後腹膜膿瘍のドレナージ

後腹膜膿瘍や後腹膜貯留に対して経皮的ドレナージを行うとき、穿刺位置は背部や側腹部後方とし、経腹腔的にならないようにするのが原則である。しかし、膿瘍が腹壁直下まで張り出しており、かつ背部や側腹部からの穿刺ルート確保が困難な場合には、前腹壁から穿刺したくなる誘惑にかられる。

しかし、前腹壁から穿刺すると、ドレナージ経路は当然に経腹腔的となる。

ドレナージ効果により、膿瘍(ないし貯留)が縮小すると、腹壁と膿瘍壁との距離が当然に開くことになる。最悪の場合、カテーテルが膿瘍から抜けて、腹腔内に遊離してしまう危険性がある。膿汁が腹腔に漏れて腹膜炎になりうる。

それどころか初回の穿刺操作・カテーテル挿入操作のみで、膿汁が腹腔内に大量に漏出する可能性もある。(尚、少量の膿汁漏出は必発と考えるべき)

そこで、経腹腔的経路での穿刺が避けられない場合には、膿瘍腔内になるべく長くカテーテルを送り込むことが必要である。十分な距離のカテーテルをあらかじめ入れておけば、多少カテーテルが抜けてきてもカテーテルが膿瘍から逸脱する可能性を減らせるからである。

でも、経腹腔的な穿刺ルートしか選択できない症例は、実際にはほとんどない。患者さんの体位や穿刺針の刺入角度を工夫することで、ほとんどの場合は対応できる。場合によっては、骨を貫いて後腹膜腔にカテーテルを送り込むこともできる。


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