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Sの体験記

コックリさん、って知ってますか。
まあ結構有名ですもんね(笑)
そうです、狐とかの霊を呼び出して色々聞くあのゲームです。

私が高校1年生だった時なんですけどね。
あれはひどく雨が降る日でした――。

Sはバドミントン部に所属していたので、部活動のため体育館にいた。
その日はあまりにも天気が悪く、夏の16時頃だったが外は真っ暗。
トタン屋根にぶつかる雨音は激しく、ビリビリと振動が伝わってくるほどであった。

このままだと帰り道が危ないかもしれないと学校側も踏んだのか、ほどなくして帰宅を促す放送が入る。
早く帰れることに浮き立った空気が流れ、Sも友人らとキャッキャとおしゃべりしながら帰り支度を始めようとした。

その時。

「ギャー!!」
激しい悲鳴がSの耳を貫いた。
それは校内中に響いたのではないかと思うほどの声量で、当然S以外の人間も皆ざわついていた。

「何、今の?」「どうしたどうした」
それぞれが困惑と好奇心が拮抗した顔を見合わせる。
そこへ教頭が飛び込んできた。
「お前たち、早く帰りなさい!」

Sも皆も腑に落ちなかったものの、雨は強さを増すばかりだしこれ以上校内にいれば怒られるだけなので、その日は大人しく下校したという。

次の日。
登校したSは早速クラスメイトに捕まった。
「ね、昨日の話、聞いた?」
もちろんSも昨日のことには興味津々だったので、何々教えてと耳を傾ける。

「2年生の女子がね、コックリさんやって取り憑かれちゃったんだって!」

教室でコックリさんに興じていた生徒が本当に・・・取り憑かれてしまい、昨日の凄まじい悲鳴はその子が出したものであったらしい。
暴れまわる彼女を先生方で抑え込み、日本史の先生の1人が住職であったため、その人がお祓いをしながらお寺に連れていったという。

Sは件の女子生徒と面識はない。
その後どうなったかも分からない。
しかし、あの耳をつんざく咆哮は確かに聞いたのだ。
今でも鮮明に思い出せると言う。

――本当に凄かったんですよ。
何て言うか、その、人間じゃないみたいな……。
強いて言うなら、"獣"みたいな声でした。

だからね、面白半分でも絶対霊を呼んだりなんかしちゃいけませんよ。
(おわり)

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