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#3信越トレイルを歩く【1日目・前編】 苗場山山頂から楽養館まで

苗場山下山

朝5時。目が覚める。昨日は土曜日だったので多くの宿泊者でごった返した。幸い、与えられたスペースは布団を二つぐらい敷けるぐらいの大きさで広々としていたし、隣の人とはカーテンで仕切られているので安心だった。昨夜寝る前に感じていた頭の痛さも、パブロンのおかげか解消された。山頂の日の出も最高だった。信越トレイルの一日目は、すがすがしく始まった。

布団嬉しかったー
朝焼けと雲

朝6時。小赤沢コースを出発した。歩き始めてすぐに昨日見られなかった信越トレイルのトレイルマークを見つけて思わず写真を撮った。とうとう始まったなと嬉しくなった。

トレイルマーク発見!

八号目辺りが岩場や泥のぬかるみで歩きにくかったけど、慎重に歩けば問題ないし、道自体も一本道なので迷いようがなく安心して歩ける道だと思った。歩き始めて一時間、最初の登山者と会った。彼はしきりに山頂の天気を気にした。というのも、今歩いている地点が霧の中(雲の中)にあるからだ。上から下りてきた僕にとっては、この雲が山頂まで覆っているものではないことを知っていたので、

「大丈夫ですよ。この雲を抜ければ山頂は晴れています」

と伝えると、「勇気が出てきた」と言って力強く歩を進めた。二人目の登山者も雲のことを気にした。同じ雲でも下から見上げるか、上から見下ろすかでは感じ方が全く違うし、ただ気ままに長く歩くことを目的としている自分にとっては山頂からの眺めは二の次なのだけれど、登山を目的としている人にとってはそれがが最も心を動かす動機なのだろうと考えたりもした。

道中この雲の中を歩いていった

楽養館へ

9:50小赤沢の楽養館に着いた。旅館のような名前を持つこの施設は旅館ではない。温泉と食事を楽しむ場所だ。10時の開館とともに温泉に浸かった。一番風呂だった。お湯は茶色く濁り、表面に氷のような固い膜が張っていた。膜は鉄分と塩分の結晶だと分かったが、こんな結晶が浮かぶ湯は見たことがなかった。浴槽に一人であることをいいことに、結晶をいちいち壊して遊んだ。バランスを崩した結晶は、湯の底に落ちていく。そうして落ちていった結晶は足元に堆積し、足の裏にざらざらとした感触を引き起こした。その間にも、源泉から湯はどばどばと出てくる。湯に溶けた鉄は足元の結晶と結びつきさらに大きな塊となるだろう。これは大変な湯だと思った。

天井が三角形。とても雰囲気のある場所

普段よりも長めの湯を楽しんだ後、食堂についた。11時のオープンには少し早かったけれど、「先に注文しておきます?」という番頭さんの優しい気遣いに甘えて、先に注文することにした。イワナ丼定食を頼んだ。

料理が来るまでこの女性と言葉を交わした。温泉のあの膜は一番風呂でしか体験できないこと、それが珍しく動画撮影に来る人もいること、湯樋に結晶が付着し管理が大変なこと、楽養館は30年ほど前にでき、当時は温泉棟だけだったが、後に食事処ができたことなどを教えてくれた。

イワナ丼。秋田のいぶりがっこのような漬物もあった?

お店では充電を心置きなく許可してくれた。また受付で山小屋のヒュッテで一泊したことを告げると、温泉が100円引きになったことも付け加えておきたい。

#4に続く