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ショービズにおける「つるはしビジネス」の現在

一般に、階級が固定化し、格差が拡大すると、「ショービズ界」が隆盛するといわれている。
なぜなら、ショービズはどんな世の中でも「一発逆転」の目をはらんでいるからだ。階級差をひっくり返せる可能性がある。
それゆえ、階級が固定化した世の中になると、階級の低位に甘んじている人が一発逆転を狙ってショービズ界に雪崩を打って参入するのだ。それで、競争の激しくなったショービズが花盛りになる――というわけである。

階級が固定されておらず、格差が少ない時代は、ショービズに参入する人は少なかった。
例えば、昭和の時代にクリエイターになろうとすると、「そんな不安定な職業に就くなんて!」と親を初めとする周囲の大反対が避けられなかった。
しかし今は、親が進んで子供を芸能学校に行かせる時代だ。それゆえ、芸能学校は空前の好景気を迎えているのである。

ところで、芸能学校は「つるはしビジネス」である。「つるはしビジネス」は、どんな時代にも栄えるビジネススキームの一つだ。

19世紀半ば、サンフランシスコで起こったゴールドラッシュに際して、実際に金鉱を掘り当てて大儲けをした人はほとんどいなかったが、つるはしなどの「金鉱を掘り当てるための道具」を売って大儲けした人は数多くいた。このことから、ブームに際して金儲けの道具を売って儲けるビジネスをこう呼ぶようになった。

ゴールドラッシュというものは、それが知れ渡る頃には金はあらかた取り尽くされていた。しかし、そこに「金を掘りたい」という人たちが大挙して押し寄せてくるので、彼らに「金を掘る道具」を売りつけると大儲けできたのである。
ちなみに、リーバイスの発明したジーパンも、初めはゴールドラッシュに便乗したつるはしビジネスであった。「この丈夫なズボンをはいて掘るといいですよ!」と売り出したのだ。

だから、今はショービズにおけるつるはしビジネスが隆盛をきわめているのである。
ただし、その傾向に近頃暗雲が立ち込めてきた。というのも、ショービズ界に参入する人が増えても、ショービズそのものの需要は昔も今も変わらないから、つるはしを買っても金鉱を掘り当てられない人が増えているのだ。

例えば声優学校は、今は本当に数が増えた。しかし声優に成れる人は限られているので、声優学校が増えれば増えるほど、「声優に成れない人々」もまた、増えてしまったのである。
おかげで今は、ショービズにおけるつるはしビジネスが飽和状態になってしまった。ゲームにおけるアタリショックよろしく、租税乱造で市場崩壊を起こしているのである。

ところが、面白いものでそういう状態に対し新たなビジネスを始める人たちが現れた。それは「つるはしビジネスのやり方を指南するビジネス」である。つまり「どうすればつるはしビジネスが成功するか?」をレクチャーする人たちが現れ始めたのだ。

これはしかし、自然の道理かもしれない。何しろ今は、つるはしビジネスがある種のゴールドラッシュ状態なのだ。この業界に参入したいと考えている人は多い。だから、彼らに対して「どうすればつるはしビジネスが成功するか?」をレクチャーすれば、多くの人から関心を抱かれるのは必定である。

そういうビジネスをこっそり始めている人の一人に岡田斗司夫さんがいる。
彼は、多くの若者から「どうすればアニメ業界で働けるか?」と問われる中で、最近ではかなり具体的に「お金を集めて起業し、YouTubeやニコ生などで配信し、そこでファンを集めることによってより大きなプロジェクト、あるいはビジネスに育てていく方法」を指南し始めた。

例えば、声優に成りたいという若者がいて、彼の「どうすれば声優に成れますか?」という質問に対し、「声優学校に行ってはダメだ」と唱える。「そんなことをしても数万倍の過酷な競争を勝ち抜かねばならず、勝機はほとんどない」と。
それよりも、起業して成功する方が確率はずっと高い。そして、自分がアニメ会社の社長になれば、自分の作品に自分の声を当てても文句を言う人はほとんどいない。だから、こちらの方がずっと現実的だし、確率も高い――というわけだ。

ぼくも、そういうふうに「つるはしビジネスのノウハウを売ること」には大きな商機を感じている。例えば、いまぼくが運営しているYouTubeチャンネルがあるのだが――

ここでも、「YouTubeの運営方法」についての動画を作ると、多くの人が見てくれる。今はこれが、最も訴求力の高いコンテンツとなっている。

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