術後日記 2020.01.24 16時

手術の朝、すんなり目が覚めた。
俺が寝坊してないかそんなに不安なのか、7時、8時と看護師の人が部屋に入ってきては、少し喋る。
これが最後の会話かと思うと、朝から力が入った。

9時に手術着に着替え、オペ室に移動する。
ドラマや映画でみる、あの部屋だと感心する。
ベッドに寝かされ、沢山の人に囲まれると、俺も「患者役」の気持ちになってきた。
実際に、患者なのだけど。

最後に喋った言葉は「大丈夫です」だったけな。
点滴を打たれ、管から麻酔が入ってくる。
ものの10秒ほどで、眠りに落ち、起きた時には全て終わっていた。

目が覚めると、意識がはっきりとしないまま、再び部屋に運ばれる。
ここの記憶は正直あまりない。
どういう仕組みなのか分からないが、完全に脳が目覚めてなかったんだろうか。

曖昧な記憶の中、とても寒かったことだけは覚えている。
麻酔が切れた後というのは、そういうものらしい。
暖房の入った部屋で2枚の毛布に包まりながら、主治医の到着を待つ。

主治医の人が入ってくると、無事成功したと告げられる。
思ってたより、大きかったこと。ポリープの向かいに結節もできていたこと。
けれど、それらを無事に切除したということを聞く。

「本当にありがとうございました。お疲れ様でした。」
と声に出せないので、紙に書いて伝えた。
よく「手術お疲れ様です」と言われるが、俺は寝ていただけだ。寝坊はしてないけれど。

それから少しすると、身体があったかくなってきて、
「終わったんだな」という感慨が押し寄せてきた。
ほっと安心し、親やメンバーやマネージャーに手術の成功を伝えた。

しばらくすると、メンバーとマネージャーが部屋に入ってきた。
食い入るように俺の筆談具を見てくれるので、
迫真の顔をして、ボケた内容を書いたりしたが、あんまりウケなかった。
イロモネアでも「サイレント」が一番難しい。

俺だけ喋れず、ベッドに寝かされてる状況は何だか可笑しくて、
浪越なんかずっとニヤニヤしてて、
不思議な時間だったけど、とても愛おしい1時間だった。本当にありがとう。

それから、点滴の液を二度変え、吸入の薬を飲み、
最後の診断を受けた。
各所腫れてるけど、しばらく療養すれば治るでしょうと言われる。
基本的に、三日間は完全沈黙。二週間はほとんど話さない方がいいらしい。

すっかり暗くなってから1日ぶりの病院食を食べ、
部屋から出て会計を済ませ、退院したい旨を書いて伝える。
その頃には、もう元気で、「患者役」はもうこりごりという気持ちになっていた。

話せないって本当に辛い。あまりに無防備な気がする。
どれだけのことが言葉によって守られていたかと痛感する。
看護師の人と話すのも、会計で支払いするのも、全て筆談で行う。
いつもなら、5秒で済むことが、30秒かかる。

もしも人が、人と会話することに制限があり、決められた時間しかそれを行えないとしたら、
誰と、どんな話をするだろう。
普段何気なく喋ってるその全てに、とてつもなく価値があるように感じた。

病院の帰りに、近くのスーパー(セルフレジだからそこに決めた)で、
大量の買い物をして、
今、自宅に籠っている。
時々、独り言を言いそうになってハッとする。

2020.01.24 16時

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