次世代画像フォーマットを巡る争いの行方

現在、最も広く普及している画像フォーマットであるJPEGの後継となりうる次世代画像フォーマットの有力候補は、HEIF、AVIF、JPEG XLの3つだ。

HEIF

H.265で圧縮された画像を格納しているコンテナがHEIFだ。

HEIFの長所はハードウェアでの対応が最も進んでいることだろう。H.265での動画撮影が可能なカメラであれば、HEIFでの静止画撮影に対応するのは容易だ。既にiPhoneやキヤノン、ソニー、ニコンなどの一部の機種では、「HEIF撮って出し」での撮影に対応している。

HEIFの短所はH.265のパテントプールが複数に分裂していることだ。パテントホルダーの中には、パテントトロールと呼ばれる企業も含まれている。分かりやすく言うと、かつて問題となったGIFと同じようなことが起こる可能性がある。こういったリスクを懸念する団体や個人は、HEIFはサポートしないということになる。

AVIF

HEIFがH.265で圧縮された画像を格納しているコンテナなのに対して、AV1で圧縮された画像を格納しているコンテナがAVIFだ。

AV1はGoogleが主導する動画コーデックで、ロイヤリティフリーで利用でき、YouTube動画の圧縮にも利用されている。

AVIFの長所は対応したソフトウェアが多いことだ。ブラウザだとChromeはもちろん、FirefoxやSafari、Opera等でも既に表示に対応している。ベースがAV1なので、YouTubeが再生できる端末であれば、AVIFの表示も可能だ。

AVIFの短所はエンコード速度が非常に遅いことだ。これはデジタルカメラのような、1秒間の連写コマ数がスペック的に大きな意味を持つデバイスへの採用の大きな障害になる。加えて、画像のディティールが消失しやすいのもAVIFの大きな欠点だ。これは自分で撮影した画像をAVIFで圧縮してみれば、すぐに気が付く。動画であれば細部が消失しても気にならないが、静止画だと細部が消えるのは大きな問題となりうる。

JPEG XL

JPEG XLは、JPEG committeeによるFLIFなどをベースとした静止画用の画像フォーマットだ。

JPEG XLの長所は

  • 既存のJPEGファイルをロスレスでJPEG XLに変換できる

  • 同じ画質でJPEGより60%ファイルサイズを縮小できる

  • HDRやワイドガンマに対応している

  • エンコードとデコードが高速

  • プログレッシブデコードに対応している

  • 最大32ビットのビット深度でロスレス圧縮が可能で、PNGよりも高速に、かつ35%小さく保存することができる。

  • レイヤーをサポートし、セレクションマスクやスポットカラーなどの追加チャネルを格納できる。印刷を対象とした場合にはCMYKにも対応している。

  • 画像の大きさや色の精度には一切の制限がない。深度マップや熱画像のような新しい種類の画像情報を表すことができ、段階的に展開できる方法で将来的にそのような機能を拡張するメカニズムを備えている。

  • FOSSかつロイヤリティフリー

JPEG XLの短所はGoogleが主導するAVIFと競合すること。その為、GoogleはChromiumからJPEG XLに対応するコードを削除した。ChromiumベースのブラウザがJPEG XLに対応するには独自での実装が必要になる。その一方で、AppleはSafariでJPEG XLをサポートし、MacOS SonomaでOSレベルでの対応を予定している。

現時点で、JPEG XLをサポートするソフトはGIMPやKrita、darktableなどのフリーウェアが中心となっている。

JPEG XLの普及を願っている

パテント云々といった大人の事情はさておき、HEIFとAVIFの問題点は、動画コーデックで圧縮したキーフレームを格納しただけのフォーマットだということだ。つまりは動画の1コマ切り出しであり、静止画用途で使用するには機能や画質に不足がある。

その点、JPEG XLは元々静止画向けに設計されたフォーマットなので、機能や画質に不足はないし、将来的な拡張性もある。JPEG XLが普及すれば、JPEGのように長期間にわたってデファクトスタンダードになれるポテンシャルがある。

私はすでにJPEG XLをPNGの代わりのロスレスのアーカイブ用途として利用し始めている。ロスレス圧縮でもPNGより30%ぐらいファイルサイズが縮むし、Windowsでの画像の表示もSusieのプラグインを作ってくれている方がいるので、特に問題がない。

まずは、PNGの代わりのロスレス圧縮用のフォーマットとして普及していって、その後にJPEGを置き換えるような形で普及していってくれれば理想的な展開なのだが、どうなるでしょうか。

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