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マンガの中の少女マンガ/家(13):柚木二雨「#男子高校生にアラサー少女漫画家が筋トレ教わってる話」

 本作は各種配信サイトで配信されている他、小学館から「Sho-comiフラワーコミックス」として各巻30ページほどのマイクロ版の電子単行本が全5巻刊行されている。

 内容はタイトルそのまんまで、仕事柄か運動不足のアラサー少女マンガ家が、偶然出会った自分の作品の熱心な読者であるイケメンな男子高校生から筋トレを教わるという筋立てである。男子高校生が主人公の作品と出会ったのが「試し読み」だというのが今っぽい。

 女性キャラクターをメインに据え、筋トレやダイエットに関する実践的な知識が提供されるタイプのマンガとしては、サンドロビッチ・ヤバ子『ダンベル何キロ持てる?』やシネクドキ『エルフさんは痩せられない?』などがあるのだが、それこそが大きな関心の対象であるためか、身体がフォーカスされ、しばしばフェティッシュな描写があらわれる。要するに「お色気」を楽しませるところがある。
 本作もやはり「お色気」要素が盛り込まれていることは、その表紙をみても伝わってくるところだろう。ただし、刊行レーベルからもわかるように女性読者がターゲットとされているためか、筋トレを実演してみせる男子高校生の身体が、しばしばその下半身へ関心を向ける形で描かれる。(図1)また、筋トレを指導するために行われる男子高校生から少女マンガ家への身体的な接触もエロティックなニュアンスを感じさせる描写となっている。

図1:作画資料として見るという視点で欲望はそれほどあからさまにはされない。むしろ傾向としては身体的接触の方がエロティックに描かれているようだ。(電子単行本1巻,p.7)

一方で、男子高校生も少女マンガ家に力を感じており、筋トレの最中に見せるその無自覚なエロスに欲望を煽られた彼は、やおらトイレを借りるのである。家に帰るまで辛抱しろよと言いたい。(図2)

図2:異空間へのゲートのように現れるトイレのドアなのであった。(電子単行本1巻,p.21)

 さて、本作の主人公は少女マンガ家とされているのだが、実際に描いているマンガがどのようなものなのかはっきりしない。制作中の作品のデスクトップ画面が描かれる場面はあり、どうやら男女の恋愛が描かれていることが推測されるのだが、ポイントはそこで示されるのが海水浴と思しきシチュエーションで、男女の身体の描写が強調されているページであることだ。(図3、4)筋トレを教わった結果として「人体のデッサン」等が意識されるようになり、作画が良くなったことがここでは語られており、実体験と創作との反映という図式はここにも見られる。

図3:身体が描けるようになったことが強調される場面なので作中作のストーリーは詳らかではない(電子単行本5巻、p.13)
図4:筋トレで画力が向上!(電子単行本、p.14)


「少女マンガ家」が登場するウェブ媒体のマンガには、こうした「ちょっとエッチ」なタイプのもの、あるいはもっとはっきりとポルノ的なものが少なくない。このnoteで扱ったものの中では「えっちマスターは欲望をおさえられない~うぶな少女漫画家とトロける恋!?」などがそれに該当するし、ここで紹介していない中にもまだまだある。

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