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カミさんに手紙を書いている私。 前略 カミさん殿 あまり取り乱さずに、冷静に聞いて下さい。 実は君に内緒で、今回の参院選にお試しで立候補してみたところ、当選してしまいました。 君が驚くのも無理はありません。君よりも、私のほうが驚いてます。 私は一切選挙活動などせずに、立候補の届けを冷やかしで出しただけなのですから。 黙っていて本当にごめんなさい。 届け出の書類に書く政策欄に流行りの右翼っぽいことを書いてはみたんだけど、まさかそれだけで当選できるとは思いませんでし
夜、路上に立っている私。 左から右に長く緩い下り坂。 私は歩道のガードレールの内側にいる。 坂の上の方から女の人の声が聞こえた。 「すいません、もう結構ですから」 はっきりとした聞き取りやすい声だ。 「ありがとうございます、もう止まってください。」 誰かに何かをお願いしているらしい。 古そうな自転車を漕ぐ音がした。 チェーンカバーが錆びてガッサガッサ音がする古いママチャリの特有の音だ。 「ちょっと待ってください!」 女性の声とママチャリの音が近づいてきた。もはや