2月某日 誕生

昼ごはんのアナウンスが流れるも、当然分娩続行。
スタッフさんが「ごはんは...無理か♪」と言ってたのが遠くで聞こえたけど、渾身のギャグだったのかな...?
この状態で「あ、じゃあ昼食後再開で!」とかあるわけない。
母の疲労も心配(意外とそこは冷静)だったので、スタッフさんの勧めもあり、昼ごはんを代わりに食べてきてもらった。美味しくて有名な病院のごはん...。朝のおかずも食べられなかった...と悲しい気持ちに。

母が「終わったら何か買ってきてあげる!何がいい?パン?」と聞くので、心の中で大好きなちくわパンを所望したが、声が出るタイミングを待たず、すかさず「パンは重いか!」と言い出す母。ちくわー!!!!!

しばらく(とはいえ、30分くらい)地獄のいきみ逃し。
まだ、全開にならない?まだ?内診してみて?本当にまだ?と気持ちが急く(言葉にならないのて、あくまで気持ちのみ)。

スタッフさんたちの「あと一息って感じかなー♩」(終始♩がつくような明るい喋り方のスタッフさん達。たぶん不安にさせないためだろうけど、地獄を見てるこっちからは、とんだサイコパス野郎に見える)という声が非常に恨めしい。
もうさ、地獄の三丁目なわけ。あと一息って、どこまで修羅場進めるの?不倫がバレた挙句、匂わせ投稿までバレた唐田えりかなの?
再起不能になってしまうよ。

この辺で、いきみの練習で声出した後に軽ーく「ふんっ!」てしてみよーかと提案される。
我ながら結構うまい。
実は吐く呼吸もわりとうまかったと思ってる。
コツは恥も外聞もなく「ぶるぁぁぁぁぁ!!!」と馬っぽく吐くこと。吐いてます!!!と審査員にアピールする気持ちで。

軽ーく「ふんっ」てするだけでバンバンおしっこが漏れる。破水?いやおしっこだ...って毎回がっかり。
母が帰ってきて、受け持ちの肛門ポジションに着こうとしてくれたけど、もうおしっこ漏れてるからポジションから外す。地獄の三丁目でも、意外とそこは配慮できるのができるアラサー妊婦。以降、母は励まし係とムツゴロウさんみたいに身体をわしゃわしゃする係になった。クビになってからも自分のできることを探してやってくれてるとこに、経産婦としての経験が生きてる。こればっかりは、絶対男性にはムリ。母に立ち会ってもらってよかった。
ナイス判断、ナイス自分。

そんなこんなで何度目かのお漏らしをしたときに「ポンっ!」という音とともにやっと破水。破水まで長かったー!息子の「まだお外に出たくないもん!!」という強い意志を感じる。ここでやっと全開。

さあ!いきみましょう!いきみ逃しより全然楽って言うし、9合目まで来てる!と思いきや、陣痛5回×3セットで全力でいきんで「人差し指の第二関節下ぐらいまできてるよー♪」...。
え...髪の毛とか見えてないの?マジで?出てきてないじゃん。聞いてた話と違う...。
その後の話では、どうやら骨盤との相性が悪いだけではく、産道が細く、出にくかったそう。促進剤のおかげで半日で出たけど、難産の部類では...?

いきんでる間に院長登場。血圧が160とか170とかのご老人もびっくりな数値になってるのを見て、即吸引分娩に移行。
あまりいきむなと言われたけど、ホント無理。
いきんでも痛いんだけど、いきまないのも地獄。
前門の虎、後門の狼。後門といえば、この頃肛門は耐え難きを耐えられずにコンニチワしました。初めまして、痔さん、これからどうぞよろしくね。

あんなに会陰切開を嫌がってたけど、いざ切るとなったら終わりが見えた希望から「切ってくださいぃぃぃ!!」と懇願してるのも人体の神秘。
こんなに苦しいなら会陰ぐらいいくらでも切ってくれ!!

経産婦がよく言う「陣痛が痛すぎて会陰切るのなんて痛くなかった」ってヤツ、絶対フいてると思ってけど、ホントだった。麻酔ガッツリさされたけど、全然痛くない。間髪入れずにハサミ入れてたけど、本当に痛くない。縫合するときはちょっとチクチクしたけど、ほぼ痛くない。痛くない。

メタリックな金属の器械を中にセットして、陣痛を待って吸引開始。できるだけ少ない回数で出すため、長時間器械を押し出す感じでいきめとの指示。やったことない場所の運動だからわかんないけど、とりあえず全力で大きなウンコの感触の胎児の頭を押し出すイメージでいきむ。
ローラー的なものをグリグリされ、「あ、院長...。それちょっとやりすぎじゃない?」的な不穏な感触が会陰からした途端、「ぶりんっ!」と「ぬるんっ!」の間の感触で頭登場。さらに間髪入れずに陣痛がきたから、いきもうとしたら院長からストップ!飛び出しちゃうから、いきまず自然に出せとの指示。これが耳に入らなくて院長が血塗れになり、シャワーを浴びに一時帰宅する事故があるらしい。
「いやー、よく話を聞いてくれたよね。上手かったよ!」とお褒めの言葉をいただきました。

会陰切開から吸引分娩まではシャレにならないグロ展開になると思ったので、咄嗟に一度母を外に出す判断を下した。「生まれたら...!見に来て...!!」と告げて死地に向かったけど、結構な死亡フラグだったな...。無事でよかった。

産まれた瞬間は開放感から「産まれたー!!!」と大声を上げ、虚脱して惚ける私、大泣きしながら「バーン!」って感じでドア開けて飛び込んでくる母。キツかったろう、ママン。肛門も散々押させて疲れたね...。ゆっくりお休み...と言いたいところだけど、軽食を買ってきてもらうというラストミッションがあったので、もうひと働きさせる娘。母よ、ごめん...。
使いにくい実家のヤカンとフライパン、超いいヤツAmazonでギフト包装して発注しといたから...。

なんだかんだ色々チェックして、2/10、予定日ぴったりの13:29、3244gで息子が誕生。痛みを感じ出してから三日半、精も根も尽き果てました。。。
ワンピースのエースの母親がエースを守るために3年お腹に入れて、産むとき死んだって設定だったけど、そりゃ死ぬわ。

胎盤は痛みもなく出てきて、そこだけは安産でした。
胎盤もおつかれ!お役御免!