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鰯崎友×born

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鰯崎友の個人note+WEBマガジン bornでの記事、作品をまとめました。
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2019年2月の記事一覧

『わたしの名は赤』イスラム細密画の世界にさまよう

16世紀のオスマン帝国の首都、イスタンブルを舞台とした物語で、そのことにハードルの高さを感じる人もいるかも知れないが、作者、オルハン・パムクの文章はそんなに難解ではない。オスマン帝国はこの当時、世界で最も洗練された文化をもち、欧州の諸国をリードしていた。 また、ヨーロッパ諸国としのぎを削ったイスラム教国家、というイメージがあるが、フランスとは長きに渡って同盟を結んでいて、ヨーロッパの政治に深く関わっていた国である。アジア、ヨーロッパを股にかける世界帝国だったのだ。 主人公

『バジュランギおじさんと、小さな迷子』映画映画した映画のパワー

タイトルは『バジュランギおじさんと、小さな迷子』だが、おじさんというよりお兄さんというかんじだ。インド人の青年バジュランギは、嘘が大嫌いで心のやさしい、ナチュラルポジティブな男だ。反面、ちょっとマヌケ、というかだいぶマヌケな性格である。猿の姿をしているという神様、ハヌマーンを崇拝していて、猿を見かけると条件反射的に拝んでしまう。勉強は得意でなく、体はごついが相撲は苦手だ。相手と組み合うと、体がこそばゆくなって、競技の途中で笑いが止まらなくなるからだ。昔のコメディにでてくる、ち