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2020 pick up players #1 大貫晋一 〜背番号16はなぜエースになれたのか〜

こんにちは。iwoと申します。まずはこんなnote記事を覗きに来た物好きな皆さん、誠にありがとうございます。僕自身初noteということで、右も左もわからぬまま筆を進めておりますが最後までお付き合いいただけると光栄です。。では、さっそく本題に参りましょう!

ベイスターズにとっての2020シーズンが終わり、入団・退団情報、さらに新監督の誕生とこの時期らしい情報が増えてきた中で今年の選手の活躍を振り替えっちゃおうというコーナーでございます。記念すべき第一弾(第何弾まであるかは聞かないで)は大貫晋一投手です!

1.今シーズンの成績

今年のベイスターズのエースとしてシ-ズンを駆け抜けた大貫投手、まずは今年の成績を振り返っていきましょう。

19試合 113.2回 10-6 2.53 1完投 0完封 Whip1.10 81奪三振 13QS 勝率.625 QS率68.42 AVG.231 HR/9 1.03 K%17.9 BB%6.4 K/BB2.79 WAR2.4

規定投球回にはわずか6.1回足りなかったものの、自身初そしてチーム唯一となる2桁勝利を挙げ名実ともにエースとして投げぬいた1年でした。その他スタッツも極めて優秀で、特に90イニング以上投げた先発に限るとGB%がリーグ2位(全体3位)、GB/FBがリーグ3位(全体4位)とゴロを打たせる能力に秀でていたことが分かります。
そんな大貫投手ですが決して抜群のスタートダッシュを切ったシーズンではなく、昨オフのオーストラリア派遣の疲労を考慮されキャンプは2軍スタート。コロナウイルスの影響で延期した開幕も2軍で迎え、初登板のチャンスが巡ってきたのは7月2日の巨人戦。この試合は4回2失点とまずまずの投球を見せますが、自身2登板目の7月10日の阪神戦では1回3失点と打ち込まれてしまいます。そして中3日、背水の陣で挑んだ7月14日の中日戦で8回2失点の快投を見せ、その後は柱としてローテを守り続けます。この登板では木塚投手コーチのアドバイスが大きな助けになりますが、これについては公式のコラムをぜひご覧ください。

2.飛躍の要因~大貫投手の"強み"とは~

素晴らしいシーズンを送った大貫投手ですが、飛躍の要因はいったい何だったのでしょうか。常時150㎞/hを超えるストレートを投げるわけでもなく、代名詞となるような変化球があるわけでもない大貫投手の"強み"について探っていきたいと思います。

大貫 試合別投球割合の推移

上のグラフは大貫投手の今シーズンの球種別投球割合の推移です。このグラフからわかるように大貫投手は豊富な球種をその日の調子や相手打線の狙いに合わせてカスタマイズしていくスタイルをとれていることがわかります。さらに球種について細かく見ていくと、

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となっており、基本的に各球種を左右の偏りなく、満遍なく投げていることがわかります。特筆すべきは単なる球種の多さではなく、試合で使えるレベルの球種の多さでしょう。特に今期はシーズン頭からカットボールを、中盤からチェンジアップを実用化することで昨年対右.226に対して対左.376だった被打率を対右.230対左.233と大幅に良化させました。

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更に、投手から見て左方向への変化球としてカットボール、スライダー、カーブの3段階、右側への変化球としてツーシーム、スプリット、チェンジアップの3段階を投げ分けることで左右問わずの軌道偽装に成功しています。上のヒストグラムからも分かるように、球速帯が近い変化球(ex.カットとスプリット)は逆の方向に変化させ、変化方向の同じ変化球(ex.カットとスライダー)はきっちり球速差をつけることで全てのボールに意味を持たせ、打者になるべく球種の判別をさせない工夫をしています。
また、おそらくですがシーズン終盤にはスライダーもゾーン内で2種類ほど投げ分け始めたように見え(明確な根拠がないので上では"スライダー"として統一しています)さらなる進化を予感させてくれています!(見ている側からすると大貫投手の日は球種判別が大変なので、これ以上増やされるのは楽しみでもあり、大変でもありますが、、笑)

3.pick up game①~初完投 ver.1の到達点~

ここからは2試合、特に印象深い試合を抜き出していきたいと思います。
まず1試合目は9月5日、9回112球無四球1失点でプロ初完投勝利を挙げた広島戦です。広島打線は個人的にセ・リーグで最もいやらしい打線だと評しているのですが、なんといっても真っすぐ対応の面で優れており、ツーピッチのリリーバーなどはよほど精度よく投げ込まないと粉砕されてしまうイメージを持っています。(横浜ファンの方は何試合か嫌な記憶がよぎったのではないでしょうかw)反面、積極的なアプローチ故に真っすぐの軌道から芯を外してくる技巧派に弱く、この試合ではまさに大貫投手の持ち味が発揮されていたといえるでしょう。以下、投球チャートをご覧ください。

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打線に右打者を7人並べてきた広島に対して、バッテリーは徹底してアウトコースにカットボールとスライダーを集めつつ、バッティングカウントで真ん中内寄りにツーシーム、スプリットを投じる配球で攻めます。打者からすれば一瞬ストレートに見えるため、好球必打。思わず手を出してしまいますが打球は内野ゴロの山。まさに何を打ったか分からないのにアウトになっているという大貫投手の術中です。横浜は4回終了時に9-1と大量リードしていたこともあり、1Bに中井選手、2Bに大和選手、3Bに柴田選手を守備固めで起用しゴロPの大貫投手を全面的にバックアップ。終わってみれば8安打浴びながらも114球の省エネ完投につながりました。
コース、高低のどちらかは絶対に間違えない中で同じところに変化量・球速帯を微妙に変えて投げ込む再現性の高さとそれを可能にするセルフコントロール力。この試合ではまだチェンジアップを解禁していないにもかかわらずこの投球ということで、大貫晋一ver.1としての完成形のような投球だったといえるでしょう。

4.pick up game②~今季最終戦 さらなる進化の予兆~

さて、もう1つのpick up gameは大貫投手にとっての今季最終戦、11月11日、7回無失点で勝ち負けつかずとなった阪神戦です。この試合で大貫投手は自己最多となる9奪三振を奪う好投を見せます。

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先ほどの広島打線とは対照的に、阪神打線はチーム単位で低めの変化球を捨てる意識が徹底されているイメージがあります。大貫投手のようなスタイルだと低めを見極められ、取りに行ったカウント球を痛打という事態が懸念されましたがなんのその。早い段階で追い込み相手に手を出させる支配的な投球をしていたので驚きました。特にこの日はカット/スライダーとツーシーム/スプリットの対の意識がいつも以上に素晴らしく、またスライダーは縦に鋭く落として空振りを狙うなど、待球型の打線に対してはさっさと追い込んで三振を取りに行くという新たな1面を見せてもらうことができました。こういった意味で来期に向けてさらなる進化を感じさせる登板となりました。

5.課題と展望

さて、ここまでは今シーズンの大貫投手について書いてきましたがここでは来期の大貫投手について少し話したいと思います。あと少し、お付き合いくださいw
来期の大貫投手の課題として挙げられるのは奪三振力の向上と、それに伴う支配力アップだと思います。いわゆるWARが伸びないことや、FIP・tRAと防御率の乖離は奪三振の少なさが原因と考えられます。もちろんセイバー指標がすべてではないですが、さらに上を目指すために三振をとれるという要素は重要だと思いますし、ここに付随する課題として、上振れや揺り戻しという要素があります。
今シーズン、大貫投手のDER(本塁打を除くグラウンド内に飛んだ打球をアウトにした割合)は.730で90イニング以上投げた先発投手に絞るとリーグで5番目の数値でした。これ自体は特筆するほど高いというわけではありませんが問題はチーム全体の数値との乖離です。DeNAの守備力はお世辞にも高いとは言えず、チームDERは12球団中10位の.687でした。他の主な先発投手を見ても、平良.702 上茶谷.701 井納.673 今永.660 濵口.655となっており大貫投手がとびぬけて高いことがわかります。もちろんこれには大貫投手のコントロールとDeNAが多用するシフトとの親和性大貫投手の被Hard%の低さ等複合的な要因が考えられますが、来期も今期と同等の値になるとは言い切れない面があり、DERの悪化とともに防御率等が悪化する可能性は否めません。更に大貫投手はLOB%(投手が出したランナーの内、ベース上に残ったランナーの割合)も高く85.6%と、こちらは90イニング以上の先発でリーグ3位となっています。これまた他の先発を見ると、平良78.0% 井納75.7% 濵口74.1% 上茶谷73.7% 今永65.9%となっているため大貫投手の高さが伺えます。こちらも投手がコントロールするのは難しいと言われている指標であり、平均に回帰することを考えると来期は効率よく失点するケースが目立ってしまうかもしれません。
とまあ課題をつらつらと書いたのですが、ここに対するアンサーはすでに大貫投手からもらっております。その1つがシーズン中盤から実用化しているチェンジアップの存在です。このチェンジアップ、投球数は少ないものの空振り率21.3%、被打率.059と圧倒的な威力を誇っています。映像を見ていても抜け感・軌道共に申し分なく、よく隠していたなと驚かされましたw
今シーズンは左打者に対する使用がメインでしたが、大貫投手のことなので来期頭には右打者にもガンガン投げ込めるようになっているでしょう!
もう1つが、スライダー系のボールの質の向上です。大貫投手のスライダーは対左の空振り率が低く、対左のインコースにはカットボールをメインに組み立てていましたがスライダーの質が向上し、対左の足元にバックフット気味に投げ込めるようになればより簡単に三振をとれるようになるでしょう。スライダーの縦・横成分の微妙な調整は同僚の上茶谷投手などが非常に上手いため、参考にするのもいいかもしれません。(すでに情報交換等しているかもしれませんが)
この2球種により左右高低の揺さぶりに加え奥行きも使えるようになり、奪三振力の向上が望めると思います。結果支配力が向上し、インプレー打球の割合が減ることで先ほど挙げたような揺り戻しの影響を最小限にとどめることが可能になるのではないでしょうか。シーズン最後の阪神戦で見せてくれた支配的な投球を、来シーズンは年間通して見せてくれるのではと期待してしまいます。
とにもかくにも投手の故障離脱が多いDeNAにおいて、入団後大きなけがのない大貫投手の存在は非常に重要です。まずは1年間ローテーションを守り抜く姿、そして初の規定投球回到達を期待したいと思います!

長々とお付き合いいただいた皆様、ありがとうございます。軽く書こうと思ったら次々書きたいことが出てきてしまいましたね、、笑
このボリュームの記事はもう書かない(書けない)かと思いますが一応シリーズ化してる以上第2弾も気長にお待ちいただければと思います。。
最後に、記事内部のグラフ等は全てねむかごさん(@is_drn)作成の物です。色々と本当にありがとうございましたm(_ _)m詳細なデータを分かりやすくまとめてくれてるので、まだフォローしてないよという横浜ファンの方は是非!
それでは👋

引用 Delta https://1point02.jp/op/index.aspx
           SPAIA https://spaia.jp/baseball/npb/player/1800045           
           



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