計画・施設計画から失敗している例もある。

こうした失敗プロジェクトに後から参加させられても、もはや手の打ちようがなく、人材育成教育は反面教師となる。

● 計画のできないコンサルなどコンサルではない。 
土木中心のコンサルは水処理法や汚泥処理法等のプロセス(ソフト)は、結局水処理機械メーカーのいいなりになる。 
コンサルは計画能力とメーカー或いはゼネコンと対等或いはメーカー提案を正しく評価できる人材を確保すべきである。
 
以下の事例を考えて欲しい。

(例1)アフリカ某国下水プロジェクト

ここではA2O法などという我が国でも水質管理の面から適切な運転維持管理に慣れるまで相当な慣れの時間を要する生物学的脱窒・脱リンの高度処理法をコンサルがメーカーの言いなりで採用して、結局プロジェクト終了後直ぐに運転維持管理できず、客先から苦情或いは再依頼が来てJICAが代替案等を検討させるプロジェクトをよく見かける。

アフリカに限らず、発展途上国では元々水質・汚泥分析も満足にできる体制になっていない状況であり、或いは停電が頻繁に起こる状況を無視して、この処理法を計画したこと自体間違い。それでもまた同様のプロジェクトが性懲りもなく公示されている。

しかも水道供給量が我が国の1/3以下のところも多々ある。この場合、下水の掃流が旨くいくかもはなはだ疑問で管渠内での詰りが起きるのは容易に想像できるし、また我が国基準と同じレベルまで除去しようとすれば、除去すべき各項目除去率は97-98%で机上の空論でしかない。

そもそもアフリカ等発展途上国のプロジェクトで飲料水水質基準や下水等放流基準を無条件に日本と同じとしている例をいくつか知っているが、飲料水さえも原理も適用条件も分からず簡易分析で測定しているところでは、これら基準はナンセンス。
ましてやトレーサビリチィが確立され下水を満足に分析できる体制が確立されている発展途上国は見たことはない。中流国でも分析のトレーサビリチィが確立されている国は少ない。

(例2)ペルー某市の下水道プロジェクト

汚水が発生する台所やトイレは屋外にあり、その接続もできない地域まで主管渠が敷設されている。 当然汚水は下水処理場に流入しないにも拘わらず計画下水量には含まれている。 
また逆に中継ポンプ場に流入する下水流入量が極端に少ないと思って関連するマンホールを開けると殆ど下水が流れていない。 
中国の施工会社から提出された竣工図を基に管渠を辿っていくと図面と全く違う、或いは住民の話では元々管渠など敷設していなかった

優秀なコンサルが地道に現場踏査、施工管理すれば、こんなでたらめな事態は起きなかったはず。以前のプロマネは飾りで経験のないローカルコンサルタントに任せきり。ローカルコンサルタントの親玉は中国企業から賄賂を貰い書類にめくらサインを繰り返していた。

(例3) ルート変更下水道プロジェクト

ベトナムのADBプロジェクトでは管渠を施工しようとしたら住宅の敷地の縁に当たり、管渠敷設のため掘削して無理に施工しようとすると、その住宅が傾くため大きくルート変更をした。
私は化学屋で土木は門外漢だが、ローカルコンサルタントが作成し、前任者承認済み図面を、引き継ぎプロマネとして見た時、直感的に危ないと思ってルートを変更させた。ルート変更工事現場立ち合いを行ったが、将に間一髪と言ったところであった。

また施工時に小学校の敷地を通ることが分かり、これも大きくルート変更・工法変更を余儀なくされたパプアニューギニアの例など枚挙にいとまがない。

計画と実際の施工では大なり小なり管渠敷設ルート・工法に違いが出るのは避けられないが、もっと詳細な現地踏査を行っておればリスクは避けられたはずで、これはコンサルだけの問題ではなく旧JBICと旧JICAが一緒になった現JICAの発注形態の弊害及びJICAのコンサル選定時・評価能力不足も大きいと思われる。
JICAの問題点は後述しよう。ただし、コンサルは問題点を報告しない傾向があるのも事実である。

(2) 我が国等指針の上っ面の理解で設計したような気分になっている。

浄水場、下水処理場等の設計は、我が国の設計指針の上っ面だけを採用し、実際の水質や現地の気候等に基づいていない。
それどころか殆どの場合水質試験も行っていない。

我が国の設計指針の解説を丁寧に理解すれば、我が国で採用する数値の背景が理解でき、他国でのケースも応用できるものだが、土木屋が主役のコンサルは箱ものだけにしか興味がない、面倒だからと理解しようともしない。

またJICAの殆どの担当者及び“学識経験者”と言われるJICAの外部アドバイザーや“専門家”といわれる連中もそうした背景の下での設計であることが理解できていない。こうしたアドバイザーや専門家の弊害は後に述べる

管渠の勾配も同じように我が国の指針を参考にして計画・設計するが、ペルー某市ではマンホールから細砂や土砂が道路から流入しやすい。
ここでは更に多量の使用済み油を下水に直接流し、砂とマッドボールになり、容易に管渠が完全に詰まる。そうすると下水が中継ポンプや処理場流れないだけでなく、雨が降れば管渠か下水が家の中に逆流するか、マンホールから市中に流れ出す。
下水道プロジェクト以前は、乾季においては下水や雨水はすべて自然流下で排水路を通ってアマゾン川大支流に流れ、そこらじゅうが冠水・水没するほどの雨季には排水路から市中に拡散する状態であった。

これは管渠勾配をペルー人が何かの指針を参考にして計画設計したが、基本的に清水基準を流す場合の水理計算からきており発展途上国や中進国では、その地域の環境等も考慮して変更することも必要であろう。
指針はあくまでも指針である。料理の時の使用油を下水に放流するのは、発展途上共通の問題であり、その防止策の啓発活動と組み合わせるというソフト面での支援も重要である。

本当に有難うございます。励みになります。元々書くことは好きなのですが、一旦書き出すと長くなります。こんな時、絵心があればと思います。