技適と法とインターネットの話

いきなりな話題ですけど、自分は日本のインターネット死ぬほど嫌いです

自作キーボードと技適の話

最近DIYなキーボードの世界にはまっていました。自作PCで水冷までやってひとまず自作PCはいいやとなってきたので次興味があること、というところで自作キーボードにも少し興味があったのでこちらの世界に踏み込んでいくことに。
僕の環境は基本的に無線です。デスクの上を頻繁に動かすため有線はまず選択肢に入らない。ということで無線のキットを探していくことになるのですが、国内流通しているものは無線で売っているキットは少なく、あっても自分で別途マイコンを仕込んでボタン電池で駆動させるといったものが多いです。好みのものが国内にないとなると自ずと海外の市場を彷徨うことになるのですがここでぶつかるのが技適です。そもそも技適って何って人はまず技適を調べてきてください。話はそれからだ。
さて唐突ですがここで技適クイズです。下記 3つの中に1つだけ"明らか"に適法でないものがあります。どれでしょうか?

  1. 無線キーボード裏面に技適のマークと番号の入ったシールが貼ってあったが邪魔だったので剥がして使った

  2. 無線コントローラーをメンテナンスのため分解し、のちに動作確認を行った。なおこの無線コントローラーの外側には技適マークの記載があり、内部の無線モジュールらしき箇所や基盤には技適の印字がなかった

  3. 技適のないモジュールを組み込んだスマートフォンを所持していたが、有線接続によるファームウェアアップデートを行った結果、認証表示の箇所に技適の表示が追加されていたため無線機能を有効化して使用した

さてどれだと思いますか・・・?
これ答えは2です。

1. 技適取得ずみモジュールを使用しており、本体への表示はモジュールと同一のものの可能性があるため
2. 無線コントローラー本体ごと技適を取得しており、分解した時点で製造時の保証が切れる→同時に技適取得した状況の"保証"もなくなるため
3. 技適表示は本体内蔵ディスプレイでも可。メーカーが出荷後に本体ごと工事設計認証を通したということが考えられる(諸説あるが、携帯電話の場合は表示が変更できるため概ねこれがまかり通っているように見える)
という感じです。この時点で詭弁満載、ちょっと腹が立ってきましたよね?

ここで1.についてまだ首を傾げている方もいらっしゃるかとは思いますが、技適の国内認証機関であるTELECのサイトから引用させていただくと

Q.17 認証取得済みのモジュールを組み込む製品は、製品本体として再度認証の取得が必要ですか。
A. 認証を取得したモジュール(アンテナ等を含む)に一切変更を加えなければ、製品として再度、認証を取得する必要はありません。
ただし、無線設備規則第14条の2に規定する人体における比吸収率の許容値に関する技術基準に係る無線設備(SAR規制対象無線設備)の場合は、当該試験を含めた認証手続きが必要になります。詳細は、総務省電波利用ホームページの 「Body‐SAR に関する制度の運用のガイドライン」を参照願います。
Q.18 認証取得済みモジュールを内蔵する製品の場合、製品本体にも技適マークを付さなければならないのでしょうか。
A.平成26年9月の電波法令の改正により、製品に組み込まれた無線モジュールに付されている技適マークと同じ表示を当該製品にも付すことができるようになりました。
この規定による表示は任意であり強制ではありませんが、その製品の使用者等に分かり易くするために表示を付すことが推奨されています。

https://www.telec.or.jp/faq/ より

と記載されています。まずQ17にあるように認証取得済みモジュールに手を加えずに内蔵した場合新たに技適を取得する必要はなく、Q18のようにその場合同じ表示をすることができます。またここで重要なのは表示できるだけで、表示するということは義務ではないという点です。つまり技適認証ずみモジュールを使っている場合は別に外から表示が見えてなくても問題ありません。一般にこの事例はPCなどでよく使われているものであり、これを認めなくなるとどうなるかというと、皆さんが組んだ自作PCにWifiモジュールが乗っかっていた場合、ケースなど外側に認証済みの番号を記載しないと違法になるということになります。
まぁ実際の電波法の条文は読んでませんし、TELECが言ってるだけと言われてしまったらそれだけなんですが前述したようにこれがダメだと"ダメになってしまう人"はたくさん出てきます。

さて、技適に関してはハードウェアの問題のように見えますが、ソフトウェアについて懸念を言及されている方もいます。
自作キーボードのファームウェアの中にZMKという無線キーボードに特化したファームウェアがあるのですが、このファームウェアが奥で使っているものがZephyr RTOSというもので、このZephyr RTOSはBLEモジュールが持っているプロトコルスタックを用いずに独自のBLEスタックを用いています。そのため技適のテスト状況と異なるためこのファームウェアを用いると技適が剥がれるのではないかということです。
これについては実際にハードウェアメーカーの方にどうなのか問い合わせてみました。今回は技適認証済みモジュールを製造しており、DIYキーボードキットでも採用されている物を見るRaytakというメーカー、またそのモジュールの中に実際に使われている通信チップを製造しているnordic semiconductorそれぞれに問い合わせてみました。
いただいた回答は英文な上、複数回にわたってやりとりしているため、要約のみ載せます。

Raytak: SDKを変更したり、どのようなソフトウェアを用いてもモジュールそのものの周波数、チャンネル、ホッピング、などなどの電波パフォーマンスにはなんら影響しないため問題ない
nordic: Raytakが正しくテストしているなら例えばモジュールの最大出力などもテストしているはず。そのためソフトを変えてもなんら技適には影響ない

といった反応をいただきました。彼らも日本の法律のプロではないので実際とは違う見解をしている可能性は否定できませんが、こういうことです。本当に気になる人は然るべきところに問い合わせるべきかとは思いますが、多分然るべきところの人たちもここまで聞かれると困っちゃうと思いますよ。付け加えていうと、Zephyrは別にキーボードだけに限った話ではないので、IoTなど国内外問わず(認証は何も技適だけの話ではないのでね)もっと広い範囲にも影響はしているはずです。

コミュニティの話

さて、ここまでの話でわかってもらえたと思うんですけど、技適難しいです。一見技適マークついてないじゃん(外側に)と思っても技適ちゃんと通っててかつ適法なものもありますし、技適特例制度を用いている場合もあります。
何が言いたいかというと、ろくにわからないことを断言したり、個人を問い詰めたり当人の見えないところで揶揄したり攻撃するのはやめましょうという話。各々主義主張はあると思いますが、不必要に人を萎縮させる行為による不利益は既にいくつかみてきていますよね?(直近だと某お絵描きAIとか)
またこれは完全に私的意見ですが、マークがついていないが本質的に同等なものに関して騒ぐ、っていうのはちょっと思考停止がすぎてやしないか?(ひょっとしてその利権団体の筋の人か?)って思ってしまいます。法を破れとは決して言いませんが、法は常に道徳的なわけではありませんし、本質的に物事を捉えられた方がいいと思います。また法を自衛に使うのはあるべき姿だと思いますが情報の発信の仕方には気をつけた方がいいとも思います。
(またこういう話がある中で元気に活動されている方々は二次創作に関して公式に凸して公式を困らせる方々になんだか似ていますね。今回僕も似たようなことをしてしまいましたが)
色々愚痴をこぼしてしまいましたが、本当に騒ぐべき時がくる可能性もありますのでその時はしっかり見極めて盛大にインターネットを賑やかしてください。僕もあなたもインターネットです。

追記

こういう記事が出ていたので見ていましたが、本質的には同等なのに印字の問題だけで使えないケースの説明がされていて本当に呆れ果てた現状です。真剣に議論しても無駄ってことですね。カスみたいな役所仕事に振り回されるメーカーの方の苦労は計り知れませんね。国内に限った話ではないかもしれませんが


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