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学校の図書室にいるのは大抵、自分ひとりだった。 本を読むという行為は、SIDを使った学習に比べ効率が悪い。本を読むという習慣をもつ生徒は今ではあまりいない。インタラクティブなSIDのAIによる学習プログラムは、本を読むというという行為の意味の重要性を低くしてしまった。日常生活を営みながら学んでいくという、学習の本質を考えたときに、過去の出来事を蓄積した知識を吸収するという、勉強の本来の意味は、ほぼ瞬時に、ネットワークにある全ての情報をまるでもとから自分が持っていたかのよう
第一話からは目次からどうぞ 坂本直行の眼の前でくるくると回っている鉛筆は、ランダムな動きで揺れている。透明な誰かがもった鉛筆が揺れたり上下に動いたり、器用な指先の上でくるくると回るのと同じ動きで、それはなにか見えない紐にぶら下がっていたり、透明な棒の先にくっついた状態のものとは違った動きをしていた。 不自然な回転で、ときにそれは床に落ちて、すぐに誰かに拾われるような動きで、空中に浮かび上がり、また直行の目の前でくるくると回る。 どういうことだろうか?なにかトリックが
第一部 福岡桜花学院プロローグ 第1話 行方不明 第2話 ICAと常楽院雛子 第3話 斎藤嘉樹 第4話 坂本直行 第5話 長岡静子 第6話 エディとレオ 第7話 エリカ・ロドリゲス 第8話 斎藤嘉樹 第9話 坂本直行 第10話 長岡静子
プロローグ「こんなことがあるはずがない!」 ジェンキンスはひとりごちした。今自分の目の前で起きていることを受け入れることができなかった。次々に現れては消える、その「自分はSIDのユーザーではないし、今はARグラスも掛けてはいない。 見えるはずはないのだ。 だが、それはジェンキンスの目の前にいる、見えるだけではない、たしかに存在しているのがわかる、肉体を持つ、質量を持つ実存的ななにかをたしかに感じているのだ。 だからこそ、受け入れることができないのだ。理性が歯向か