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外来種は食べて解決できるか?

1.初めに

こんばんは。 IWAOです。
先週、琵琶湖博物館に行ってきました。そこで、「湖の幸丼」を食べてきました。これは、琵琶湖固有種のビワマスと外来種であるブラックバスを一つの天丼にした料理です。赤身と白身が合体した何とも不思議な料理でした。しかし、どちらもとても美味しかったです。あまり油がのってなかったので、味はくどくなかったです。また、赤身・白身どちらの味も楽しめる天丼でした。もし、琵琶湖博物館に行かれる場合、にほのうみというレストランでお昼を食べることをお勧めします。琵琶湖の絶景も同時に見れる最高の立地になっています。

特等席で食べました。

 さて、本日のテーマになりますが、この「湖の幸丼」の最大の特徴は、琵琶湖の固有種であるビワマスだけでなく、外来種であるブラックバスを食べ物として利用していることになります。そして、皆さんは、「外来種の有効利用」についてどう考えていますか?例えば、「駆除するだけでなく、食べて利用するべきだ」や「肥料として利用しよう」などの意見を耳にしたことがないでしょうか?「邪魔者だからというだけで捨てるのではなく、利用することすばらしい」や「命を大切にするために有効利用をしなければならない」などと思うでしょう。しかし、私は、外来種の利用、特に、「食べて駆除する」という方針に対して、否定的な意見を持っています。
 何故、私が、外来種を食べて解決することに対して否定的な意見を持っているのかについての意見を述べていきたいと思います。

2.外来種とは何か

 まず、外来種とは何か?についてここで簡単に解説していきます。
 外来種とは、環境省では以下のように説明されています。

https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/invasive.html#sec1より引用

 私が考える外来種の定義のポイントは、以下の2つの特に1つ目(赤文字)になります。

 特に、気を付けてほしいのは、「人によって連れてこられた」です。「本来、その場にいなかった」だけでなく、人間活動を介して連れてこられた生物を外来種と言います。例えば、ツバメやアホウドリのような渡り鳥、サケ、ウナギのような大回遊を行う魚などは、自らの足で生息地を拡大・移動しているため、外来種ではありません。つまり、自らの足で生息地を世界中に拡大した人間も外来種ではありません。有名な外来種である、ブラックバス、ブルーギル、ミドリガメ、アライグマ全ての共通点は、経緯は何であれ、自らの足で日本に来たわけではなく、人間によって原産地から連れてこられたことになっています。
 もう1点注意すべき点があります。それは、「国内由来の外来種」、つまり、「国内外来種」がいることです。代表例として、北海道と沖縄のカブトムシ、琵琶湖のオヤニラミが挙げられます。例えば、カブトムシは、北海道と沖縄、一部離島を除くほぼ全域に生息する甲虫ですが、ペットとして持ち込まれた個体が逃げ出し、定着したと考えられています。つまり、国内の生き物でも、「人間」が「本来いなかった所に連れてきた」場合、外来種になります。
 外来種とは何かにつて書きたいことは腐るほどありますが、ここまでにします。ここでの最後は、「外来種悪玉論に物申す」系の評論本や自称専門家と言われる人による論評に注意することです。これらの論評の多くは、「人によって連れてこられた・連れてきた」を無視した非常に悪質なものになります。その上、「生活が外来種によって支えられているのに、それを都合よく無視している」などと言っていますが、「管理下に置かれているのか」や「生態系や経済への負の影響が大きい」などの点を無視しています。「外来種は悪者ではない」のような趣旨の内容には、外来種の定義を理解しないで書かれているものがあるため、先述したような外れものに騙されないように注意しましょう。

3.外来種の有効利用はあまりよくない?

 まず、この内容を書くにあたって前提として伝えたいことは、以下のことになります。つまり、私は、決して有効利用を否定するための逆張りをしたいわけではないことをここで述べておきます。


 ここでは、外来種の有効利用のデメリットについて述べていきます。
 まず、外来種を駆除する目的はなんでしょうか?それは、「元の生態系を取り戻すこと」や「産業被害を悪化させないこと」にあります。つまり、被害を拡大しないために駆除をしているのであって、「利益を得るために」駆除をしているわけではありません。
 ガサガサ系ユーチューバーであるマーシーさんも外来種の利用について以下のように述べています。

  実は、生態系の保全と利活用というものは、全く別物なんです。そこに難しさがあります。外来種駆除は、生態系に害を及ぼす外来種をなくすことを目的にしています。利活用を進め過ぎると、結局その生き物がいないと利活用が継続できなくなるという矛盾をはらんでいます。本当のことを言えば、生物生態系を守るのであれば、本来は外来種の利活用というものはしてはいけない。これは環境省のマニュアル(外来種被害防止行動計画)にも書いてある内容です。

(https://news.yahoo.co.jp/articles/4368e63e15c4ff8931ea2f174efbadfe62b15531より引用)

 ここでは、駆除するのが目的であるのにいつのまにか活用することに目的が変化してはいけない、駆除がベースの場合、活用は長続きできないことを述べています。つまり、優先順位が「駆除>利用」であり、「駆除=利用」ではありません。目的と手段を間違えてはいけないということを伝えています。
 外来種の駆除と利用を巡って、似たようなことになっているが、ジビエの有効利用になります。獣害を発生させるシカやイノシシの90%近くが利活用されないことを問題に、有効利用するために、シカ・イノシシを有効利用するものとなります。また、ジビエを基に地域の観光資源にすることも狙いとなっています。
 しかし、ジビエの利用についても以下のことが問題になっています。

 ①では、季節によって肉量が変動することと美味しい時期が変化することとなります。家畜化された畜産時と比較した際、質・量が安定的に生産されるかどうかが大きな違いになります。ジビエの場合、自然を相手にするので、市場に安定的に出す事が非常に難しいと言えます。また、駆除が進むことで、個体数が減り、被害が減ります。しかし、利用が前提にあった場合、利用できる資源は減ってしまうという欠点を抱えています。これは、外来種の利用にも言えるのですが、「駆除の成功が利用を狭めるというパラドックスを抱えている」ということになります。ジビエも外来種の利用もこのパラドックスに陥ってはいけないと思います。
 ②の場合、ジビエの利用を行う際、野生の動物と家畜では、衛生状態が違うこと、野生の動物の方が、人の健康においてどのような悪影響が出るのか分からないなどの理由から、ジビエの解体・加工を行う際に既存のと畜場を利用することができないため、食品衛生法に適合した新たな施設が必要となります。その新しい施設を作った場合、その維持・運用にコストが大きくかかります。ジビエの利用だけで施設の維持・運用を賄うだけの利益を得ることは非常に難しいと言えます。外来種に当てはめた場合、外来種専用の施設を作った場合、上記の問題が当てはまると思います。その上、完全駆除を目指す活動になり、最終的には、外来種そのものがいなくなり、生産そのものがゼロになります。その時までに投資に見合った利益が得られるのかその後の施設をどのように利用するのかについても対策を考えなければならないと思います。つまり、目の前の被害を解決するだけではだめだということです。
 あと、ジビエ利用そのものの批判になりますが、特にシカは注意が必要だと思います。シカは、個体数管理が非常に難しい生き物です。狩猟圧をかけすぎると激減する一方、狩猟圧がまったくかからないと激増する生き物です。よって、有効利用が行き過ぎた結果、個体数を激減させる要因になってしまうのではないかと思います。この対策を考えているのか不安があります。
 また、特定外来生物であるキョンが繁殖している千葉県ではこのようなことが言われています。

  原田さんは「特定外来生物として撲滅すべきという思いは行政と同じ。いただいた命を活用する役割を担いたい」と話す。キョンの肉を扱うのも「撲滅まで」と決めているという。 
  鳥獣対策に詳しい岐阜大野生動物管理学研究センター長の鈴木正嗣教授は「商業的利用が行き過ぎると、外来生物対策として間違ったメッセージになる」と指摘。キョンの駆除に向けて「行政がハンター任せにせずに事業として駆除に取り組むことで、防除実施計画に実効性を持たせることが重要だ」と話している。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20220212-OYT1T50328/2/より引用

 キョンは利用するが、駆除がベースにあり、有効利用を目的としないことを核にしています。行政と駆除業者が同じ意思を持ち、共通した目標に向かって活動している所がとてもいい印象を持ちます。

4.私が外来種の食用利用をあまり良く思わない理由


 長くなりましたが、ここから私の考えを述べます。私の考えは、下記のようになります。

 食用で導入された外来種の代表例は、スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)、アフリカマイマイ、チャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)、中国四大家魚(ソウギョ等)、ブラックバスなどが挙げられます。

スクミリンゴガイの写真
卵はこのようにきれいな赤い色をしており、琵琶湖博物館でも産卵していました。
*あと、ジャンボタニシと言われますが、日本の在来のタニシとは分類からまったく別物です。仲間ですらありません。また、在来のタニシと比較しても倍以上にでかいです。

 まずは、スクミリンゴガイ、アフリカマイマイについて解説します。彼らは、食用として日本にやってきました。しかし、現在の日本の食卓に並ぶことはまずありません。その理由は、「日本人の味に合わなかった」、「寄生虫がいることがわかった」からが主な理由になります。

 スクミリンゴガイとアフリカマイマイは、エスカルゴとして利用されることを想定して日本に持ち込まれました。しかし、味が日本人の好みではないことから、利用があまりなされませんでした。
 しかし、利用されなくなったもう一つの理由は、「寄生虫がいることがわかった」ことになります。両者ともに検疫有害動物に指定されており、広東住血線虫という非常に危険な寄生虫の媒介者であることもわかっています。この広東住血線虫に感染した場合、以下のようなことになります。

 もし、あなたなら、死ぬリスクを負ってまでも食べたいと思うのでしょうか?多くの人が食べるのを避けるようになると考えます。同時に、食用での導入は失敗したともいえます。このように負のイメージが定着してしまったこともあり、スクミリンゴガイやアフリカマイマイの利用は行われなくなりました。
 外来種を駆除する場合、食べることを前提とした駆除を奨励する学者がいるようです。しかし、私は、生物によっては、先述した危険性があるにも関わらず、ただただ「食べればいい」と発信することはあまりにも無責任な発言だとしか思えません。万一、食べて感染した場合、このような発信をしていた方はどのようにして責任をとるのでしょうか?食べることを奨励する場合、感染症などの危険があることも隠さずに発信しなければならないと思います。
 次に、ヌートリアについて説明していきます。ヌートリアが、日本に来た理由は、「毛皮を軍の支給品として使用するため」になります。戦後直後の日本の深刻な食料不足になった際の重要な食料源として利用され、繁殖されました。しかし、食糧事情が改善され、ヌートリアの飼育が下火になったため、ヌートリアが逃がされることとなり、日本に定着しました。

私も、ペットショップへの移動中に偶然見かけました。
*カピバラではありません。


 現在、ヌートリアは、日本では害獣として扱われています。主な理由は、農業被害です。主な例として、稲やサツマイモ、大根などが食い荒らされるなどの被害が発生しています。私の祖父母も育てていたサツマイモがやられたことを話していました。また、穴を掘って巣穴を作る生態を持っており、河川などで行われると、堤防が破壊され、治水能力が落ちることが予想されます。他にも、餌付けをする人のせいで、動物性のタンパク質の味を覚え、二枚貝を食すようになったものもいます。餌付けの影響で、2枚貝が激減し、2枚貝に産卵するタナゴなどの絶滅にさらに拍車をかける事態になるとも言われています。農業被害だけでなく、インフラ破壊、在来種の絶滅への圧力などと日本の生物多様性において非常に脅威になっていると言えます。
 このヌートリアにおいても、「駆除を前提にするのではなく、有効利用を前提にして駆除を行うべきだ」と主張する方がいます。他に、「毛皮を利用することが合理的だ」とも言っています。これらの主張に対して、私が思ったことは、以下のようになります。

 ②や③を説明しますが、現在、プラスチックなどにより、安価で暖かい服が簡単に手に入ります。そのような大量生産できる商品とどう戦って、利益を作っていくのかについての見通しはあるのでしょか?また、場所によっては都会のどぶ川のような非常に汚い所に生息しており、私は、それを見たことがあります。そのような汚いイメージもある生物を利用したいと思う人がいるのか、または、汚い印象がある場合、そのイメージを払拭しなければ利用したいと思う人が現れないと思います。
 上記のような課題だけでなく、ヌートリアの肉を利用する場合においても、「頭胴長:50~70㎝」と非常に小柄な動物であります。これは、キョンという小柄なシカにでも同じことであり、「頭胴長:1m」ほどとなっています。このような小柄な動物を食べて利用するには、得られる肉量が少ないこと、衛生状態が良くないこと、狩猟時のコスト等も考慮した場合、あまり有効的な手段ではないと言えます。また、ジビエの所で先述したように完全駆除に成功した場合、それに関係した施設は、完全駆除により使われることがなくなります。その後の関連施設をどう活かすのか、完全駆除までに投資に見合った利益が得られるのかなどの検証も慎重に行わなければなりません。
 以上の2例から、失敗や時代によって利用されなくなった外来種を利用するには非常に障壁が大きいと思います。

5.まとめ


 私は、利用することを決して否定しません。利用できる場合は、積極的に利用すべきだと思います。また、ガサガサ系ユーチューバーのマーシーさんは、ミシシッピアカミミガメを肥料にして利用されてる上、こういう活動をもっと広めようとされています。他にも、ブラックバスは、琵琶湖で肥料として、霞ヶ浦では、チャネルキャットが肥料として利用されています。ただ、琵琶湖や霞ヶ浦にあるように大きな湖などの環境でないと、外来種を利用しつつ、利益を出すのは難しいのではと考えます。
 つまり、外来種を食べて駆除するなどの有効利用は、生物・環境によって成否が大きく左右される、または、生物によっては、利用そのものが難しいものがあると考えます。

もとの動画はこちらから
https://youtu.be/wUuUq1qkGys

 しかし、外来種を利用する際に、気を付けなければならない点は、以下のようにまとめられると考えます。

 例えば、スクミリンゴガイのような場合、広東住血線虫を媒介するが故に利用が余計にされなくなってしまいました。よって、広東住血線虫にどう対処するのかを考えることが、スクミリンゴガイについた負のイメージを払拭しつつ広東住血線虫によって破綻した有効利用を再建することの第一歩になると思います。このようなことを対策を考えてから、駆除をしながら利用することの計画を構築することが必要だと思います。
(*農家の方がこれを見たら、空想だと批判されるかもしれません。私も、スクミリンゴガイの有効利用(特に、食用に関しては)非常に厳しいと思います。しかし、悪魔でも一例として見てください。)
 利用を目的にすると、駆除の成功で外来種の供給が縮むため、利用そのものがしづらくなります。よって、駆除での利用は、駆除活動でのおこぼれ程度で利用できるのであり、利用することを目的としないことを意識し、共有することが大切だと思います。
 最後になりますが、外来種の話題がマスコミやYouTubeなどの配信でも扱われることが増えたと思い、有効利用についても取り上げられることが多くなったと感じます。

もとの動画はこちらから
https://youtu.be/B3o29D131QE
 

 報道や配信が悪いものばかりとは決して思いませんし、変な所にミスリードしてやろうとの意図があるわけではないとも思います。しかし、有効利用をとても良いことだと報道・配信する傾向が強いです。有効利用がいいように取り上げられると世間は、「食べて駆除すればいい」などの安直な方法しか考えなくなると思います。よって、有効利用を取り上げる報道・配信に関しては注意して見ること、その外来種は本当に利用に適しているのかを疑ってみることが大切だと思います。
 非常に長くなりましたが、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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