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鰯崎友×born

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鰯崎友の個人note+WEBマガジン bornでの記事、作品をまとめました。
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2019年3月の記事一覧

名選手イチローは忘れ去られる

イチローの取り上げられ方は、見ていて悲しくなる。 メディアで語られるのは、「4000本ヒットを打ち、メジャーリーグのプレイヤーからも尊敬されるレジェンド・イチロー」であり、「しぶとくヒットを稼ぎ、スピードで相手を翻弄する名選手・イチロー」ではないからだ。 イチローが得た名声とか肩書きが、これでもかというくらい誇張され、じゃあイチローがどういうプレイヤーだったのかについてはほとんど語られない。レジェンド・イチローはこの先ずっとみんなの記憶に残るだろうが、名選手・イチローのこ

【実話マンガ】チェッカーズ

学生作品上映祭2019

先日は塚口サンサン劇場へ出かけてきました。目的は、私の母校、ビジュアルアーツ専門学校 放送・映画学科の「学生作品上映祭2019」。4時間ほど劇場にいて、10作品を観ました。 こんなにどっぷり学生作品にふれるのは数年ぶりで、なんとも懐かしい気分でした。ハリウッド映画なんかを観るのとはまったく異質な、身内感が漂っていて。 もっといえば、自分たちが撮った映画を観て、面白い、とか、つまらん、とか言い合ったりする、アットホームさと緊張感が両方入り混じっていて、これこそ学生作品を観る

祖父は主に満州にいた。

私の祖父は隻腕だった。左腕が肩までしかなく、引き絞った巾着袋ように皮膚が折り重なって骨を隠していた。子どもの頃、私はおじいちゃん子で、祖父と将棋をしたり、散歩に出かけたりしていた。 家の近所を流れる川の土手を、ふたりでよく歩いた。祖父は腕のないほうのシャツの袖を、旗のようにひらひら遊ばせていた。戦争で左腕を失くしたのだった。体は丈夫で、器用に自転車にも乗った。 竹を割ったような物言いをする人間で、人から疎まれることもあったが、その半面、友人も多かったようだ。右腕一本で喧