マンガの中の少女マンガ/家: 柚木こむぎ「ココロの描き方」『マーガレット』2024年6号

 メモ的に。
『マーガレット』2024年6号に読切として掲載された柚木こむぎ「ココロの描き方」。
 主人公は高校生の現役マンガ家。両親を失った過去のトラウマを昇華する形でホラーマンガを描いていた主人公が連載を完結させ、次回作として少女マンガの執筆を編集者にすすめられる。しかし、これまではホラーマンガを描いてきた主人公は恋愛経験もなく「恋もしたことないし/キラキラした明るい話なんて描けるわけない」と及び腰である。主人公は両親を事故で無くした経験から、喪失の悲しみを回避するために人を愛することから自身を遠ざけているのだった。
 そこに現れるのがマンガ家としての彼女の大ファンで弟子にしてくれと志願してくる後輩男子である。次回作の少女マンガの参考になるかも…と後半男子の恋愛経験をたずねる主人公に対して、彼は「じゃあ/仮に付き合ってみる?」と提案するのであった。いやー定番の展開!たまらないですね。
 もちろん、後輩男子は実は以前から主人公に想いを寄せており、取材のための「仮のお付き合い」をしているうちに、主人公は誰かを愛する気持ちを取り戻すのである。
 ホラーマンガを連載していたことも含めて、創作行為がトラウマ克服のための心理療法的に機能しているところが興味深い。たとえば、「医療とマンガを繋ぐ領域」として「グラフィック・メディスン」という概念があるが(注)、そのことを思い出したりした。


注:グラフィック・メディスンについては下記記事を参照のこと。


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