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Quotes and someones' pictures (5)



「じゃあ意味ないじゃん」
「そんなことはない。物語の中にいろんな苦しみや喜びがあった。今まで味わったことのないたくさんの感情に出会えて、自分とは違うのに、おんなじだと思えた。みんな等しく、それぞれの何かを背負う。重さや年月は問題じゃない。だからもう、苦しみから逃れようとして苦しむのをやめた」


「ううん。ひとりでも生きていけるようになりたいだけで、ひとりはいや」


お母さんはダサい。でも、そのダサさはぶれない。どっしり安定している。そこがいかにもお母さん、て感じで、いい。



会いたい。そのシンプルな欲求に抗うことが出来る人は、世界にどれほどいるのか。


好意をもっている人間に対する緊張とは、また違った。人間として、自分の卑小なところを見抜かれまい、とする、防御のようなものだった。


「歳をとるとは可能性を失ってゆくことですが、その失った可能性に呪われず、潔く手放しながら残った手札でいかにやりくりするか。それが生きるということだと思います」




それでも、わたしは、明日死ぬかもしれない男に会いにいきたい。
幸せになれなくてもいいのだ。
ああ、ちがう。これがわたしの選んだ幸せなのだ。
わたしは愛する男のために人生を誤りたい。
わたしはきっと愚かなのだろう。
なのにこの清々しさはなんだろう。
最初からこうなることが決まっていたかのような、この一切の迷いのなさは。



藤代と弥生は、観終わるたびにワインを飲みながら映画のなかの恋について語り合った。好きなものはいつも違った。愛すべきキャラクター、美しい音楽、気の利いたセリフ。けれども嫌いなものはいつも一緒だった。気取ったモノローグ、過剰なコンピューターグラフィックス、ナルシスティックな男優。藤代と弥生は、好きなものより、嫌いなものを共有していった。




愛を終わらせない方法はひとつしかない。それは手に入れないことだ。


「意思の疎通ができないことが、永遠の愛につながるのかも」


「誰かを好きになると、好きなものをひとつ失うんですか?」

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